
原題:IRONHEART
監督・ショーランナー:チナカ・ホッジ
原作:MARVEL COMICS
配信ドラマ 2025年 全6話
☆☆★
「ブラックパンサー:ワカンダフォーエバー」でデビューし、トニー無き後のアイアンスーツを身にまとうアイアンマンの後継者としてみなされてきた次世代ヒーローアイアンハートことリリ・ウィリアムズ。
MCUの一番人気、MCUの顔、MCUの立役者であるアイアンマン/トニー・スタークのあまりの偉大さに、「ワカンダフォーエバー」の時から、正直ブーイングの声は大きかった上に、近年のマーベル叩きの加速にドラマ配信前からマーベル作品史上最低とかやたら言われてた本作。
いや、誰も褒めてる人を見た事無い「シークレットインベージョン」以下の作品なんてそうそう作られるものじゃないぞ。私もあれはどうかと思ったし。
しかもマーベル叩きなんてただのインプレッション稼ぎなので、あんなの気にするだけ無駄。ぶっちゃけ映画界に次の新しいムーブメントが起きるまでは同じ事を延々と繰り返すでしょう。ルッソ兄弟の復活する次の「アベンジャーズ」で盛り返せればよいけれど、流れも無い中で、まあ正直期待はしない方が良いと思います。ブームが沈静化して定着しただけなので、それが再ブームなんて20年30年後の話。
で、そんな空気を読んでなのか、MCU版アイアンハートはアイアンマンの後継要素はバッサリ全てカット。原作ではAIのトニーがサポートして、技術も受け継がせるとか後継者としての描き方をしてたのですが、MCU版はアイアンマンやトニーとは全く関係無い別のヒーローですよ、というスタンスに変更して来ました。
いや、むしろヒーローとしてすら描いてないし、そもそもビジュアル的にもアイアンスーツが活躍するシーンとかほぼ無し。「ブラックパンサー」シリーズと同じく、ライアン・クーグラーが総指揮で入ってたりはするのですが、描き方を初登場時とは全く変えてきたな、という印象。
2000年後半とか、MCUが生まれた2010年代以降、原作でもやたら新世代ヒロインとかが増えたんですよね。
例えば最初のアベンジャーズって全員白人なんですけど、それは原作アメコミの50年も前の古い時代から引っ張ってきたから。黒人のファルコンやウォーマシンは脇のサポートポジション。そしてクライマックスのフェイズ3になってから、黒人でピンを張れるブラックパンサーを出したり、女性ヒーローのキャプテンマーベルを出したりした。で、今度はシャン・チーでアジア人を出したり、ミズマーベルで中東系、後はLGBTQとかを出してポリコレに染まったとか言われてるわけですが、そうじゃなくて、アメコミヒーローの50年60年分の歴史の流れや社会情勢を映画では10年とかに凝縮してやってるからこういう事になってるのです。
アイアンハート、ムーンガール、ミズ・マーベル、ワスプ(ナディア)ミズアメリカ(アメリカチャベス)、あとシュリとかもかな?等々、近い時期にぶっちゃけ似たり寄ったりな路線のキャラがやたら増えて、原作でのリリは経験不足だけど、怖いもの知らずの性格で旧世代には考えつかない若者らしい要素をもたせた次世代ヒーローという感じの描き方をしてたかな?カマラは人種や宗教のバックグラウンド、ナディアは精神障害を抱えているとか、キャラ付けに苦労というか工夫と言うか、色々細かく差別化してました。
MCUでのリリは、普通にやってもつまんないし、映画での様子見の段階では、ファンの反応を見る限りアイアンマンの正統な後継者的な位置付けは荷が重そうだ、と判断したのでしょう。そこは正しいと思うし、多分作品を見ても叩く人、あるいは見る前に叩く人は「こんなのがトニーの後継なんてありえない」という人が多いと思うけど、作り手は多分そういうのじゃないから、と言えるように作ったと思う。
意図したものではなく偶然の結果でしたが、1話でかつて命を落として失った親友のナタリーをAIの形で復活させる、という割と現在進行形の難しい問題を描いてあってちょっとビックリしました。原作であったトニーのAIは役者的にもファンの心情的にも難しいだろう、みたいな所から、こっちも原作からあった親友の死という所に絡めてきた。倫理的にこれはアリかナシかどっち?
という所から、全6話のストーリーラインも、単純にリリがヴィランと戦うという話にはせずに、むしろヴィラン側に加担して、その中で葛藤していくみたいな話になってる。
一応、初代アイアンマンのメインヴィランのオバディアの息子が出てきたりして、世界観の繋がりは示されるものの、ストレートに新しいアイアンマンとして活躍して行く姿が描かれるわけでもないし、そこを関係無くしても単純にヒーローが悪と戦うみたいな話にもしてないので、この作品に単純さを求める人は途中離脱する人も多いと思う。
でも、そんな葛藤や、まだヒーローになりきれていない新人が、最後の最後にようやく覚醒して、ようやくヒーロー誕生!ここから新ヒーローの活躍がスタートするのだ!という、言わば「オリジン編」みたいな作りになるんだろうと私は予測してました。
が!え?そっち方向で終わるの?と結構意外なラストでした。
正直、感情移入はしずらい。
でもまあおっさんの私が若者に感情移入しにくいのは当たり前の話で、倫理とかはともかく、これがリリの選択で、彼女の考え方なんだなと思うしかない。
そんなラストも含めて、単純なヒーロー物にせず、強情であり不安定でもありテーマとしてもちょっとトリッキーな所を描いた、少し風変わりなドラマだったように思います。
あと、メインヴィランがフッド/パーカー・ロビンスになるのは以前から告知されてたので知ってましたが、原作でも因縁あるのかな?私が知ってる範囲では、いかにもライバルキャラって感じでも無いイメージですが、フッド自体は50年も昔から居る有名ヴィランとかではないにも関わらず、原作でもカバル(ヴィラン版アベンジャーズとかイルミナティみたいな)の一人に入ってたりと、歴史は浅いけど大物ヴィラン枠に入れられてる印象。
力の源であるフード(マント)は魔術由来ながら、裏社会で頭角を表してきたマフィア組織のボスという感じなので、どっちかつうとストリート系のヴィランかなぁ?私の中では。マーベルドラマは今後は映画との関わりを薄くしてデアデビルを中心にストリート系を軸にやっていくみたいな話ですが、いやそれかつてのディフェンダーズサーガの繰り返しじゃんと思わなくもない。
で、こいつのおかげで話は魔術系の方に傾いて、ゼルマ・スタントンとかが出てくるのは嬉しいのですが、当然フッドを操る黒幕としてメフィストも遂に登場。え?「アイアンハート」なのにそっち方向を絡めてくる?
この辺りも正直、食い合わせがあまり良くないなと思ってしまった。原作並みにクロスオーバーが簡単に扱えるならそれもアリかと思うのですが、行き先の定かじゃないドラマシリーズでこれをやられても、面白いと言うより大丈夫かこれの心配の方が勝ってしまう。
フェイズ4以降の投げっぱなしエンドに、不評による作風や体制の見直し、しかもこれが一応フェイズ5のラストという位置付けですから、まさしくちぐはぐで良くない部分が目立ってしまうのかなという気がします。
ドラマとして低水準ってわけでは無かったと思いますが、まあここまでついてきてる濃いファン向けで、大衆の人気が出る事はまずないだろうなと思います。正直、気持ちの良い部分がほとんどないので、ドラマやアメコミを楽しいエンタメだと思ってる人にはキツイかも。私的にも全然低評価とかじゃなく、むしろ頑張ってた方だとは思うけど、単純に面白かったかと言われるともう少し工夫は欲しかった感じはします。
次は映画だと「ファンタスティックフォー」
ドラマは「ワンダーマン」かな?アニメが「アイズオブワカンダ」
今回の感じだとブラックパンサーとは切り離された感じですが、魔法系に繋がるのか、ストリート系に繋がるのか、もしやアベンジャーズに繋がるのか(それは無さそう)ヤング系に合流するのか、先が見えない。むしろ結局このまま放置されて終わりの可能性が高いんじゃ?と思えてしまうのがちょっと怖い。やっぱり積み重ねがここでアッセンブルするんだなっていう分かりやすいビジョンが欲しいとこです。
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