KINNIKUMAN
著:ゆでたまご
刊:集英社 集英社文庫 全18巻 1999年(連載1979-87)
☆☆☆☆★
文庫本キン肉マン続き。
ビビンバ登場編から2回目の超人オリンピック、続く7人の悪魔超人編の最終盤くらいまで。
いや一気に面白くなってきました。ブロッケンJr、ウォーズマン登場。そして何より決勝での初キン肉バスターですよ。単行本で言う所の9巻目でようやく代名詞的な必殺技が出る。
「リンかけ」も序盤は割とリアル寄りのボクシングマンガでしたが、所謂必殺技が出るまで結構な巻数を要した気がしますが、今の漫画では考えられないペースですよね。「キャプテン翼」のドライブシュートはどんな感じだったっけ?
じゃあ話の進み具合が遅いかと言えば、逆に話のペースは今と比べ物にならないくらいに早い。当時の人気連載はほぼどれも同じだったと思いますけど、とにかく溜めずに毎週に全力投球みたいな形で漫画を書いてたので、次の展開は次の週に考えれば良い的な感じだったはず。
勿論、そういう描き方の良し悪しは当然あるんですが、あの時代のジャンプ漫画ならではだなぁという感じがします。逆にそう言うペースが苦手なら、当時からサンデーの連載とかは割とマイペースな印象もあったし(実際はわからんけど)雑誌によってカラーの違いが明確なのは悪い事では無いはず。
今読み返すと、ウォーズマン戦にしてもキン肉マンとラーメンマンの友情的な部分が思った以上にあるし、そんなウォーズマンにしても、次のシリーズのボスのバッファローマンにせよ、最後は正々堂々と戦って「友情パワー」に目覚める、的なのはすごくキン肉マンっぽいと感じる。
と、同時に次の悪魔超人編が顕著ですが、他のジャンプバトル漫画と何が違うかと言えば、プロレス的思考が根っこにあるので、主役だろうが人気キャラだろうが、あっさり負ける時は負けるんですよね。ここ、凄くプロレスを知ってる人にしか出来ない発想だと思う。
ドラマを盛り上げるために一度落とすとかじゃないんですよ。あっさり負けるの。人気キャラなのに簡単に黒星つけられるの、ゆで先生らしさだなぁと私は思う。
何でかっていうとね、プロレスに詳しくない人の為に説明すると、プロレスって相手と戦ってる競技じゃ無く、お客さんと戦う競技だから普通のスポーツや格闘技、純粋な競技とはやっぱりちょっと違うんですよね。「負け」が終わりじゃないの。負けても続くの。負けに価値があったりするの。この辺は純粋なスポーツとか競技の感覚の人には多分理解しにくい。
単純に相手との勝ち負けだけならさ、つまんない試合になろうが、競技としての勝ち負けこそが重要であって、勝者にこそ絶対的な価値があり、敗者は失うものしかない。プロレスってそこが違うんですよね。つまんない勝ち方すると、ブーイング受けたりする。観客の支持が得られなければ、いくら勝ってもエースにはなれない。むしろ負けた方の方が人気を勝ち得たりする。
ロビンがアトランティスに負けたりとかさぁ、普通の漫画じゃありえなくない?だって主人公を食う人気のあるイケメンの仲間キャラとかがさ、ぱっと出の悪役に負けたりなんかしないでしょう?負けるとしてもせいぜい主人公とか最強の敵キャラとかそういう、負けても格落ちしないキャラとかのはず。
そういう、プロレス的な独特の価値観があるのが先の読めない面白さにも繋がってるはず。「男塾」「聖矢」「北斗」とかそういうのも私は好きですが、そこにプロレスセンスは感じ無いし、キン肉マン固有の物があって、そこは他には無い面白味だなぁと感じる。(他の漫画は他の漫画で別ベクトルのオリジナリティや面白味はちゃんとあるので下げてるとかじゃやないです)
そういう読め無さと同時に、俗に言われる「ゆで理論」みたいなトンデモやおおざっぱなツッコミ所満載の部分もやっぱり沢山ある。
よく例に挙げられる、ウォーズマンの1200万パワーですが、読んでる分には勢いで読めるから実はそんなに気になるものでもないと思うのですが、むしろロビンが、遠征編でも結構良い人だったのにバラクーダになったとたんになんか一気にゲスな感じになったと思ったら、次の悪魔超人編ではしれっと正義超人の代表みたいな顔してたりする。え?感情の流れとか変じゃね?と、そういう所の方が気になってしまった。
ただねぇ、やっぱりワクワクさせてくれるものはあるんですよ。
「なあみんな、俺たちまた生きてあえるかな?」
「まあ悪魔超人が相手だから五体満足じゃすまねえな」
「フフ、なーに、地獄であえるさ」
(こ、こいつらこの戦いで死ぬつもりだ!)
とか、これ何かの映画からパクってきたのか?と思ってしまうくらい、ゆで先生らしからぬ圧倒的なカッコ良さですし、アンケートで初めて1位がとれたという
「ただいまキン肉マン」「おかえりテリーマン!」
のシーンは痺れるくらいにカッコいい。
この辺の時期、カラー画稿みたいなのがやたら多いですし、本当に波に乗ってた時期なんだなぁと感じられて、凄く良いです。
ミート君がバラバラにされる展開もそうですが、前にも後にもテリーマンの足とか腕がとれたりとか、まるで人形みたいな感覚が、あれって何なのだろう?と不思議に思う部分もありますが、展開もスピーディで、勢いで読めるのがメチャメチャ面白い。
私はリアルタイムだと、タッグトーナメント辺りが一番ハマってたような気がするのですが(確か当時は単行本も全巻揃えるとかは出来ずに、タッグ編だけ買って何回も読み返してた気が)「7人の悪魔超人編」ここもピークと言えるくらいに面白いですねぇ。
そんな感じで次に続く。
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