MOBILE SUIT GUNDAM THE ORIGIN II
Artesia’s Sorrow
総監督・絵コンテ・キャラクターデザイン:安彦良和
監督:今西隆志
脚本:隅沢克之
原作:矢立肇・富野由悠季『機動戦士ガンダム』より
漫画原作:安彦良和『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』より
OVA 2015年 全6話
☆☆☆
「ジ・オリジン」シャア・セイラ編後半。
地球へと脱出したキャスバルとアルテイシア。(とルシファーとジンバ・ラル)
マス家に入りエドワウとセイラという名で新たな人生を歩むかと思われたものの、ジンバは討たれ、戦火に巻き込まれた再び二人は宇宙へ戻る。
テキサスコロニーで出会ったキャスバルと瓜二つの少年、その名はシャア・アズナブル。
とまあ怒涛の展開。オリジン以前は単純な偽名かと思われていたシャア・アズナブルの名も、本物居たんかーい!と誰もが驚く展開でした。
お母さんのアストライアとか、マス家時代のシャアの二つ目の名前のエドワウは富野小説が初出のはずですが、本当のシャア・アズナブルという人物がいて、その人間になり済ましていたというのは安彦オリジンのオリジナルだったはず。
確かにただの偽名よりはその方が合理的とも言える。それを他のガンダム作品でシャア系譜の仮面キャラを既に演じた事のある関さんがやるっていうとこにも、当時はえ?凄い事ぶっこんできたな、と思ったものです。全くやっかいな存在だよ君は。
そしてまた別の部分で意外だなと感じたのは、ジンバ・ラルを炊きつけるのがアナハイム・エレクトロニクスだったというのは、え?安彦さんひよったのか?と正直思いました。だってファーストにアナハイムなんて設定無いよね?
「Z」もキャラデザ安彦さんですが、やっさんはファースト以外のガンダムなんて全部クソ以下としか思って無いはず。いわゆる死の商人とか、あるいは資産面で何かしらのバックアップとか無いと戦争なんて始まらないはず?みたいな感覚があって、そこが無いのはリアリティに欠けるし、じゃあ皆が言うからアナハイムとか嫌だけど丁度都合はつくので設定使うしか無いのか?みたいな妥協だったんでしょうか。
あとは勿論、モビルスーツの開発とかそんな物にも興味が無いし、むしろ嫌悪感を持ってる人のはず。
だって昔、ガンダムは今は公式年表あるんですよって安彦さんに見せたら、何でモビルスーツのロールアウトがどうのとか年表に載ってるの?実際の世の中の歴史年表にそんなもの載ってるか?お前らバカじゃないの?これのどこが歴史なんだよ。だからガンダムオタクは嫌いなんだよ的な事って言ってましたし。
ただ、元々はアニメ業界に居たんだし商業的にプラモとかメカも売らなきゃいけないコンテンツなのは流石にわかってはいるはずなので、今回で言えばMSの原型のモビルワーカー(MW-01)とか出してるのは、自分でちゃんとした歴史を描かせてもらう為に妥協したポイントだとは思う。
そういう意味では、逆に政治は得意分野だろうから、ドズルがラル家に恩情をかけてやる辺りは安彦さんらしい発想と言うか描きかただと思う。
ギレンとキシリアが暗躍してる中、政治的には疎いと思われているドズルが、いやラル家も色々巻き込まれて苦労してるんだし、派閥とは言えジオンであって連邦とかじゃないんだから、別に排除まではする必要無いだろうと。実際穏健派というかこういう人に付く人も居るだろうし、ここの描き方や発想は面白い。
それでいて主人公のシャア(キャスバル/エドワウ)には感情移入させない辺りがそれはそれでやっぱり安彦さんらしいなと。壊れていく過程というか、復讐を募らせていく姿に、こうしてシャア・アズナブルと言う存在が作られて行くんだなというのは痛いほどわかる。でも、感情移入はさせないセンス。そこはやっぱり俯瞰した歴史の視点でしかない。
あ、因みに前回の少年期と違って今回から池田さんが普通に声当ててますし、若い声を頑張って作ってらっしゃいますが、私は声優変更した方が良かったと思う。劣化してるとかそういうネガティブな意見では無いんだけど、どうせ新しい物を作るんだったら、今後も考えて後任とかここで決めちゃってても良かったのかなと。
最近、シーブックとかジュドーの代役のケースがありましたけど、物真似みたいになってほしくはないけど、声質が似てて元の人のニュアンスを残せる人ならアリかなと思いますし。それこそブライトの成田剣とかマ・クベの山崎たくみとかは誰も文句つけてないですし。古谷さん、問題起こしてあちこち降板してますが、アムロも誰か引き継いでも良いと私は思う。勿論、若井おさむとかモノマネはNGで。
悲しみを抱えるアルテイシアを残してキャスバルは発つ。
どう考えてもヤバい未来しか見えてこないシャア・アズナブルさんの明日はどっちだ。
という事で3章開戦編・前編「暁の蜂起」に続く。
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