僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

キング・オブ・コメディ

キング・オブ・コメディ [DVD]

原題:The King of Comedy
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ポール・D・ジマーマン
アメリカ映画 1982年
☆☆☆☆★

 

ジョーカー2作目「ジョーカー:フォリア・ドゥ」今週末より公開。
週末は予定入ってるので多分私は観に行くの翌週かな?
「ジョーカー」1作目、ブログに感想書いてなかったら復習してから行くかな?とか思ったら、やっぱり無いですね。前作はコロナ前でしたっけか。
いや待てよ?ジョーカーを見て感想書くならその前に、元ネタの「キングオブコメディ」からじゃないのか?

 

うわ~!みたくねェ~っ。
実は「キングオブコメディ」って二度と見たくない映画だなって思った作品なんです。

 

もう嫌悪感の塊でね、主人公のルパート・パプキンのサイコパス具合って、ああ実際に居る居るこんなやつ。何でも自分勝手な解釈しかしないやつ!って感じで、もうゾワゾワ来て観ていて凄く嫌な気分になる映画。

 

でも、それくらい感情を揺さぶってくる、物凄い映画である事は認めざるを得ません。私は自分の「好き嫌い」と「善し悪し」はイコールではありません。そこは縦軸横軸で立体的に考えてます。自分は大好きだけど映画としては大したことないものは、ちゃんとそういう評価を下しますし、逆にこの映画みたいに大嫌いだけど映画として完成度が素晴らしい物はちゃんと認める。好きだから良い、嫌いだから悪いという単純な考え方はしないようにしています。

 

そもそもこの映画私は「ジョーカー」の後に元ネタの一つとして見ました。スコセッシの「タクシードライバー」と「キングオブコメディ」が元ネタ、リスペクトしているというのはオープンにしてある情報でしたが(デ・ニーロを引っ張ってきてるのもそれが理由でしたし)「タクシードライバー」の方は見てたんですよ。映画秘法とかでボンクラにとってのヒーローは「タクシードライバー」の主人公トラヴィスだってのは、もう昔からずっと変わらず語られてきましたので、映画オタクになり始めの頃にそこは履修してます。

 

最初はニワカでしたので、映画好きのボンクラを気取るならオールタイムベストは「タクシードライバー」って答える物なんだなと、そういう認識。オタクにとってのアイコンみたいなもの。

 

でも、そういった流れの上で「キングオブコメディ」のパプキンが出る事は無かった。もちろん!スコセッシ作品の中でも傑作の一つですから、映画オタクにとっては知ってて当然の作品だったんでしょうし、今は無きツタヤのレンタルでも「隠れた名作」みたいなシールがはってある作品でした。

 

で「ジョーカー」が公開されて見た後に、この作品に触れてる感想とかも多かったので、その時に私も合わせて観た。

 

え?元ネタっていうか、ほぼ「ジョーカー」の原作じゃないのこれ?しかもジョーカーなんかよりずっとこっちの方が完成度も高いし面白いじゃん。ってなったのでした。

 

いや何が凄いって、「ジョーカー」は格差社会の生んだ存在であり、「タクシードライバー」のトラヴィスは、ベトナム帰りだったり、消費社会の中の怒りや憤り、若者のうっぷんみたいな象徴だったから、そこはどちらもある種のボンクラにとってのヒーローになりえたんですよね。そこにはちゃんとした「理由」がある。

 

でもね、「キングオブコメディ」のルパート・パプキンの頭のおかしさって理由が無いじゃないですか。一応は背景に児童虐待やいじめみたいなのも多少はあるのかなとは示唆されてるけど、多分そこを訴えたかった映画では無い。

 

他人の感情をありのまま理解出来るのがニュータイプであるのなら、逆ニュータイプみたいな感じと言うか、どこまでも自己完結した自意識以外のものは何も無い。

 

社交辞令でまた今度って言ったのを鵜呑みにして、今度会いましょうって言いましたよね?って詰め寄ったり、言葉を濁してお引き取り下さいって言ってるのに、自分は大丈夫ですから待ちますよ、って本人に悪気が無く言えるのが凄い。そして本当に恐ろしい。

 

ジョーカーもトラヴィスも100%はどうかは別として、それなりの理屈をつけて理解はできる。でもパプキンは理解不能ナチュラルボーンサイコパスみたいな。

 

理解出来ないものが私は一番怖いです。

 

一応、ラストのオチ的な所でもショービジネスの暗部というか、犯罪者だろうが有名で売れた奴の勝ち、みたいな部分は描かれる。迷惑系ユーチューバーとか、私人逮捕系ユーチューバーとかのサイコパスっぷりとそっくり。マジで怖い。マジで胸糞悪くなる。

 

大っ嫌いな映画。でも本当に素晴らしい映画。
ユーチューバーはリアルガチな人達ですが、これは映画であって、演出・脚本・演技とかで作り上げた人物像。実はナチュラルでは無い計算されて生み出された作品です。そこ考えると芸術って凄いね、映画って凄いねと思う。

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