GIRLS und PANZER phase. ERIKA
作画:才谷屋龍一
原作:ガールズ&パンツァー製作委員会
刊:KADOKAWA メディアファクトリー
MFコミックスフラッパーシリーズ 全3巻(2016-18)
☆☆☆★
「TV版コミカライズ」「マジノ戦」に続く才谷屋龍一の手によるガルパンコミック3作目。今回はタイトル通り、黒森峰の逸見エリカを主人公にした物語。
ああ、回想シーンのTVシリーズの前回大会62回でみほが座礁した赤星小梅ちゃんを助けた事で優勝を逃した時を描いてあの時のエリカの気持ちとかを描くんだろうなと思ってたら、出だしから全然違った。
黒森峰の中等部にエリカとみほが入学してくるとこから始まる。ああ、黒森峰って名門校だしエスカレータ方式なのか。しかも中学の時点でもう戦車道がある。中学1年、入学時にエリカが小学校とは違うなとか言ってるのを見せられると、いや当たり前なんだけど彼女らは直前まで小学生だったのかとか思うと、改めて変な世界観だなとか思ってしまった。
みほは家が家だけに小学生とかの時点で戦車道はもうやってたろうけど(劇場版で子供時代のみほまほが戦車に乗ってるシーンもありますし)普通に小学校でもクラブとかで戦車道あるのかな?華道とか茶道とかと同じ感覚として戦車道がある世界だから普通にあるか。っていうか同じスピンオフコミックの「リトルアーミー」ってのがその辺の話なんでしたっけ?まだ読んで無いのでわからん。
それはともかく、私の頭の中では、みほとエリカが一緒のチームに居たのは高校1年の時の1年間って勝手に思い込んでたけど、この話によれば中学入学と同時だから、中学生時代の4年間もエリカはみほの背中を負い続けてきた。って考えると、これはちょっとヤバい。重みが違うぞって思うし、みほのライバル的な存在の筆頭がエリカとも言えるのでは?
中学2年の時点で隊長をやってた西住まほ。家元で優秀な人なのでそこはわかる。で、入学してきたみほをすぐに副隊長に任命。まあ良いとこの家系だし姉妹だからと多くの人は納得出来るだろうけど、エリカ的には、まだ実力も伴って無いように見えるみほが抜擢されたのが納得いかない。実際に戦って負けたのなら自分も引きさがれるので勝負させて下さい!という展開に驚かされる。
ここでエリカ視点というのも大きいんでしょうけど、みほがTVシリーズみたいに実は凄い実力を持っているみたいなのを、そんな重視しては描かない。勿論、実力派あるしそこで意外な苦戦をさせられる事でただものじゃない事は自分の身で体感する事にはなるんだけど、エリカの性格的にもぽやぽや~っとしたみほがどうしても許せない。ガルパンらしく戦いの後でノーサイド、とはならない展開になって私はけっこうビックリというか、ストレートに衝撃を受けました。うわっキツっ!って。
で、そんな最初の戦いから一気に高校生に話が飛ぶんだけど、その間の事はモノローグとかで少し触れられてて、まほが卒業後、中学3年の1年間は、みほが隊長、エリカが副隊長というポジションだったと。ここの1年間を描けば、多少なりとも二人の間に友情や信頼の一つも生まれそうだけど、あえて飛ばす事で、その間もエリカはみほに対して内心コンプレックスを募らせ、高校に入ってまたまほの指揮下で戦える事だけを見据えて、自分の力を磨くことだけに邁進する。
ただここ、TVシリーズ本編でも、今回のコミックでも描かれて無いけど、みほ的にはお姉ちゃん無しの1年間、副隊長のエリカも心を開いてくれないし、ギスギスした中で隊長やってたわけだよね?黒森峰を敗北に導いてしまったあの回想の大会だけでなく、ここの1年も何気に相当キツかったのでは?そういうつもりにつもったものが、もう戦車道辞めるに繋がっていたのでは?という気がしてきた。
そして再びエリカ視点的には、4年間のつもりにつもった感情。実力は認めるし、独特のみほならではの部分があるのも知ったのは事実。それでも西住流であり黒森峰のこうあるべき姿はまほ隊長だろうと。
高校生編はどっちかというとアクション、戦車戦の見せ場で、継続高校との1戦が描かれる。お馴染みのミカ、ミッコ、アキも居るけどそっちも1年生(2年生?)のエース部隊という扱いで、継続は継続でその時の隊長・副隊長が居たりする。最終章4話の遥か前に描かれたものですので、モブにもレニングラードカイボーイズは流石に居ない。継続3人はスナフキン・ムーミン・ミィがデザインモチーフですが、今回の隊長は頭に触覚ついてるし、スティンキーなのかな?キャラ的にはトリックスターと呼ばれて、何をしてくるかわからないのが持ち味になってるので、スティンキーはそういうキャラでもないけども。リボンが特徴的な副隊長はフローレン(ノンノン)?ミムラねえさん?特技としては継続らしいそれ戦車じゃないだろって操縦テクニック。
継続の意外な強さに苦戦はするものの、まほ、みほ、エリカの3人が居るのはやっぱり強い。ここではみほの強さを信頼し、まほをサポートするのはあなただと認める気持ちも芽生え、ようやくここに来て気持ちにも整理がついたかと思いきや・・・。
最終話でようやくTV回想シーンの黒森峰敗北が描かれる。TVの話に繋がるんだからそれは仕方ないんでしょうけど、上げて落とすこの落差が非常に心苦しい。
4年間もずっとライバル視し続けてきたみほも心が折れて離脱してしまうのに対して、やっぱり悪態をつくエリカ。いや~、エリカにしてみればさ、ずっと屈辱を味わされてきながらも、自分は腐らずにここまで努力してきたんだぞと、お前は逃げて終わりなのかって、これはこれで苦しいだろうなってちょっと思う。
で、そんな中でみほに助けられた赤星小梅ちゃんが、誰も居なくなったからこそ自分は一人でも続けるっていう、いやぁここもキツイわな。今回のコミックで割と小梅ちゃん要所要所では出てきてて、エリカにはみほの腰巾着とか言われちゃうんだけど、なんかねぇ、彼女は数少ないみほの理解者って感じだったし、彼女視点で考えれば、彼女視点で凄いドラマというか葛藤があっただろうなと思う。まほは隊長だしそこら辺もちゃんと見てくれてはいるだろうなと思いつつ、TVシリーズでは決勝戦前の一言くらいしか小梅ちゃんセリフなかったけど、たった一言でもあれ重要なセリフだったよなと思えてグッと来ます。
みほ役の渕上さんがいつだったか、エリカの外伝コミック読んだらエリカが愛おしく思えちゃってね、エリカ押しになりましたみたいな事を言ってたんだけど、これの事ですよね。エリカを実はやさしい良い子だったんだ的に描くわけでもなく、キツさも含めてエリカを通して描いてあるのは面白いなと思ったし、そこを描くことでみほの深堀りも描かれてて、予想してたのとちょっと別に心を揺さぶられる作品でした。
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