MOBILE SUIT GUNDAM MS IGLOO APOCALYPSE 0079
監督・脚本:今西隆志
OVA 全3話 2006年
☆☆☆☆
「MSイグルー」後期3話。
もはや実験兵器の試験運用艦ではなく、戦況が追い詰められていく中こういった実験機までもが実戦に投入されて行く、という流れを描いているのが面白い部分。
若干違うけど、「ギレンの野望」やっててね、一応開発はするけど量産とかはせずに、ジャブローなりサイド3なりに1機だけ完成した試作機が溜まって行って、テキトーな部隊に混ぜて使い捨て感覚で戦場に送り込むみたいなのよくあるじゃないですか。なんかあれ思いだしてね、ちょっと申し訳ない気持ちになってしまう。
そんな感覚。
■第1話「ジャブロー上空に海原を見た」
ゼーゴック編
宇宙艦を船乗りとして描くっていうのは昔からよくある奴だけど、地球から追い出された事で活躍の場が無くなった水中用MSのスゴックのなれの果てとしてのゼーゴックと、それに乗る海兵という組み合わせの絶妙さに設定の上手さが光る。
私はジオニストじゃ無く連邦派でジムが好きなんですけど、ジオン系で何が好きと言われたら一番好きなのはやっぱりズゴック。見た目の可愛さもそうですが、デザインラインが頭部無しで、マジンガーとかの時代の機械獣みたいなものに近い、ミッシンングリンク感と、逆にリアル目線で考えると、ロボットに頭部ユニット別に無くても良いよな、というロジック感もまた良し。見た目でストレートにカッコいいとかじゃないけれど、そういう通好みの視点で見た時にメチャメチャ魅力のある存在って思えるとこが私にとってのズゴックの魅力です。
大気圏離脱中の無防備な所を狙うっていう作戦も面白い発想ですよね。
「Z」の時に逆の大気圏突入時にカミーユだけマーク2&フライングアーマーで動ける中、バリュート装備で大気圏突入する無防備な敵MSを撃破し、これは戦争じゃ無く虐殺だって、流石のカミーユも躊躇してそれ以上は踏み込めなかったのと逆パターンです。
宇宙に上がってきた所を叩くんじゃなく、上がってる最中の無防備な所を狙う。それは倫理はともかく、論理的にも効率的にも間違ってはいない作戦や発想。そこに対して連邦側もこれはまずいと護衛が増えてくるという、3回のミッションでの状況の変化とかもまた面白い。
■第2話「光芒の峠を越えろ」
モビルポッド、オッゴ編。
「0083」でザクより低コストのドラッツェとか居ましたが、それよりさらにもっと下。連邦のボールと対になるジオン版ボールとも言えるオッゴ。
ここに少年兵を重ねてくるという辺りに、メカと設定とドラマの上手い組み合わせが光る。しかも、モニク・キャディラック特務大尉の弟のエルヴィン・キャディラックがそれに乗るっていう。
世間ではこんなものっていう兵器でも、自分にとっては命をあずける最も大切な兵器だ、それを自分は信じていますっていう、いや当事者目線からしたらそうだよね!っていう。
まだ少年が故に、こんな悲惨な運命を背負わされる世界の仕組みみたいなものを十分に理解していない感じと、オリヴァー・マイが技術屋だからこそ響く部分とかもあって、このシリーズの作りの上手さを感じます。
まあ、ジオンの少年兵は無益な殺人は控えて、連邦のパイロットさえ救おうとするけど、連邦は味方さえ躊躇なく撃つクズ野郎という、いつもの描き方だけは、う~んとなってはしまいますが。
■第3話「雷鳴に魂は還る」
モビルアーマー、ビグ・ラング編。
そしてシリーズ前期後期通しての最終話。
前期1話のルウム戦役から、1年戦争最後のア・バオア・クーで最終回というこの流れが凄く良い。他の外伝はどうしてもMSありきだから結局終盤戦のみしか描けないし、1年の初めのルウムから、順を追って描いていく事で、ジオンの追い詰められて行くバックグラウンドもドラマになってて、そこは凄く良い。
そしてちゃんとヒロイックというか、今まで傍観というか狂言回し役だったオリヴァー・マイ自らがビグ・ラングを操縦する事になるというのが面白い。
兵器としても、ガンダムシリーズ定番の、終盤の大型モビルアーマー感がありつつ、そこはイグルーらしく奇妙なコンセプトの特殊兵器というのがまた。オッゴ専用の母艦みたいなもんですよね?これ。しかもビグロは後付けで無理矢理載せただけっぽいし(マイも言ってたけどビグロの特性を生かせないし)この下半身って本当は別のMA用に作ってた奴ですよね?
ビーム撹乱幕とか使ってたし、ビグザムとドッキングしたりとかそういう設定無いのかな?と思って少し調べると、「0083リベリオン」に本来のラングってのが出てるらしい、居たっけそんなん?マイとモニクが出てたの憶えてるし、ヒルドルブに脚がついてMSになってたのはなんとなく憶えてるのですが。連載をサラッと見てただけで、単行本できちっと読むのはまだしていないのでその時を楽しみにしておきます。
カスペンとかはどうでも良いけど、艦長も良い人でしたし、ジオン視点はジオン視点でやっぱり別の面白さはありました。
何度も言うけど私はジオン嫌いですが、そういう感情はさておき、「MSイグルー」は他の作品には無い独特の視点があって、やっぱりそこは素直に面白かったです。
次は当然「重力戦線」
関連記事