ETERNALS
著:ニール・ゲイマン(ライター)
ジョン・ロミータJr.(アーティスト)
訳:石川裕人、今井亮一
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2021年
収録:ETERNALS v3 #1-7(2006-07)
☆☆☆☆
神にも等しい超人類エターナルズに何が起きたのか?
ニール・ゲイマン原作
ジャック・カービーが遺した創世神話にゲイマンが挑む
百万年前、天空族セレスティアルズの遺伝子操作によって誕生した超人類
『エターナルズ』。神の如き力を備えた彼らは、地球の守護者として人類の
進化を見守ってきた。しかし、ある男の“目覚め”から、その栄光の歴史は
大きく狂い始める事になる…。今や世界的な作家となったニール・ゲイマンが、
かのジャック・カービーが遺した創世神話に挑む話題作。巻末には、ゲイマンへの
インタビュー、ゲイマン自身による企画書など、豊富なボーナステキストも収録。
映画に合わせて原作本も出ました。つーかヴィレッジブックス、隠し玉いっぱい持ってたんですねぇ。小プロのマーベルとの独占契約が発表されて以降も1年間マーベル作品出し続けてます。いやありがたいですわ。
映画の方は土曜日に観てくる予定をしてますが、まずその前に原作本。と言ってもそのまま原作って程では無く、映画の予告やキャラ紹介を見た感じではいくつかあるシリーズから色々引っ張ってきてる感じ。
そもそものエターナルズは、アメコミのキングと呼ばれる、ジャック・カービーが1976年に脚本・アートの両方を担当したのが最初のシリーズ。あのカービーが手掛けた!と注目はされたものの人気はやや伸びず19号で第1シリーズは終了。他のアーティストが他のマーベルユニバース作品に登場させたり、第2シリーズも刊行されたものの、鳴かず飛ばすな状況。そしてこれまた有名で人気ライターのニール・ゲイマンが再始動させたのが今回の第3シリーズ、という事のようです。
「マーベル:レガシー」でもエターナルズ関連の設定が使われてましたし、私も大まかな設定とタイトルくらいは知ってる程度で、きちんと触れるのは今回の邦訳や映画が初めて、というような状況。
今回、テキスト部分や解説で色々知ったのですが、イースター島のモアイ像とか、所謂オーパーツ的なものが、人類とは異なる種族の干渉の産物である、それは古代の神々か、はたまた宇宙人の仕業なのでは?っていう論調が生まれ始めた頃に、カービーがそれを面白がってマーベルユニバース内でそういう設定を作ってみようというような試みが「エターナルズ」の根本にあったというような事が書いてあって、なるほどと納得行きました。私もそういうオカルト的な奴とか好きでしたし。
ただ、そもそも神様的な存在が当たり前に登場するマーベルユニバースにおいて、その辺の設定って今更じゃない?そこで生みだされた超人がエターナルズらしいけど、他のスーパーヒーローやミュータントとの違いは?つーかそのままではないにせよ、宇宙人の遺伝子操作で生みだされた超人とかインヒューマンズとかぶってない?だとか、突っ込み所も同時に理解出来ますし、なかなかその辺を引き継いだライターも生かし切れてなかったというのも、凄くよくわかる話。
そんな中で、脱構築や神話の再定義なんかを得意としているニール・ゲイマンが改めて語り直すというのは確かに面白そうな素材です。
リミテッド・シリーズとして7号で完結。その後も第4シリーズとかあるみたいですが、設定として使われる事はあっても、なかなか人気のシリーズとまではならないのがエターナルズの実情。
つーか何でこれを映画化に選んだんだ?と疑問を感じずにはいられませんが、逆にそこは興味深い所ではありますね。今はMCUもマルチバースとか横に広げようとしてる感じがしますが、そんな中で縦軸の掘り下げとしてこういうのも一度きっちりやっておこう、みたいな感じでしょうかね。MCUでも「ガーディアンズ」で実はセレスティアルズ関係に既に触れてたりしますしね。
こちらの第3シリーズは、メインのストーリーラインでは「シビルウォー」をやってた時期なので、アイアンマンがその辺で少し絡んできたりしてますが、人間とエターナルズ、ましてやセレスティアルズとの感覚の違いみたいなのは強調されて描かれてて、そこは面白いです。
しかも、単純にエターナルズVSディヴィアンツの正義と悪の戦いみたいな感じの話ではなく、悠久の時を生きるセレスティアルズの目的は何なのか?そしてそれに作られた存在であるエターナルズは、何を思い、何をすべきなのか?みたいな所の方に軸を置いて話が展開するので、そこはなかなかに面白い。
しかも、いきなりエターナルズの使命がどうのこうのの話に入るわけでも無く、これまでは普通の人間として生きてきたものの、突如エターナルズの力や使命に振り回される事になった状況から描いてくれてるので、ある意味普通のヒーロー誕生譚から、通常のヒーローとは違うエターナルズならではの差や葛藤みたいなものも丁寧に描いてくれてるので、話としても予想以上に面白く読めました。
ディヴィアンツもただの悪魔やモンスター的なものじゃ無く、意外と人間味があったりして、そこも楽しい。
あと、割と好き嫌い別れる印象のロミータJr.のアートも私は好きな方なので、その面でも好印象です。
なるほどエターナルズとはこういうものなのか、というのを知るには十分な面白さでしたし、MCU版、これまでのヒーローとは違う位置付けをどうやって描いてくるのかな?とそこも興味がより湧いてきました。
こっちを先に読んでおいて良かったです。映画もより楽しみにしてます。
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