MOBILE SUIT GUNDAM THE ORIGIN III
Dawn of Rebellion
総監督・絵コンテ・キャラクターデザイン:安彦良和
監督:今西隆志
脚本:隅沢克之
原作:矢立肇・富野由悠季『機動戦士ガンダム』より
漫画原作:安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』より
OVA 2016年 全6話
☆☆☆★
冒頭、いきなり消されてしまう事になる本物のシャア・アズナブル。
出て来た時から予想は出来た物の、可哀相な人でした。後付けだから仕方ないんだろうけど、後年もその存在がクローズアップされる事は無かったんだろうなと思う。
有名なジオンのエースパイロットだったシャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンだった事は世間にも広く知られる事にはなるが、単純に偽名を使っていたというだけで処理されて、アズナブルさんとかは歴史マニアが詳細は不明だが実在のIDを使っていたようだとか知る人ぞ知る知識だったリ、或いは陰謀論者だけが語るシャアの過去とかになってるんだろうか、とか考えるとちょっと楽しい。
ただフィクションの設定を情報として受け取るのではなく、もしこれが現実だったらどういう事になるんだろうか?って考え方を持てるようになると、視野や世界が広がります。
で、そんな感じでガンダムの世界のこれまで描かれていなかった部分をリアリズム重視で、過去の歴史を参考に考えられたのが今回のシャアとガルマの士官学校時代と、連邦の弾圧を武装蜂起で解決に導くシャアという、なんかとんでもない事が今回は描かれる。
「君は、歴史の歯車を自分で回してみたいとは思わないのか」
って、安彦さんニヤニヤしながらこういう事でしょ!と思いながら書いたんだろうなと想像出来て微笑ましい。凄いシャアが言いそうなセリフだし、富野節っぽい。
いわゆる「事件」としては歴史年表にも富野小説にも、ましてや外伝ストーリーとかでも何も無い空白の部分だったはずで、ガルマとシャアの士官学校時代の接点をここまで掘り下げて考えたのかっていうのは、新しさがあって素直に見てて面白い部分ではありました。
BDについてる解説書を読むと、小規模な戦闘・戦争が後に大きな波紋に広がっていくというのはキューバ危機でのフィデル・カストロやチェ・ゲバラを意識しての発想だったそうで、私はその辺の奴は映画を何本か観たくらいでそんなに詳しくないけど、変な話ゲバラとかTシャツのデザインとかそっちでむしろ知ったくらいでしたが、革命のアイコンとして考えてみればジオン・ズム・ダイクンとかにもそのイメージが多少は組み込まれてるのかとも思うし、そういうのがこうして更に別の形でガンダムの歴史の方のイメージソースにもなっていくって面白いです。
そして原作漫画の方には居なかった、かつての本当のシャアを知っていた、リノ・フェルナンデス。いやこれは正体に気付いてまた消されるパターンか?というのは想像できても、自分はダイクン派だ!誰にも言うつもりもないし、むしろ協力者にならせてくれ(殺されたくないからの演技ではなく本心だよねあれ)っていうリノを消すシャアというのがまたね。
いやぁ、やっさんひねくれてて面白いなと。
本物のシャアも、リノも自分で手を下すんじゃなくて、他人の手を使って始末するんですよこの男は!こんな最低なやつをカッコいいとかいうファンの気持ちがわからん」とか言ってしまう安彦さんも大概アナーキーだと思います。
メカ関係ではYMS-03ヴァッフが登場。といってもCGシミュレーター上だけですし、むしろこの辺はトレノフ・Y・ミノフスキー博士がこうしてアニメで初めて人物として登場した所に注目でしょうか。
かつてのサイバーコミックスという雑誌で「ミノフスキー博士物語」とかあったんですけど、確かあれ単行本化されてない。サイバー自体が単行本フォーマットでの刊行でしたしね。「エースパイロット列伝」と同じ作者だったりするので、いつかセットで復刻してほしい。いやサイバーも私はコンプリートしてるのですが、押し入れの中に押し込んだままなので。
という辺りで次は開戦編後半・第4章「運命の前夜」に続く
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