Dokidoki! Precure
作:山口亮太
絵:高橋晃
刊:講談社 講談社キャラクター文庫 035
2024年
☆☆☆★
届かないから、想うのを
やめるんですか?
やめられないですよね。
それが「愛」です。
最後の戦いから1年。マナ、六花、真琴、ありすの4人はすっかり日常を取り戻していた。マナと六花の中学校に入学してきたレジーナがお騒がせなのは変わらないけれど、亜久里も一緒に楽しく過ごす平穏な日々。そんなある日、あの決戦で葬ったはずのジコチューが突然現れて……! マナたちの中学校生活最後の夏は、再び決戦に。
胸のキュンキュンは、まだまだ止まらない!
ドキプリ小説、重版でようやく買えました。フォーマットは小説プリキュアシリーズの新装版に合わせた形。何で今になってからこれ1冊だけぽっと出たのかと言えば、色々と経緯があるようです。
オファーは他のシリーズと同じ時期にあって、そこで書き始めたそうですが、TVアニメ版シリーズ構成、作者の山口亮太氏が体調を崩されてしまい、途中でストップ。他のシリーズと合わせての刊行は出来ずじまいでした。その後、無事体調は回復されたとの事で、出版が決まっていたものではないものの、途中まで書いてたものをきちんと最後まで書きあげ、柴田プロデューサーにとりあえず読んでもらえますか、と声をかけた所、是非これは出版しましょうと、上手く世に出る事になりましたと。
新装版じゃなく2015-16年の最初に出たときには、「プリキュア5」も刊行予定に入ってたんですけどね、多分成田良美先生ですよね?初代だけシリーズ構成じゃない人が書いてるので、他の人の可能性もなくはないだろうけど、これをきっかけにまた続いてほしいです。
今は紙の本は下火ですし、元々準備してた部数が少なかったのか、今回のドキプリは初版瞬殺で売り切れちゃったんですよ。出版社への問い合わせも多かったのか、すぐに増刷するのでもう少しだけ待ってねっていうアナウンスが出たくらい。
1か月待って私もようやく手に入れました。
まず本を手にした最初の印象は、あつっ!厚いぞこれ。
今回、450ページくらいです。これまでのは250~300ページくらい。2冊分くらいあるんじゃないかっていう厚さ。読むの大変だなぁと思いつつ、めったにない機会ですから、ボリュームがあるのは嬉しいですよね。
最初からいきなり
第50話 レジーナ落第!?小学生からやり直せ!
とかいうぶっとんだサブタイトルからスタートです。
いわゆる本編の番外編的なものというより、シーズン2、2年目を想定して書いたという事で、このボリュームになってるようです。
序盤は単発っぽい話で、TVシリーズのその後や、瞬君とかサブキャラまで網羅する、これぞまさしく愛だ!って言える感じの、ドキプリの新作を見てるようでメチャメチャ楽しい。
TVシリーズのアバン前のトランプ王国でまこぴーと一緒に戦ってた先代プリキュアとかまで出てきて、おお~流石は原作者みたいな存在だって感じです。
ありすのお兄さんのヒロミチって、かつてのコンプリートブックで没ネタとして語ってた奴ですよね。その辺りも、構想してたものをこの機会に全部出してしまえって感じです。
なんて事を思っていたら、そのヒロミチさん。今回の話の全体の鍵を握るキャラだったらしく、中盤から後半までは地続きの壮大なストーリーになっていく。
これがねぇ、ニチアサヒーロー的というか、マーベル映画っぽいというか、プリキュアをリアルヒーロー化したらどうなるのか?みたいな感じで話が広がっていく。
TVシリーズでも最後は国からの要望でプリキュアが出動という、ヒーロー話に終着してましたが、あれの延長。勿論、中学生の女の子に重荷を背負わせるのはいかがなものか、という意見まで出てきて、かつてキュアセバスチャンが使った人工コミューンの改良型みたいなものまで出てくる。おお~なんか疑似ライダーとか量産型ライダーみたいで面白いぞ。
ただこれ、後半はそういうリアルヒーロー路線みたいな部分に舵を切りすぎてて、正直読むの結構キツかった。いや~、私はドキプリにこういうのは求めて無いし、序盤の面白オムニバスっぽい部分が凄く良かっただけに、割と落差は感じました。序盤だけなら120点だったんだけど。
他の小説プリキュアシリーズみたいに、大人向けにタガを外して、なんかちょっとついていけないレベルになってたのと比べて、いくらかは踏みとどまってはいるものの、私が読みたかったものとはちょっと違ってはいました(小説はOVA作品っぽい「フレッシュ」みたいな感じが良かった)
ただ、まあつまんなかったと切り捨てるには勿体無い面白さはちゃんとありましたし、アフターストーリーや掘り下げ、新しい要素と色々と見所はちゃんとあります。
ちなみに確かこの人だったと思うんだけど、ドキドキTVシリーズの時に、プリキュアのメインターゲットが未就学児までなのは勿体無い気がする、今回はもう少し上の年齢層まで届けたいみたいな事を言ってて、序盤は1話ごとに区切らず次回へ続く感じでストーリー的な所を重視した作りになってましたが、それも1クールくらいまでで終わってました。
過去のプリキュア記事で私は何度か書いてますが、私もプリキュア初心者の頃は、子供向けにセーブしてる部分が少しもどかしく感じて、もう少し深みが出ればもっと面白くなりそうなのになと思ってた時期がありました。
けど、重度のプリオタになるにつれて、いや子供向けのフィルターがかかってるからこそ、独自の面白さがあるしそれこそがプリキュアの面白さなんだよ!という方向に変わってきました。
今回のドキドキ小説も、これがシリーズ2年目の草稿だとして、シリーズ構成個人としてはこういうのやりたいと出したものとしては悪くないけど、ここからプロデューサーなりスポンサーなり他の脚本家も入って、いつものプリキュアらしいある程度のマイルドさをもったもの、大衆向けのフィルターをかけたものこそ私が求めてるものなんだなと思ったり。
今回、変わった部分で、物語が基本六花視点で描かれていて、そこに関しては物凄く面白かった部分。六花から見ると他のキャラはこう見えるんだっていうのは凄く新鮮で、まさに新たな視点って感じでしたし、基本スーパーマンなマナよりも、常識人の六花の方が話も進めやすいみたいな部分もあったのでしょう。
そしてキャラデザが先行公開されてたキュアジョーカー。
遂にレジーナもプリキュアに変身か、と思ったら一捻りあって面白かったです。なるほど表紙はそういう事かと。
ああ、因みに基本挿絵の無い小説プリキュアシリーズですが、キュアジョーカーの一枚絵だけは今回入ってます。カラーじゃないのが凄く残念。
初の小説限定プリキュアですね。小説スマイルの時にエターナルフォームとか新しいのはありましたが、あくまで新フォームですし、設定画とかもあれは無いので。
そして何気に、ロゼッタにだけ新アイテム、ワンダーワンドなるモーニングスター的な武器が。いや~これ、ありす/ロゼッタ役の渕上さんがディフェンスよりオフェンスキャラがやりたかった的な事を言ってたからじゃあ要望に答えて殺傷能力の高い感じで、にしてくれたのかなと。TVシリーズはTVシリーズでリフレクションを割ってファン(扇)にして使うという工夫が楽しかったわけですが。
そしてマナ/キュアハート井の中の蛙じゃないけれど、ちょっと頭が良い程度の中学生の女の子に世の中の何がわかるんだよ?的なツッコミに対して、それもそうだね自分はまだ世間知らずだったと言っていきなり世界に飛び出してしまうマナが、すっごくマナらしい。そこで悩んだり色々迷惑かけたりもしつつ、それでもっていうマナがなんかね、ああこういうキャラだったよなぁと思う。
で、そんな行動派のマナに対する六花の気持ちの描き方も凄く良い。ここはねぇ、各自の解釈で良いとは思うんだけど、私はシスターフッドで良い派。男の友情と同じく女の友情、ソウルメイトとか相方とかそれ系でお願いしたい。私は昔からすぐにレズビアン的解釈をプリキュアに持ち込むのが凄く苦手で、北上ふたご先生の漫画版プリキュアが苦手なのもすぐそう言う方向に行きたがるから超苦手。
別にレズもホモもそこは自由だから全然そこに関してはどうこう言う気は無いんだけど、プリキュアに関してはアニメ作ってる人そういう感覚では作って無いよね?飛躍しすぎでは?というのが苦手。いやお前の社会学プリキュア解釈も飛躍じゃねーのかよと言われたら困るけど。
警察の協力者の水谷さんって、どう考えても「相棒」でプリキュアネタ(しかもドキプリ)やってくれたから、それに対するアンサーだったり、あとは何故かというか、恐らくは作者の方がよっぽどプロレス好きなのでしょう、やたら新日本のネタがあちこちに出てくるのはどういうことだタココラ。
あとはアメコミヒーローネタもいくつかありつつ、設定的に繋がるってわけではないんだけど、次のシリーズの「ハピネスチャージ」を思わせるような終盤の展開とか、色々詰め込んでる感じ。
冷遇という程ではないけど、まこぴーだけちょっと印象は弱いかも。亜久里ちゃんもラブアイズパレットが壊されて途中で変身出来なくなるので、若干蚊帳の外感はなくもないものの、そこはレジーナとの関係みたいなとこが面白く描かれてるので。
まあ何にせよ、特撮の10イヤーズアフター物じゃないけど、10年経ってこんな立派なものが提供されたり、しかもキャスト集めてこれ用のの特番までやってくれるという、大盤振る舞い。そこは素直に嬉しいです。
胸のキュンキュン、止まらないよ。
あ、歳くって動悸息切れとかではないので一応。
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