僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

機動戦士ガンダムMS戦記

機動戦士ガンダムMS(モビルスーツ)戦記
原案:富野由悠季
まんが:近藤和久
構成:高橋昌也
プランニング:クラフト団
刊:講談社 講談社コミックスボンボン ボンボンKC455
単行本全1巻 1985年(連載1984-85)
後にメディアワークス再刊行時に「MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝」に改題
☆☆☆☆

 

数々のガンダム漫画を今も継続して連載されている近藤和久先生の最初のガンダムコミックにして連載デビュー作。

というか、ガンダムコミックの歴史的にも、TV&映画に合わせたコミカライズ作品の岡崎優版「機動戦士ガンダム」以来の2本目のガンダムコミックで、今に至るまで山ほど描かれてきた、アニメのコミカライズでは無い外伝物として世に出たものはこれが1番最初の作品。

 

当時の状況としては、外伝的作品として「MSV」はもうありました。書籍ガンダムセンチュリーからの派生でMSVが生まれ、プラモ展開や作例の掲載、そしてボンボンでは漫画では無いものの、イラストストーリー的な感じで「エースパイロット列伝」は掲載(連載)済み。そして外伝というよりはホビーコミックですが「プラモ狂四朗」も同じボンボンで絶賛連載中。というかプラモ狂四朗もこのMS戦記も原案はクラフト団と表記されてますので、川口名人などが所属していたモデラー集団ストリームベースがMSV以降のこの辺の一連の流れを作っていたという形になります。

 

wikiなんかには「Zガンダム」の連載が決まったのでMS戦記が打ち切りで終了したとか書いてありますが、恐らくは当時のインタビューか何かでそんな発言があったのかもしれませんが、近年の近藤氏のインタビューでは、ボンボンでのZガンダムのコミカライズ担当が決まったので、その練習的な意味合いとして「MS戦記」を短期連載する事になった、と語ってます。ボンボンKC版単行本の作者コメントで僕のデビュー作と言ってるように、講談社の漫画賞に応募していた中で何度かひっかかり、ピックアップされたものと思われる。

 

何故近藤氏だったのかはよくわかりませんが、絵柄の大友克洋フォロワー部分なのか、あるいは応募作の中のメカ描写とかで光るものがあったのか、もしくはモデラーの側面もある人なので、そこら辺の流れで面識とかがあったのか等は不明。

 

ただ、今みたいにガンダム漫画が一般人では把握しきれないくらいに溢れ(専門誌のガンダムエースがある他に色々な所で他にも多数連載)ている時代と違って、世間的には初の衝撃みたいなものだったのでしょう。いや私もリアルタイムとかは知らないけれど。プラモ狂四朗がガンダムに瞳を入れたりしたのとは真逆の、まさにミリタリーテイスト溢れた戦記物の作風。そして近藤ディティールと呼ばれた、オリジナルには無いパネルラインやアンテナ、関節部分の構造とか、MSをリアルに近くで見るとこうなってるんじゃないか?みたいなハイディティールが当時としては物凄く斬新だったんだろうなというのが、今見てもよく伝わってきます。

 

この後続く近藤ガンダム漫画では、段々とMSのデザインが奇形化していって、個人的には小林誠と共に凄く苦手な作風でしたが、この時点ではハイディティールなだけで、バランスは基本いじってないですし、MSはともかく戦艦や戦闘機とかのパネルラインはこれやりすぎだろってレベルですが、まあどう見ても「スターウォーズ」の影響ですし、逆にそれは当時の流行なので、そういう部分でも時代背景が垣間見えてすごく面白い部分。

 

近藤氏は「Z」のアニメ設定でもジム2のベースデザインとかに名前を連ねてるのですが、まあジム2は旧ジムのバージョンアップ版的な扱い。基本デザインは大きく変えずに、センサー類なんかを増やす程度で、流石にTVアニメで線が多いものを動かしたりは出来ないので、パネルライン的な物は無い。更にはハイディテールという意味では「ポケットの中の戦争」でもイメージボードとして参加されていますし、今では統合整備計画の設定で別機体になっているポケ戦MSも、当時は1年戦争のMSを高解像度のカメラで見るとこういうデザインだったという方向で本来はデザインされているもの。そういう意味では、きちんとここから繋がっているものだったりします。

 

後は、ガンダム史上初の外伝漫画が「ジオン視点」の「戦記物」というのも面白い部分で、これも後の世を考えると面白い部分。

ジオン視点というのはそれこそ前述の「ポケ戦」もそうだし、現時点のガンダム最新作の「ジークアクス」や「復讐のレクイエム」にも共通してる部分。2作とも女性主人公というのが現代性という感じでしょうか。

 

で、もう一つの「戦記物」という部分。世間に溢れてるガンダム語りでここを突っ込んで考えてる人って物凄く少ないです。え?ガンダムって基本戦争がベースにあるんだし、戦記物でしょ?と思うのは全然普通ですし、実際の外伝物の大半がそういうものになってますが、実は中にはちゃんとそこを考えて違う個性として描いてるものもあったりするので、そんな視点を持つのも面白いかもしれませんよ。

 

で、そんな近藤氏もその後何十年とガンダムコミックを定期的に何作も更新して行くのですが、基本はそのままの作風をずっと続けていくだけなので(一応、今回は少し方向性変えてみるかみたいなのも数作はある)ぶっちゃけ近藤メカ以外に特に見る所が無い作品ばかりで、個人的にはあんまり評価してない作家さんですが、逆にこれで仕事が途切れないでガンダム漫画を何十年も継続して描き続けている凄さもあって、それは編集部とズブズブな関係とかよりも、多分近藤先生ご本人がきっと凄く人格者で良い人なんだろうな~とか勝手に私は想像したりしてます。

 

とまあそんな近藤先生の作風はさておき、この最初の「MS戦記」だけは後の近藤ガンダムと違って原作つき。ストリームベースの高橋昌也氏は後に「ガンダムセンチネル アリスの懺悔」なんかも手掛けてますね。

 

いわゆる大人のミリタリー物にはせずに、掲載誌のコミックボンボンに合わせてか、まだ右も左もわからないような学徒兵がパイロットに志願し、ルウム、オデッサジャブロー(エピローグではアバオアクー戦も)と戦場を経験して成長していく姿が描かれる。

パイロットへ志願して訓練する期間とか、二つ目のコロニーに毒ガスを入れて住民を殺してるシーンがあったりとか(設定上は1つしかコロニーは落ちて無いよね?)厳密に考えるとちょっと変な部分もあるんですけど、まだ今ほど設定が固まって無い時期ですし(それ言ったらアニメのポケ戦のシドニーうんぬんの会話も変ですし)まあそれは良いとして、実は「ジ・オリジン」が出るまでアニメでは大した掘り下げもされてない黒い3連星がちょっと良い感じの先輩として出てきたりする辺りは嬉しい人には嬉しいんじゃないでしょうか。

逆に連邦側はガンダムと遭遇する中で、当然アムロの描写は一切見せずに、ガンダムの異常な強さをまさに白い悪魔的に表現してるシーンなんかは、後のPS3版ガンダム戦記の「アバンタイトル」を彷彿させる感じで面白い描写。

www.youtube.comただの連邦憎しだけでなく、良い上司や微妙な上官、先輩や、自分が新人だった頃から時間も経過し、新しい新人が入ってきてそれが部下になったりと、きちんとドラマを描こうとしている辺りが素晴らしい。


でね、最初は主人公のフレデリック・ブラウンが学生上がりの訓練生だから認識用の目印として彼が乗るザクの肩のスパイクアーマーだけ黄色く塗装される。で、後のジャブロー戦でアムロの乗るガンダムと激突。肩にビームを受けアーマーがすっとばされる。もはや訓練生では無くなったという描写ですよね。それでもなんとかガンダムに立ち向かおうとするも、流石にレベルが違いすぎて相手にもならず、死を覚悟するも、MSの脚部を切断され中破。なんとか一命だけはとりとめた、という流れがあるんですけど、いやその肩の初心者マークがここで外されて死ぬ思いをする事で、少年から大人になると言う通過儀礼ですよねこれ。ここを説明やセリフを使わないで描いてあるこの構成の上手さ。しかもガンダムだって中に乗ってるアムロは少年兵だという事をブラウンは知らないわけで、それは読者のみが知るというのもね。

 

そうそう、こういうのが演出であり作品の面白さだよなと。ぶっちゃけ、今回読み返す前はミリタリー偏向に導いた近藤漫画とか多少叩いてやろう的な気持ちもあったのですが、もうこの描写だけで許せる。このシーンこの演出だけで「MS戦記」は十分に読む価値ある漫画じゃん!となってしまうものだから面白いものです。

 

ちゃんとボンボン読者に合わせたのか、MSのバトル多めで、なおかつちゃんとMSをキャラクターとして扱ってるので子供が読んでもそれなりにカッコいいMS描写だけで読める作風なのが何気に上手いです。ちゃんとパイロットの描写もありつつ、ザクのアップのカットで「大丈夫かブラウン」みたいなセリフをそこに重ねる事で、MSが直接喋ってるわけではないけど、ちゃんとMSがキャラクターとして成立してるし、そこをパイロットの直接描写のカットにしちゃうと、多分子供心には響かない。

 

そもそもロボ物のカットイン描写も富野の発明した演出方法と言われてるけど、そんな感じで、ガンダム漫画の黎明期だからこその創意工夫なんかもちゃんとあるように感じたし、いやぁ「MS戦記」良いぞこれっていう気持ちです。

機動戦士ガンダム0079外伝 MS戦記 (電撃コミックス)

「機動戦士ガンダム」MS戦記

関連記事

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com