MOBILE SUIT GUNDAM MS BOYS
漫画:高山瑞穂
シナリオ:乾 直由
原作:矢立肇・富野由悠季
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全2巻
2010年(連載2009-10)
☆★
「ブルーディスティニー」旧コミカライズ版、ボンボン版コミカライズ「SEED」と「DESTINY」で高い評価を受けた高山瑞穂のガンダムエースでの連載作品。
ジオンの独立の志に感銘を受けた少年が、MSパイロットに志願し、戦争に巻き込まれて行く中で成長して行く姿を描いた1年戦争外伝。
一応、ヒロインが中立コロニーのサイド6の首相の娘でうんぬんっていう話の軸はあるものの、実際は政治劇になるわけでもなく、中立と言う部分をベースに、じゃあ何故人間は戦争に加担してしまうのか?みたいな事をもしかして描きたかったのかなという気はするけど、正直それがちゃんと描けていたかというと物凄く微妙。
サイド6ってファーストガンダムの終盤での舞台にもなりましたし、「ジークアクス」も確かあれサイド6の話でしたよね?
中立・中道って、偏った思想を持たない正しい道(ゲーム的に言うとロウでもカオスでも無いニュートラル)と思う人も実は世の中には多いのかな?って気がしてるんですが、私は昔からそれが嫌いで、中立を装って思考停止して現実逃避している、いかにも日本くさい嫌な考え方だなって思ってます。
映画の「シビルウォー」で描かれた(マーベルのじゃないやつな)中立地帯のあの異常さみたいなのを見ると、そうそう中立を装って現実から目をそらしてるだけだよねってすっごい思います。
そういう意味ではガンダムにおけるサイド6って、日本人らしい感覚の暗喩として描けるはずで、そういう視点を持った作品があっても良いのになって思ってます。ジークアクスもニャアンの難民設定とかせっかく面白くなりそうな設定なのに、やっぱりあの人たちは社会や政治には全然興味が無いんだろうなと知らされて、そこも残念ポイントでした。
で、そんなサイド6首相の娘がヒロインなのですが、主人公クルトもジオン本国サイド3出身ながら父が平和主義の為、左遷され自分までも苦しい思いをしなければならないのはおかしい、自分は戦う道を選ぶ!というタイプの主人公。
そんな中で、二人とも戦場で色々な人達と出会い、自分が思うほどに世の中は単純じゃないし、自分の感情や浅はかさも同時に見えてきて、人として成長して行く、という話には一応なってる。
そこで出会うのが、ガンダム短編集収録「極東MS戦線記」の砂漠の銀狼だったり、「MS戦線0079」のブラウアー小隊だったり、途中まではライバル的な連邦のパイロットが出てきて、陸戦用ジム(陸戦型ジムにあらず)とか装甲強化型ジムというちょっとマニアックな機体だったりしたものの、最終的には「戦慄のブルー」蒼き死神ブルーデスティニーと遭遇してしまう、という他作品とのリンクの方が物語のテーマとかより実質メインになっちゃってる感あり。
主人公MSが副座式のザクタンクという時点では風変わりで面白いじゃないの、と期待を持たせつつ、相棒的な存在のノビコフ先輩の方がそっちメインで、主人公クルトは銀の肩をもつガンロンの機体を受け継いでいく形になる。
ザクタンクも毎回ボロボロになるので、旧ザク、ザクキャノン、陸戦型ザクとマゼラベースの上半身のザク部分がどんどん変わって行く。
そして銀狼の機体も、陸戦型高機動ザクから、グフカスタム、ドムへと単行本全2巻(連載役1年の11話)の短いペースでやるので、機体への思い入れも生まれなければ、その変化がキャラクター性としてドラマとリンクしているわけでもないし、しいて言えば戦闘にその機体特性とかが生かされるわけでもなく、ただMS好きがバリエーション増やしました、でやってるだけの悪い印象しか無い。
今回は脚本家の人が別についてるので、その人なのかなぁ?高山先生個人の名義だった「極東MS戦線記」だと陸戦型ガンダムのスペックとかちゃんと生かしてたのにね。
勿論、私もMS好きですし、陸戦用ジムとか装甲強化型ジムとか、「ギレンの野望」で量産こそしないけど、試作機1機出来た奴を中堅クラスのベイトとかあの辺のネームドパイロットに回したりするので、意外と運用する部分では結果として目立つ存在だったりして、そんな機体がこうして劇中で使われるとそこは単純に嬉しかったりはするのですが。
あとはブラウアー小隊。「MS戦線0079」wiiで出たゲームで、単体でのコミカライズもノベライズも無い作品なので、「コードフェアリー」にもちょこっと出てきてましたが、こうして他の作品に出ると私は嬉しい。元のゲームやっておらず、設定ぐらいしか知らないので、こやつらがあの噂の・・・みたいな感じで私は嬉しい。
そして!やっぱりブルーディスティニーですよ。
セガ派な私は元ゲームをオールAランクとるまでやりましたし、ブルーにはメチャメチャ思い入れがある。「ギレンの野望」の時はもう主人公気分でプロトガンダム出来たら真っ先に私はユウにまわします。
今回のコミックでは、目の前に立ちはだかる恐ろしい存在として描かれるので、パイロットの描写も一切見せない。そこは近藤和久「MS戦記」でのRX-78と遭遇してしまうシーンなんかにも通じる物がありますね。しかも、なんなら当然と言うかブルーは倒せずに圧倒されて主人公の負けて終わります。そりゃあ高山先生だって、実はここでブルーは一度黒星がついていたとか後付けで書きたくないでしょうし。
ジオン視点ながら「MSイグルー」なんかとは違って、ジオンマンセーをただやりたいだけの話とは違って、少年の学びと成長みたいなものをきちんと描きたいという志だけはあったのかなと言う所は見えるので、そこは悪くないと思うけど、内容が追いついて無かった感じです。
さてここまで来たらせっかくなので次は高山版ブルーも再読しようかと思います。ダムエーの最新のコミカライズもあれはあれで面白いのですが(最近ずっと休載してますが。クライマックス前なのに)当時からの思い入れで、旧版もやはり捨てがたい魅力があります。
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