New Edition Developers Mobile Suit Gundam Before One Year War
著:山崎峰水
原作:矢立肇・富野由悠季
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全1巻
2023年(連載2001-2003・2023)
☆★
宇宙世紀0079年に勃発する「一年戦争」の少し前。
ジオニック社の依頼の下、新型汎用作業機(後のMS)の開発と製造に
情熱を注ぎ込んだ熱き技術者集団・ホシオカ。
MS-05ザクIを生むまでの、彼らの苦難と栄光を描いた「デベロッパーズ」!
宇宙世紀0082年のホシオカの面々を描く
読み切りを新たに加えたニューエディション!!
ガンダムエース初期の連載作品、「デベロッパーズ」の新装版。
古い方は2003年に単行本が出ましたが、2023年におそらくこの新装版を出すためと思われる、その後を描いたエクストラエピソードが本誌に掲載され、すぐにこちらの新装版が出ました。
旧版の方にだけ年表が載ってて、それによると宇宙世紀0073年という設定のようです。
ザクに至るまでのMS開発史としては、「ジ・オリジン」のアニメで色々掘り下げられましたが、現在の扱いではオリジンって「ザンダーボルト」と同じように、アニメ化はしていてもパラレル扱いという事らしい。
ガンダムエースという雑誌はそもそもが漫画版「ジ・オリジン」を掲載する為に作った雑誌なので、当然この「デベロッパーズ」の方が後に連載は始まった作品ですが、ホントに初期の初期からの連載なので、そのオリジンもルウム編とかに突入するより全然前。
MS-04という型番はオリジンのアニメ版の方で改めて「ブグ」というMSが設定されました。(漫画版の時点ではそこまでの設定は無い)
それが出るまではMS-04という型番は「プロトタイプザク」でした。ただそこも、文字設定は最初のMSVくらいの頃にはもうあったのかな?そこは不明ですが、デザインが起こされたのはM(ミッシング)-MSV枠で、だいぶ後年の「F91」とかやってた時期に描かれたMSだったりします。
で、そのMS-04プロトタイプのプロトタイプ(ただMS-03とかではない)を作る時の話。MSをゼロから立ち上げるとかではなく、動力の核融合炉とかはジオニック社からの供給ですし、作業用のワーカーをベースにジオンの設計に基づいてMSとしての完成度を高めていく、みたいな話。
作業用のワーカーがクラブマンだったり、マニュピレーターに動作をコピーさせる辺りは「パトレイバー」を彷彿とさせますが、作者のあとがきによると「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」みたいなホームコメディを狙ったものらしいです。
企画としては「下町ロケット」とか「プロジェクトX」みたいな路線かなとは思うし、ガンダムという世界観の中で、既存のものとは全く違う視点、違うジャンルを描くという、作品の方向性・視点は凄く良いと思うし、私はそういうの大好物なので、その点に関しては評価はしてあげたい。
が!
でもねぇ、感情的にはどうしても好きになれないんですよね結局。
UC0073ですから、開戦までは程遠いし、一応、軍の方では軍事兵器として開発してるんだけど、実際のこの作品の外注業者とかには当然伏せてて、あくまで次世代の作業用機械の開発、という目的でしか作っては無いない。ホシオカの人達はこれが兵器になるなんて疑いもしないでいる。
でも、歴史を知ってるこちらの身からすると、人類の半分を殺す兵器を作ってるんですよ?いや、MSが直接人を殺したわけじゃないけれど、MSの完成がジオンの勝利を確信に導いたから開戦に踏み切ったわけですよね。それが後の、有史以来の大量虐殺を生むジオン軍という頭のおかしい教信者軍団に繋がると知ってる上で見てるとさ、そういう視点を入れずに「いい話」に終始してるのって、う~んやっぱり感情的に受け入れがたい。
いやだってアインシュタインが原爆投下を知って、原子力の研究になんか手を染めるんじゃなかったって後悔した、みたいな話あるじゃないですか。
一言ナレーションで、最後にMSの完成とかに対して、当時の彼らは人類史における悪魔を創造した事を彼ら彼女らはこの時点では知るよしもなかった、みたいな一言があるだけで、物語がグッと締まったりしません?
う~ん、こういうのは素人考えなのかなぁ?
オリジンの感想の時に書いたけど、「ガンダムUC」で福井がバナージに言わせるまでは、ジオンは人類の半分を殺したっていう部分に触れてる人や媒体が全くなくて、私はすんごい不思議でした。やっぱり、この作品とか見ても、そういう視点はあえて入れないのか、そんなのどうでも良い事と考えてるのか、不思議でしょうがない。
・・・という所からの20年後の読み切り。しかも作中の時代設定もUC0082年。
自分達が開発に携わったMSが引き起こした惨劇を彼ら彼女らは知ってるわけですよね。2年も経てば多少冷静に振り返りも出来ましょう。
でもね、これが何一つ反省してない。しかも「戦争しか出来ない連邦のガンダムとは違う」とか、的外れな事を言い出す始末。
いや、技術屋は技術屋で別にいいんですよ。ホシオカの人達は、人が死のうが生きようがきっと興味が無いんでしょう。人類の半分が死ぬ戦争を超えた時代に、このメンタルって何かよくわからないけど。
また素人意見を言ってしまいますが、例えば社長があんな戦争を引き起こすものに関与してしまった自分達は愚かだって、精神を壊してしまって居て、そこで新社長になったミオンちゃんが、何言ってるんだ、機械なんて使い人しだいなんだ、良くも悪くも使えるし、機械そのものに罪は無い技術屋は胸張って自分の技術を磨けばいいんだ!みたいにハッパをかけるとか、そういうのでも作品の方向性的には間違って無さそうな気がするんですけど、違いますかね?
20年前ならともかく、今の時代にこれ読んでも、なんか古臭い価値観のまま今の時代のアップデートについていけない老害の最低な話を見せられた気分でした。私も別に今の人になんかついていけないですし、感性も若くはないので、逆にこういうのがおかしく感じて、今の人はこれ読むと逆に1周回って面白いとか感じるんでしょうか?
今は多分ほとんどのものが電子書籍で読めるんでしょうけど、ダムAですら20年か。若いファンはこういうの現物探すだけでも大変でしょうし、内容はともかく、復刻してくれるのはありがたいでしょうね。私もダムA以前のサイバーとか、それこそM-MSVが掲載されてたSDクラブとか古本屋巡りで何年もかけて探したりしてましたので。
1年戦争より前の時代とかそれだけでも貴重ではあるので、宇宙世紀を年代順に見て(読んで)行くとかになった時、最初になるくらいの作品のはずなので、そういう意味では面白い。
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