著:ゆでたまご
刊:集英社 集英社文庫全8巻
連載:1982-1988
☆☆☆
「キン肉マン」のスピンオフ作品。
当時はまだめずらしかったスピンオフですが、最初は普通に単発の読み切りで書いたものが好評を受け、ゆでたまごの担当編集者だった、あの「アデランスの中野さん」が月刊誌のフレッシュジャンプの編集長を任されることになり、そこでの看板を任される事に。
週刊誌と月刊誌のW連載に戸惑ったものの、手塚以下の昔の漫画家は連載を何本もやるのが当たり前になっていたのもあり、自分達を育ててくれた恩師の頼みを断れないと、連載をスタートさせた。
時代設定が全然違うので、あくまでパラレル的なもので、キン肉マン本編に登場するラーメンマンと同一人物ではないという扱い。
ただそれでも読者が混乱すると悪いからと、キン肉マン本編からはラーメンマンが姿を消して、その変わりにそちらではモンゴルマンとして登場させる事にしたという話。
後に語った事ですが、「戦え!ラーメンマン」は要するに「UWF」なんですよという言い方にプロレスファンは頷くはず。
一応プロレスファンじゃない人向けに説明しておくと、UWFとは新日本から派生した新しいスタイルのプロレス団体で、ロープに飛んだり、相手の技をわざとくらったりという、プロレス特有のショー的で曖昧な要素を排除し、打撃・投げ・極技だけの純粋な格闘技・競技に寄せたスタイルのプロレスの事。
地味な試合にもなりがちだが、従来のプロレスは八百長ありのインチキだが、こっちは本物の真剣勝負なんだ!と言いたいマニアには熱狂的な支持を受けた団体であり試合スタイルの事を言う。後の総合格闘技の源流みたいな所もある。
ゆで先生が行ってるのは「キン肉マン」というプロレス漫画から派生して、拳法漫画という格闘技路線にシフトしたスピンオフという所でしょう。
連載が終わるとそこで得たものを吸収して再度古巣に戻る事になるのもUWFと同じです。(UWFも短期的に盛り上がったものの、長くは続かなかった)
とは言え、「闘将!!」もガチの格闘技漫画とかではなく、あくまブルース・リーからの流れを含むカンフー映画をベースにした物。前半は1~2話完結の短編が基本、中盤からは「拳聖五歌仙」編以降、キン肉マンと同じような団体戦トーナメント戦といった長編シリーズに変化。
当時はキン肉マンの別シリーズ的に読んでたので、拳聖五歌仙編が一番記憶に残ってて思い出深いのですが、今読むと序盤の短編時期の方が「たたかえ」らしくって面白味がありました。
ただこれ、キン肉マンの感想の時に取り上げてた「タマちゃんねる」の動画とか、
少し前にデジタル版がセール販売されてXのトレンドに上がってた時にも話題になってたのですが、いわゆる「ゆで理論」がキン肉マンの比にならないくらい多い、超絶トンチキ漫画だったりします。
いや、私は割と当時はキン肉マン共々普通に読んでたし、そのトンチキ具合を楽しんでたとかではないのですが、確かにこれちょっとおかしくないか?みたいな変に感じる部分はキン肉マン以上だったかなという感覚はなんとなくあります。
以前、何かの時にも書きましたが、このトンチキ要素は当時もおかしいなと思いつつ、でもこの漫画を書いてるのは大人なんだから、間違いなんかあるはずがないきっと自分が子供だからまだわからない部分もあるんだろうという感覚の方が強かったんですよね。子供なのに忖度していたというか。これは「子供騙し」なんかじゃないはずだと。
でもね、実はそこって何気に大切な要素で80年代って大学生くらいでも漫画を読むみたいなハイカルチャーに漫画業界が少し傾きかけていた時期で、ジャンプですらそう言う方向に舵を切る動きもあった。その中でキン肉マンの連載をスタートさせて、何だこの幼稚な漫画はっていう同業者や編集者も多く居た中で、今のジャンプに必要なのはこじゃれた大人向けの漫画なんかじゃ無くて、小学生でも理解できるセンスの漫画が必要なんだとゆで先生をバックアップした。だからこそ、そこからの何百万部というジャンプ黄金期に繋がった。
実際に小学生だった私は「北斗の拳」とか「シティーハンター」とかの劇画路線の絵柄は正直苦手でした(小学生ですしそれでもジャンプの連載は全部読んではいたはずですが)バカな小学生にも理解出来る漫画を編集側もキン肉マンに求めたんですよね。
そんな週刊連載の方のキン肉マンと、月刊誌の方のラーメンマンでは、おそらくこっちは編集側もほとんどノータッチで自由にやらせていたんじゃないだろうかと思う。で、後半は辛くなってきて、定番の団体戦やトーナメントバトルとかに逃げた。そこは編集の判断では無く、ゆで先生の苦肉の策というか手癖みたいなものだったんだろうなと。
「拳聖五歌仙」という響きが超カッコ良くて、恐らくはカンフー映画か何かに元ネタはあるんでしょうけど、当時から凄く好きでした。
でもね、まず毒狼拳蛾蛇虫(ドクロけんガンダム)。
毒手って味方側にしては使いにくくない?しかも片腕だったりそうでなかったりした上に、唐突に「紅千里鷹!」とか出してくる。カッコいい!でもそんな技過去に一度でも使った事あったっけ?
流星拳砲岩(りゅうせいけんホーガン)
散弾流星脚、いや普通に瓶一度しか使えなく無い?しかも大概は初手で使って破られるのがオチだし。
傷刻牢犬操(しょうこくろうけんそう)
いや何その武器。バトル漫画としては使いにくくないかそれ。ネビュラチェーンみたいに自在に形を変えるとかのセンスは無いのか!?
ムエタイ・チューチャイ
唯一の使いやすそうなキャラ。でも中国拳法じゃないぞ!?
とまあ、チームを組む味方としては、今後の展開を見据えたバランスとかそんなんも何も無い行き当たりばったりのバランスの悪さ。この辺がねぇ、ゆで先生だなと思う。
キン肉マンの方はプロレスの興行、大会やシリーズを意識したマッチメイクを考えていたっていう話でしたが(ガチのプオタはこの観点から見た時のキン肉マンが何気に面白いです)こっちはUWF的なマッチメイク?(5対5は新日とUWFの対抗戦からの着想でしょうが)
キン肉マンは正義超人軍団がそれぞれに見せ場があるのが最高の盛り上がりポイントだと思うし、成功した理由の一つだと思うけど、こっちは基本的にはラーメンマン1強。そういう意味ではライバルのケビン以外、脇にほとんど見せ場が無く万太郎ばかり描き続けてきた「キン肉マン2世」に近い感じかもしれない。
キン肉マンに近いようで、こうして大人の目線で読むとまた全く別のベクトルのある意味での怪作「闘将!!拉麺男」。この天然っぷりは唯一無二とは言えるんじゃないでしょうか。
アニメのOPもカッコ良くて好きでねぇ
www.youtube.comでも原作のトンチキ具合を意識したわけじゃなく、たまたまなんだろうけど、塔を目指して雑魚を蹴散らして、そこを上がっていくのかと思ったら、塔は関係無い別の場所でした、みたいな流れになってるのがなんとも言えない。
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