僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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死霊のえじき

死霊のえじき 通常版 Blu-ray

原題:DAY OF THE DEAD
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
アメリカ映画 1985年
☆☆☆☆☆

 

去年のお正月に「ナイトオブザリビングデッド」を確か見たはずなので、今年は「えじき」の方を久々に見る。同時視聴とかしてる人居ないかな?と思ったら、ゾンビ界隈の重鎮で本とか色々出してる伊東さんくらいしか居ないのか。こういうのはアマプラで無料とかでないとなかなか厳しい。80年代90年代の名作映画もいっぱいあるし、私も昔は後追いでレンタルで色々見た口なので、あの辺の文化はきちんと残って欲しい。

 

映画オタクなら知らない人は居ない基本ですが、そんな流れもあって若い人には知らない人も多そうなので、とりあえず初心者向けゾンビ講座から。

 

ゾンビという概念自体はブードゥー教の秘伝として昔からあるものの、今のゲームとかに出てくるゾンビのパブリックイメージを確立させたのがジョージ・A・ロメロ監督が作った19868年の「ナイトオブザリビングデッド」と、その2作目にあたる1978年の「ゾンビ」で、そのシリーズに当たる3作目が今回の1985年作「死霊のえじき」という事になります。

 

邦題がバラバラですが、原題は
1968年 NIGHT OF THE LIVING DEAD
1978年 DAWN OF THE DEAD
1985年 DAY OF THE DEAD
となっていて、夜の終わり、夜明けの終わり、日中の終わりと、ゾンビの発生から人類の衰退の状況が重なる感じで描いてある。話に直接の繋がりは無いものの、そういった流れは踏まえた上での作品になっていて、3部作として非常に面白いシリーズ。

 

一応この後もバイオハザード以降のゾンビブームの流れに乗って、
2005年「ランド・オブ・ザ・デッド
2007年「ダイアリー・オブ・ザ・デッド
2009年「サバイバル・オブ・ザデッド」
とロメロゾンビは続いて6部作と言われる事もあるが、旧三部作とはまたちょっとカラーが違う印象。

 

残念ながら2017年にお亡くなりになられてしまいましたが、確か奥さまが遺産を引き継いで「トワイライト・オブ・ザ・デッド」をを作るというニュースが前にありましたが、その後どうなったのやら。夕暮れの終わり。完全に人類の終焉みたいなシチュエーションですよね。

 

それはともかく、ブラム・ストーカーの「吸血鬼」、メアリー・シェリーの「フランケンシュタインの怪物」みたいに、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」と言っても良いくらいにクラシックモンスターを生みだした特別な存在で、その原点とも言えるシリーズ。

 

で、ロメロゾンビの面白い所は、ゾンビをただのモンスターとして描くわけではなく、何かしらの社会のメタファーとして描くのが特徴でホラーと同時に社会派作品として評価されてきた。

 

今回は世界中にゾンビが蔓延し、かろうじてシェルター内で生き伸びている軍人と研究者の10数名の限定された空間での人間模様を描く作品で、テーマとしては権力や体制と共に倫理の崩壊を描いてある。

 

スケール的にも、実際の予算的にも前作の「ゾンビ」よりスケールダウンしてしまった分、その点で世間的な評価も一段下がってしまったし、私も昔はそこは気になっていた部分ですが、いやこれがドラマとしては物凄く見応えがあってメチャメチャ面白い。

 

初見の人とかは、ゾンビ物なのにゾンビほおっておいて延々と残った人のドラマやっててつまんなくない?ゾンビに襲われたり戦ったりする場面もっと見せてよ!となる人もそりゃあ居るでしょう。

いやでもそういう作品だと知った上で見ると、ゾンビが外に溢れている日常っていうシチュエーションがもう楽しくて仕方ない。ゾンビが非日常ではなく、ゾンビが居る事が普通の日常の風景。いや~、これがね、私はもう大好きなシチェーション。

 

キャオプテンローズ率いる軍隊の方は、悪役として描かれてホント憎々しいですし、じゃあその反対として感情移入させるのが主人公の女性のサラなのかと言えば、必ずしもそうではない。いやサラはサラで全然悪くないけど、見てる人の感情を揺り動かすのは飼いならされたゾンビのバブ君っていうのが最高に面白い。

 

まるで「悪魔のいけにえ」のラストのレザーフェイスダンスの如く、あんなに恐ろしく何を考えているかわからなかった存在が、最後のほんの1シーンだけ感情が垣間見える(ような気がする)奇跡の1カット。

あれに近いものをバブにも感じます。ゾンビに感情移入させるゾンビの生みの親の巨匠のセンス。頭良いというか頭おかしいというか、いやすげぇとしか言いようが無い。

 

自己防衛の為だけに暴走する軍人、ローガン博士ももはや倫理が欠落していて擁護のしようもない。この絶望の中で人は世界の果てまで逃げるしかもう道は残されていないのか。そんな中でですよ、自らの衝動を抑え純粋さと思いやりを見せるのがゾンビのバブっていう、何だこれこの映画凄いと改めて思わせてくれます。

 

後期3部作は正直そこまででもない感じですが、ロメロゾンビ初期三部作はほんとどれもそれぞれの面白さがあって大好きです。

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