PATLABOR THE MOVIE
監督:押井守
脚本:伊藤和典
企画・原作:ヘッドギア
日本映画 1989
☆☆☆☆★
フィルマークスの企画だかで、1週間のみの再上映があったので、これは良い機会と思って足を運んで来ました。
まず「機動警察パトレイバー」という作品に対しての私の思い入れ。入口はゆうきまさみの漫画版。1巻の時点で単行本を手にとってそこからはリアルタイムで最後まで読んでました。なので一番思い入れのあるのは漫画版。で、レンタルで最初のOVA版(今だとアーリーデイズってなってるやつ)を見たのか、TV放送が最初だったかは忘れましたが、田舎なので多少の遅れはあったように思いますが、TVアニメも珍しく放送はされたので録画して見てました。
後期OVAはTVシリーズ3話だか4話だかにOVA新作が1話とかじゃなかったっけ?単発の話とグリフォン編が交互に収録だったかなぁ?この辺もレンタルビデオで見た記憶があります。
と、そんな感じでパトレイバーには割とリアルタイムで触れてはいるのですが、劇場版は映画館で見て無いです。3(WXIII)だけ劇場で見たようなそうじゃなかったような。間違いなく1と2は劇場では見て無いです。パトレイバー好きなのに映画見に行かなかった理由までは憶えてませんが(多分、その時は映画館に行く事が特別な感じだったのかも)結局はレンタルで済ませた。多分、「パトレイバー」として最初に見た数年後に「押井守作品」として再見したような気がするので、多分2度観てるはず。
その後、1000円くらいで投げ売りされてるDVDは確保した記憶はあるんだけど、その時が2回目だったかはまでは憶えて無い。押井作品としてはやっぱり「2」なんですけど、ちゃんとレイバー戦とか普通のファンが喜ぶ部分も残ってるという意味では「1」も捨てがたい魅力はある。
ああ、実写の「ネクストジェネレーション」も全部見てます。今回の上映の頭に「パトレイバーEZY」というアニメ新作PVが入るんですが、多分そこには押井は絡まない。監督は出淵なので、正直新しいのには期待してません。デザイナーとしては好きだけど、演出や監督としては別に。そういう意味では押井テイストのあるネクストジェンレーションは面白かったし、正当な続編と言って良いのかは別として、あれはあれで全然アリです。
で、とりあえず今回の「機動警察パトレイバー the Movie」100分くらいなんだけど、結構長く感じるのが面白い所。こういうので面白い奴はあっという間のジェットコースター。例え長尺でも全然その長さを感じなかったみたいなのがよくあるパターンなのですが、なんかねっとりしていて、面長でダルイ、テンポが悪いとかネガティブな意味では無い上での長さを感じるのが個人的には物凄く不思議な感覚。
1989年の映画ですから、ウィンドウズ95すら出ていない時代にOSに仕込まれたコンピューターウィルスとかをテーマにする当たりのセンスが凄い。押井さん、パソコンオタクなんですよねぇ。ゆうきまさみ漫画版にも、グリフォンを動かしてるアシュラだっけ?そんなOS絡みの描写もあるにはあったけど、この映画の今見るとよくわかる感がやっぱり凄い。
お話的にはミステリーなんですが、帆場英一は物語冒頭で自ら東京湾に沈んで死亡。この世にはもう居ない犯人の足取りを追うという展開が秀逸。ミステリー詳しくないですが、多分ミステリージャンルの一つとしては定番のものなのかなとは思う。でも普通は逃げる犯人を追い詰めていくっていうのが基本じゃないですか。でも作中で後藤隊長が言うように、もうどう転んでも勝ち目はなく、良いように踊らされてるだけなんじゃないのか?みたいな展開がね、重い空気感を醸し出していて非常に良い。
エホバ、宗教上の本来の名前のヤハウェ。ヤハウェってゲームの「真女神転生」のロウルートでもカオスルートでもないニュートラルの時のラスボスなんですよ。メガテンの良い所って、そのニュートラルルートがトゥルーエンディングというわけではないというのが面白い所で、人間とは全ての神をも殺戮するエゴイスティックな存在なのか?みたいなオチがつくのが秀逸な所。
私が「中道」を嫌うのはそんなメガテンの影響もちょっとあったりする。右も左も極端に寄るのは正しくない、だから自分はどちらにも介入しない中道を選んでどっちも公平に捉えたい、っていう考え方が私は大嫌いで、それは中立を装ってるだけの思考停止、真ん中が正しいと思ってる正義を気取った無責任論者だと思ってます。それってただの逃げ口実じゃん、っていう。
いや話がそれた。そんなエホバさんですよ。本人が最後まで何を考えてるのかわからない。唯一神になろうとしたのか、あるいは神に裏切られたから絶望したのか、バベルの塔の神罰は人の犯した罪なのか。鳥だけが彼のこだわりだった部分なんかも含めて、どう解釈するかは委ねてる感じがまた良いです。
そして現世に残された魂が、まるで幽霊かのように動き出す。このハイテク機器がゴーストの拠り所となるという当たりは、テクノロジーの発展うんぬんと、更にはテーマ的には後の「ゴーストインザシェル」なんかにへの影響も考えるとなかなか面白い。
欲を言えば、3代目アルフォンスというペットネームで呼ぶ野明が機械にも魂があると見立てるその精神性こそが物語上の対比になってるとかあれば面白かった気はするけど、そうなると押井っぽくはなくなるかも。
で、そんな野明を押しのけて、クレジットで最初に来るのが何故か遊馬の方なんですよね。この辺の理由私は知らないんですけど、2では南雲さんが主人公になってるのと同じように映画としては遊馬が主人公なのかこれ?
「パト2」だとレイバー要素なんて世界観の一部程度でしたが(つーか戦闘ヘリの方が強くね?というある意味での否定ですらあった)今回の冒頭の自衛隊ミリタリー要素とか、零式とのラストバトルとか、今作に限ってはロボットアニメ要素をきちんと残してあるのは嬉しい部分でもある。
もしかして私はパトレイバーからなのかな?漫画版1巻の時も、ロボット物として手に取った気がするんですよね。あんまりメカ出てこないけど、他の部分の話も面白いなって段々となって行った気がする。ああでもあれか~、レンタルビデオでTVシリーズのアニメがどんどん見られるようになっていったのもあるし、この辺りから富野教に入信して、メカ以外の部分も面白いぞって目覚めて行った気がする。
可能なら「パト2」も劇場でいつかは見てみたい。
このフィルマークスの企画とは全く別で、ガンダムの方も企画でファースト3部作+逆襲のシャア+閃光のハサウェイの5作のリバイバル上映全国で始まってるんですよ。来月、地元にも来るみたいなので、せめて「めぐりあい宇宙」と「逆シャア」くらいはスクリーンで見たい。そこも全部レンタルビデオで見てるので、劇場で見た事無いんですよね。せっかくスクリーンで見れるチャンスは逃したくない。
私は押井ストではないので、「ビューティフルドリーマー」「攻殻」「イノセンス」「スカイクロラ」「アヴァロン」とあと「立食師列伝」とかも見たっけか。見てるのはそのくらいかなと思いますが、やっぱり思い入れがあるのは「パト」1・2かな。なので、好きな作品をこうして後からでも劇場で見る事が出来たのはとても有難いです。
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