僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

エターナルズ(MCUその30)

www.youtube.com

原題:ETERNALS
監督・脚本:クロエ・ジャオ
原作:MARVEL COMICS
アメリカ映画 2021年
☆☆☆☆☆


MCU映画26作目。前作「シャン・チー」と同じく、これまでのシリーズには登場していない新しいキャラクターを描く新規タイトル。

 

こういうのも一応ネタバレになっちゃうのかな?まあいいや、基本ネタバレで感想は書きますのでその点はご注意を。

「シャン・チー」だと、ウォンとか既存のキャラも脇で出てましたが、今回はそう言うのも無し。アベンジャーズとか指パッチンはセリフの上では出て来ますが、キャラクターの再登場とかは無いので、世界観は共通している上で全くの新しい作品として見る事が出来ます。

 

逆に言えばそういうMCUの続き物っていう感覚を期待してしまうと、物足りないと感じる人も中には居るかも?
でも一番最初の「ガーディアンズオブギャラクシー」とかもそうでしたよね。シリーズとして括られてるけど、特にアベンジャーズとは絡まずに、作られてました。地球ではアベンジャーズが戦ってるけど、遠く離れた宇宙ではこんな話が展開されてたんだな、ぐらいの世界観の拡張という感じでしたよね。今回のエターナルズもそんな感じで捉えれば良いかと。

 

つーか世界観の拡張つったって、もう一気に7000年前とか、あるいは世界の創造の秘密とか、トンデモ無い所まで広げて来ましたけど。

 

いやMCUってね、今でこそ他の映画もMCUの成功に習ってユニバース構想とか映画でやりたがってますけど、そういうユニバースの面白さって、元々の原作コミックが持ってた魅力の一つです。それを映画でも再現したら新しい試みにもなるし面白いのでは?っていう部分があったと思うんですよね。

 

原作ファンからしたら、そこはやっぱり欲しい部分だし大きな魅力の一つじゃん!っていう感じなんですけど、MCUで言えば最初「アイアンマン」と「インクレディブル・ハルク」が連続で作られて、まだそれは現実の世の中と地続きで見られたけど、「ソー」の神話とか異世界みたいな話もそこに合流させて大丈夫なの?って原作を知らずに映画から入った人は思ったんじゃないかなと。

 

そういう所から徐々に、「ガーディアンズ」で宇宙規模の話を入れたり、「ドクターストレンジ」で魔法とか魔界とかもある世界なんですよ、みたいなのを追加して拡張して来ました。更に「ロキ」のドラマで並行世界マルチバースを入れてきたりしてる中で、今度は今回の「エターナルズ」で宇宙の誕生レベルの話まで踏み込んで来ました。おいおいどこまで行くんだよこれ?っていう感じですが、そこもまた原作のマーベルコミックスの本来から持ってる面白さや世界観でもあったりします。

 

ぶっちゃけて言えば原作だとそこよりもさらに上の概念や世界観までユニバースとして描かれてますので、際限なんか気にしてもしょうがない。え?こんなに大きい枠でやっちゃったら、最初のアイアンマンなんて小さい世界の話だったって残念な感じにならないの?と思う人も居るでしょうし、実際そう感じてる人も中にはいらっしゃるとは思う。でもそれで良いんです。今1作目から見たって普通に作品として面白いじゃん!面白ければそれでいいんだよ、強さのインフレなんか気にするだけ無駄、という所でしょうか。

そんなコミックスの面白さをまたも映画と言う媒体で再現してきたのが今回の「エターナルズ」です。

 

で、そんな超マクロ視点の「エターナルズ」を監督するのが、「ノマドランド」でアカデミー賞を受賞した、新鋭クロエ・ジャオ監督。私は「ノマドランド」以外の作品は観ていませんが、こんなエンタメ最前線のビッグバジェット大作映画をまかせて大丈夫なのか?「ノマドランド」なんてほとんど自主制作のインディーズ映画で、主人公以外は一般人をそのままドキュメンタリー的に描いた作品だったし、どういう人選だこれ?とは誰もが思った事でしょう。

マーベルスタジオの監督起用の面白さは毎回話題になるとは言え、クロエ・ジャオ監督が契約したのはアカデミー賞を取る前の話です。過去作を見て、センスがあると見抜いての起用なんでしょうけど、それでもやっぱり凄い冒険だなぁと感心せずにはいられません。

 

で、実際に出来あがった作品を見てみると、いややはりと言ううか流石と言うか、凄い作品だったとしか言いようが無い。

 

徹底的にマクロなもの、設定や世界観、とてつもなく壮大な物語を描く中で、その対極にあるミクロなものこそを丁寧に描く事こそが大切なんだっていう感じで、そこはもう作品のテーマと直結してある辺りが本当に凄い。

 

こんなに大きな物語を、大予算で派手に、そして大味にバカスカやって、どうだ凄いだろう!っていうのが過去にいくつも繰り返されてきたハリウッド大作でした。

勿論、ある程度派手な部分はありますけど、そこよりも、静かに、そして繊細に描く部分こそがこの物語の本質的な部分であるのだと。

 

今回、2時間半の長尺で、その中でエターナルズ10人の個性をきちんと描き分けているっていう普通の映画捌きの手法も上手いんですけど、そこだけじゃなくて、神の視点、人間からは神と崇められてきたような存在の半神達だからこそ、より「人間とはどんな存在なのか」が浮き彫りになっていく所に私は痺れました。

 

ブレードランナー」じゃないけれど、人ならざるものだからこそ「人間とは何か」が描けるんですね。そこは凄くクロエ・ジャオテイストを感じました。凄い・・・。

 

今回、見ていて最初にあれ?って違和感を覚えたのが、意外とエターナルズ弱いなと。一応最強とされるイカリスも、劣化版スーパーマンみたいな印象で、(実際そこをいじられるセリフもありましたよね)なかなかディヴィアンツ相手に無双とかは出来ないレベル。いやこれひょっとしてソーとかキャプテンマーベルの方が強いんじゃね?とか思ってしまった。

 

最初は、MCUという世界に合わせて、バランスブレイカー的にならないようほどほどの強さとかにしてあるのかな?とも思いました。でもよくよく考えると、エターナルズって基本的には一人一芸みたいな感じですよね。

 

そして彼らはある目的の為にセレスティアルに「作られた存在」であったと。人種も性別も年齢も多種多様に、いかにもらしく分散して作られている。ああ、コンプライアンスね、はいポリコレポリコレ、今はこういう多様性を作品に取り入れないとうるさいんでしょ?って一蹴してしまうのは簡単です。

 

聴覚障害のマッカリとか、流石にちょっとやりすぎかなぁ?作られた存在ならなんでわざわざ耳が聞こえないとか作るんだろう?と思いましたが、本編中ではわからなかったものの、パンフ読んでてビックリ。彼女はその俊足で音速を超えるのが能力なので、聴覚が無い方が能力を伸ばせるという設定になってるようです。

 

そしてそう、「作られた存在」というのが結構ポイント。これは私の勝手な想像ですが、一つの個体に全ての能力を付加させる事も決して不可能では無い。でもそれはあえて作らない、唯一の絶対的な存在であるセレスティアルは、全ての能力を兼ね備えた個体を作ってしまったら、創造主を超えるまでには行かないまでも、意外とやっかいな存在になってしまうのでは?と考えたのかなと。


万が一の反逆とかを考え、任務遂行にはその任務に合わせた能力者を何人か当たらせたらそれで対応できるし、分散させて適材適所にしておけば十分だろうと。それ故に、エターナルズはより大きな事態に対しては、集結して問題を解決しようとする。

 

更に言えば、エターナルズでなくとも、一人一人の個性を生かし、それを合わせる事がきっと世の中の色々な問題は解決できる。例えそれが普通の人間であっても。いやむしろそんな多種多様な人間がこの世界に居る事こそが、人の豊かさなんじゃないか?という事を描いている作品なんじゃないのかな?と思う。

 

これって凄くないですか?ポリコレ的な奴でしょ?っていうのを逆手にとって、じゃあそれが必要なのは何故なのか?っていうのをちゃんと作品で描くし、壮大な設定でマクロ視点の物語ですよ、というのを利用して、じゃあそんな神の視点から見た時に、人間の本質って何だろう?とミクロな部分を描いて見せる。

 

人間は過ちも犯すし、嫉妬や妬みもある。失敗もするし決して完璧な存在では無い。それは悠久の時を生きるエターナルズも同じだった。そしてそんな悠久の時を経て、庇護するべき存在だった人間の世界や社会に学んだのでしょう、弱く、儚く、愚かな存在である人間だけれど、同時に彼ら彼女らは愛すべき存在であったと。

 

地球はセレスティアルズの為のただの食料・栄養ではない、システムに反逆する事になっても彼らを守りたい、世界を変える為に彼女らは立ちあがる。彼女らは言われるままに従うただの道具、駒なんかじゃない、一人一人が意志を持ち、立ちあがる事が出来る。そんな姿こそがヒーローなんじゃないか?

 

新しいスーパーヒーローの登場。けれど実は悪魔の(ような存在の)手先であり、ただスーパーパワーを持つだけの存在に過ぎなかった。けれど、そこから学び、自分で考え、自分の意志を持った時、本当のヒーローがここに誕生した!

 

いやいやいや、大分特殊な作品のようで、ベタすぎるくらいにヒーロー物のオリジンを丁寧にこなしてません?何度も言うけど凄くね?

 

原作から随分設定とか変えてますけど、ちゃんと原作へのリスペクトもあるし(欲を言えばセレスティアルズがエヴァみたいに細い体型だったのが残念。極太の分銅体型にしてほしかった)ちゃんと今の時代に合わせたアップデートはされていて、そこもまた良かった。

 

あと私は吹き替え版で見たんですけど、ドルイグが内山昂輝で凄くハマってました。人間をコントロールして、より良き存在へ導けるはずなのに、それを禁じられて、人間達が戦争したりで殺し合うのをただ見ているしかないという絶望感から世捨て人になり、歪んでいく儚さが凄くグッと来ました。一番のお気に入りキャラです。

 

あとは似たような部分ですが、英知を象徴するファストスが、広島でこんな事になるのなら技術革新などするべきじゃなかったって泣き崩れる姿。グッと来ます。なんと人間は愚かな存在なのか。

 

大人になれないスプライト(これは原作のゲイマン版ですよね)。
キンゴとそのマネージャーの明るさ。
バトルシーンが超絶カッコ良いセナと、それを支えるギルガメッシュ
そして実質的な主人公のセルシの美しさ。

 

いや~、キャラクターの生かし方が本当に上手い。
そして武器や衣装のあの金色の文様みたいな奴、あれも物凄く好みでした。

 

エンドクレジットのね、昔からよくあるネタの土偶とかは宇宙服なのでは?みたいなのって私メッチャ好きなネタなんですよ。壁画の文様とかも、これまでエターナルズが歴史に干渉してきた証である、みたいなのドツボです。

 

エターナルズ、マーベルスタジオ、クロエ・ジャオ監督、そしてキャストや各スタッフのそれぞれの仕事っぷりに心から感服いたしました。

 

マーベル映画の快進撃、信じられないくらいホントに止まんねぇなこれ。いやマジでどこまで続くんでしょう。

次は・・・「ホークアイ」の配信ドラマがあって、映画は「スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム」です。本国では年末ですが、日本はなんと年明けになってしまいました。


いやいやいやいや、年末とかお正月に見せてよ!

 

多分、スパイダーマン遅らせたのって「ヴェノム2」が12月になだれ込んだから同じ月に同じようなの2本もやっても・・・っていう判断ですよね。
申し訳ないけどヴェノムになんて1ミリも期待してません。前作もつまんなかったし。でも見るけど!
DCの方もそうなんですけど、「マーベルスタジオ制作」と何でこんなに差がついちゃったんでしょうね。ドラマの方はともかく、映画に関してはもう圧倒的な信用度しかないです。

いずれね、必ず「今回のはまあまあぐらいだったかな」っていう作品も来るとは思うんです。でもそれがいつなのかわかりません。前回の「シャン・チー」も今回の「エターナルズ」もそういう不安はあったけど、そんな心配は杞憂だと、それを圧倒的に上回る作品でした。

いや凄かった。

f:id:curez:20211107223356j:plain

 

関連記事

MCU前作

curez.hatenablog.com

原作

 

curez.hatenablog.com

クロエ・ジャオ監督

 

curez.hatenablog.com