僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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スーパーマン:イヤーワン

スーパーマン:イヤーワン (ShoPro Books)

SUPERMAN:YEAR ONE
著:フランク・ミラー(作)ジョン・ロミータJr.(画)
刊:DC BLACK LABEL 小学館集英社プロダクション
アメコミ 2020年
収録:SUPERMAN:YEAR ONE #1-3(2019)
☆☆☆★

 

新たに語られる、
偉大なるヒーローの誕生譚

 

という事で、アメコミ界の巨匠、フランク・ミラーが語るスーパーマンの誕生編。
ウチのブログだと以前「スーパーマンアメリカン・エイリアン」の感想記事を書きましたけど、様々なアーティストの手により、何度もリメイクされ続けてきたスーパーマン誕生の物語。リブートの際の第1話とかじゃなくて、もはや俺はスーパーマンの誕生はこう書くぜっていう一つのジャンルみたいになってます。この辺りは歴史のあるアメコミらしい部分ですし、皆が納得できるような最大公約数ではなく、作家の主張が作品ごとに出ている所が面白味でもある。

 

今回はブラックレーベルというレギュラー誌とは違うフォーマットで、1話毎のページ数も多く、全3話更生。1話目が「スモールビル」2話目が「アトランティス」3話目が「メトロポリス」という構成になっているのですが、この1話目のスモールビル編がメチャメチャ面白い。

 

設定はお馴染みのものですが、異星人であり、人間では無い「超人」のスーパーマンが子供達のコミュニティの中でいかに倫理を身につけ、両親の教えと自分なりの考え方を試行錯誤していくか、という所が描かれる。

 

割と他の作品では、クラークが自分の力に戸惑いを覚える、というような形で描かれるケースが多い印象ですが、要はそれってスーパーマン程では無いにせよ、普通の人が自身の成長や変化と物語を重ね合わせて読む事が出来るので、感情移入を招きやすくする、という面があるのだと思います。

 

が、今回のスーパーマンは割と幼いころから自分には特別な力が備わっているというのは自覚して受け入れていて、普段は力を抑えて能力を隠すのは当然として、いじめっこを力でねじ伏せるのは悪い事なのか?みたいな倫理の部分を、自分なりに考えていく、という描かれ方をされていて、そこが凄く面白い。

 

両親の教えにただ従うのではなく、両親の意見は両親の意見としてあくまで参考にして(ジョナサンとマーサでも多少考え方は違いますしね)自分で考えようとする、という辺りが結構独特。物凄く自分に対して客観的なんですよね。

 

流石はフランク・ミラー。歳とっても今だその力は衰えず。「ダークナイト:マスターレイス」も何だかんだ言ってもやっぱ面白かったしなぁと凄く嬉しくなります。

 

そんな客観性を持つクラークでさえ、ラナ・ラングに対しては自分をおさえられないほど熱くなる辺りがまた可愛くって面白い。

 

私は「ヤング・スーパーマン」NHKで放送してた奴が好きで見てたので、(確かセカンドシーズンくらいまでしかやってなかったと思うけど)ロイス・レーンよりはラナ・ラング派です。いやヤングスーパーマンなら本当はクロエ派ですけど今回のには出てこないのでとりあえずそこは置いておきます。オタクは「スパイダーマン」でも多分MJよりグエンの方が好きですよね。(結構偏見)

 

そんなラナへ、必ず戻ってくるよと約束し、クラークは海軍に入る。え?クラークが軍隊へ入隊って展開は珍しく無い?あまりその後生かされて無いだけで昔のエピソードでもあったのかな?そこはよくわかりませんが、いきなりメトロポリスに行くのではなく、独自の展開に入る。


アトランティス」って章タイトルだし、アクアマンを絡めるのかな?と思ったら、ロリ・レマリスという人魚と恋に落ちる。んん~?何だこの展開。解説書読むと、昔のエピソードでもこういうキャラが居て、そこでも一時期スーパーマンの恋人だったのだそうな。私は知らなかった。

 

軍隊の中で人間の限界を学び、海底世界では自分の力を限界まで存分に使える中で、自分はこちら側の世界の存在だと、そこにアイデンティティを見出していくクラーク。

 

フランク・ミラーの過去作でも、基本的にスーパーマンはそれだけの力があるのならば人間としてではなく、神として人々を導いていく存在であれ、というのが昔からミラーの主張でした。だから「DKR」ではそれをやらないクラークにバットマンはお前はお笑いだ、って揶揄される。

 

え~、1章ではラナつってたのに、今度はロリとか別の恋人作っちゃってるし、どうせ次の3章「メトロポリス」ではロイスと恋中になっちゃうんでしょう?次々と女をとっかえひっかえしていくクラークって・・・とか思ってたら、そうそう、忘れてました。フランク・ミラーはロイス認めて無いんだった。スーパーマンに釣り合うのはダイアナ(ワンダーウーマン)しかいない、っていう主張をしてる人でした。

 

という事で次のメトロポリス編ではバットマンワンダーウーマンとのいわゆるトリニティの出会いが描かれます。

 

フランク・ミラーがMCU「シビルウォー」見てるかわかりませんし、それが元ネタじゃなくとも、おそらくは多分いくらでも過去作に例がありそうですが、レックス・ルーサーが超人達に対して、正面からではなくトリニティを衝突させて内部分裂を目論む、という辺りが面白い。

 

ただ、おそらくはですが、ミラー的にはスーパーマンという作品の上でレックス・ルーサーというキャラクターの存在は認めた上で、神であるべきスーパーマンが戦うべき相手はそこじゃなくもっと大きな存在でしょ?とばかりに黒幕として出てきたより大きな存在へ立ち向かい、飛翔して終わると。

 

続編はあっても無くても可、みたいな感じですかね。

 

ある意味では、ものすご~くフランク・ミラーだなぁと。スーパーマンのを新しい角度で捉えたフレッシュなストーリーというより、俺が考えるスーパーマンはこうなんだ、こうあるべきだ、みたいな所の方が強いので、誰もが認める名作と言うよりは、賛否の分かれる作品でしょうか。

 

でも、そもそもがミラーがアメコミの世界を変えた「バットマンダークナイトリターンズ」だって俺が考えるバットマンはこうだぜ!なお話ですしね。

 

個人的には1章だけ抜群に面白かったけど、2章3章と読むと、う~ん面白いけどちょっと乗れないかも?感はありました。

 

アートのジョン・ロミータJr.も人気アーティストですし、私も好きな方ではありますが、独特の四角というか丸というか多少ディフォルメの効いたアートは割と賛否の分かれる所です。


というかミラー&ロミータと言えばかの名作「デアデビル:マンウィズアウトフィアー」のコンビですよね。それこそ80年代にブイブイ言わせてたコンビが今の時代でもこうやって一線級で活躍してるのは何気に嬉しいし、それをこうやって日本語で読めるのはやっぱり非常にありがたいです。

 

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