MOBILE SUIT GUNDAM 00 THE MOVIE -A wakening of the Trailblazer-
監督:水島精二
脚本:黒田洋介
日本映画 2010年
☆☆☆☆
ガンダム00劇場版。
確かセカンドシーズンの最終回放送の最後に制作決定みたいな第一報が流れたんだったかな?当時は「SEED」の劇場版が流れてしまったのでこちらに白羽の矢が立ったみたいに言われる事が多かった気がしますが、実際の所はどうなのでしょう?
セカンドシーズンの感想に書きましたが、私は1期が凄く面白かった半面、2期で一気にトーンダウンしてしまって、「デスティニー」にも同じく失望したように、新世代ガンダムは微妙だなぁ、そろそろ自分も卒業すべきなのか?とか思った記憶があります。まあ結果として未だに卒業なんてしてないし、今回の00劇場版は素直に面白かったので、結果としては00の株もなんとか盛り返したのでした。デスティニーの方はアニメはダメだったけど、漫画版は面白かかったりしたのであっちはあっちで許しましたが。
00の劇場版、何が良かったかと言えば、また誰かが隕石落としをするとかではなく(劇中劇の奴はアクシズっぽいの出てたけど)、まさかのガンダムでファーストコンタクト物をやるという斬新さ。
ガンダムって、やっぱりまだこの時期は宇宙世紀の再構築みたいな文化が残っていて、「Gガン」はともかく「W」「GX」「SEED」ってどこかガンダムのリメイク感があったじゃないですか。「00」も1期は斬新だったけど、2期が人類の革新うんぬんとか、ボスキャラだったリボンズも含めて過去に戻っちゃった感がある。
で、その先に何をやるのかというと、再度また過去作の影響下にあるものをやるんじゃなくて、せっかくの機会だからと考えたのかどうかは知らないけど、今までやってない事をやろうって形で作ってくれたのが本当に良かった。
しかもそこで、ただ本当に宇宙人の襲来でドンパチするだけでなく、00本編で描こうとしていた相互理解みたいなものをちゃんと絡めて、言葉すら通じない存在に対して、そこに対話なんか成立するのか?を本気でやったのが凄いと思う。
「00」よりずっと後になるけど「AGE」でも最初は敵の姿を見せずに、宇宙人の襲来なのか?と思わせる序盤から始まったけど、結局AGEでやりたかったのは宇宙世紀の歴史物的な面白さを今の子供達にも伝えたいみたいなコンセプトだったわけで、結局は過去の方を向いて作ってました。
そこ考えると劇場版00はやっぱり新しい事に挑戦したなと思うし、序盤はまさかのホラー展開と、これまでのガンダムでは見た事のない新鮮さがありましたし、敵の陣営の描写に時間を割く必要も無いので、派手な戦闘シーンも沢山見れるし、既存キャラの描写に十分な尺も使えたりと、結構良い事ずくめ。
劇場版の新キャラのデカルト・シャーマンとガデラーザは客寄せパンダみたいで可哀相でしたが。刹那と同じイノベイターを出す事で、同じ能力を持っていながら、歩み寄ろうとする人とそうでない人の対比の為に出したそうですけども。
エンドクレジット後のエピローグで過去と未来の二つの時間軸が描かれる。理詰めで和平を実現しようとしたイオリア・シュヘンベルグ。非暴力主義で、右の頬をぶたれたら左の頬を差し出しなさい的なふみにじられても、それでも非暴力を貫くタイプの、ある意味感情で信念を貫こうとするタイプのマリナ。これね、どっちも非現実的だと思うし、どっちも夢想家だと思うんですよ。おおよそこれがリアルだとは私は思えない。
それでもね、それをあえて描くのもまたフィクションの美しさであり価値だとも思うんですよね。何十年もかかったけど、それでもやっとマリナの事が理解出来たと、彼女の元に戻る刹那に私は素直にグッと来ました。
アンドレイとかグラハムもそう。時に間違いもするし、時に遅すぎたりもする。上手く行く事ばかりじゃない。でも、それでもっていうのを描いてくれた劇場版00はステキだなと私は思う。
メカデザインもガンダムの顔がへの字無くして1期の路線に戻ってくれたのが私としてはありがたい。キャラ的にはやっぱり私はティエリア派。確か劇場版のパンフもマイスター4人別表紙バージョンとか出てて、ティエリア版を私は買ったような記憶がある。刹那一人で背負いこもうとする中で、あんな形でもティエリアが居てくれる事ってきっと大きかったんじゃないかと思えて、そういうとこも含めて好きなんですよね。
朗読劇でのアフターストーリーとか、メカ設定関連で多少動いてはいますし、水島監督的にも続編はやれたらなとは言ってますが、20年越しの「SEED」映画があそこまで大ヒットしたんだから、会社的にもそこにビジネスチャンスは見出しただろうし、GOサインは出そうな気がするんですけどね。ネクスト00、実現してくれたら私も嬉しい。
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