INVINCIBLE IRON MAN:THE SEARCH FOR TONY STARK
著:ブライアン・マイケル・ベンディス(作)
ステファノ・カッセリ、アレックス・マリーブ 他(画)
訳:吉川悠
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2023年
収録:INVINCIBLE IRONMAN #593-600(2017-18)
☆☆★
トニー・スタークが姿を消し、
ドクター・ドゥームが
動き出す!
アイアンマンの後継者争いが勃発!
昏睡状態だったはずのトニー・スタークが、突如として行方不明になった。アイアンハートことリリ・ウィリアムズと仲間たちは、総力を挙げてトニーの捜索を開始する。混乱を極める状況のなか、アイアンマンの後継者として名乗りを挙げたのは……マーベル・ユニバースの超大物ヴィラン、ドクター・ドゥームだった!?アイアンマンを巡る壮大な物語は、クライマックスに向けて加速する!
ベンディス期のアイアンマン最終章。この後すぐにDCに移籍したそうで、ある種の置き土産みたいなものでしょうか。
この辺は作家としての考え方なのかな?自分の蒔いてきた伏線をきっちり丁寧に回収して行って、第1部完的なキリ良く終わっていくタイプと、最後に爆弾投げっぱなしにしていって、引きは作ったからあとはよろしく!みたいな感じがあるけど、今回は後者でした。
コミックじゃなく映画の方ですが「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でつじつま合わせとか考えなくて良いから、エンドクレジットで強烈な引きをよろしく!って言われたとかありましたが(結局本人が3作目も作ったので自分でしりぬぐいはしてますが)そういうのもある意味マーベルの社風としてあるのかなぁと。先日読んでたヒックマン期のX-MENも、話たたまなくて良いからこの路線で次のクリエイターにまかせるっていう形でしたし。
とは言え、トニーやローディの死から今回の復活までという意味では一応はストーリーラインの区切りとしてやってる部分は当然ある。
話的には前巻の「インビンシブル・アイアンマン:アイアンハート2/リリの選択」からの続きなのだけど、時系列的には前巻と今回の間に「シークレット・エンパイア」イベントが入ることで、シールドが崩壊。後続の組織が再編されつつある中で、リリ/アイアンハートはそちらの組織にスカウトされる。
アーマー系ヒーローチームのアーマースクワッドはわかる。同じくスカウトされてきたマイルス君と再会するのもわかる。
でも何故ここでブレイド?とか思いつつ、それ以上にそもそもレオナルド・ダ・ヴィンチって誰だよ?あのダヴィンチなのか?とビックリする。
そして本物のトニー・スターク。ハッキリ明かされないものの、肉体そのもののリブート的な禁断のテクノロジーを使ったらしい。
クラコアX-MENとか先に読んでしまうと、今更?感がしなくもないけど、人としての倫理感もグレーだからこそ、仲間の誰一人にも頼らず、全ては自分一人の自己責任。誰にも明かせない秘密を抱える。
自身の心の中の葛藤の中、養父ハワード・スタークとの対峙、そしてトニーが唯一心の奥底で助けを求める存在であり、倫理を超えてでも贖罪したい相手がローディってのが面白い部分。
これね、シークレットエンイアの時のキャップなら、サム、バッキー、シャロンの3人が心を許せる存在だったけど、トニーにとってはローディ一人なんだなと。
天才の思考を唯一理解してくれる存在としてのリードとかも結構特別な印象もありますけどね。(シビルウォーでも一緒でしたし)まあそこはFFという別枠になっちゃうか。
そんなFF枠から、インファマス・アイアンマンことドクター・ドゥーム。ここに関しては個人誌を読まないと、こっちのほうだけでは結局本心はわからず。フッドと延々とやりあってました。解説読むと個人誌の方ではついに母親を解放できたっぽい?
他だと、トニーの実母、アマンダ・アームストロングもかつて自分で殺めたヒドラの旦那が実は・・・と今後へ風呂敷を広げたまま終了。
そしてAIトニー。この時点では本人が復活したから消滅とかではなく、自我を持ち始めている自分を自覚したまま終わる。
某、草薙素子さんみたく、「ネットの世界は広大だわ」と、肉体からの解放を肯定的に捉えるのではなく、エゴの収束体とも言える自分はSF映画の将来人間に反乱を起こすAIになる可能性は十分にありえる、と不安な気持ちを露わにする。
うん、この後の展開知らないけど、仮に本物が戻ったからお役御免になったとしても、5年後とか10年後とかに他のライターが悪のアイアンマンとして絶対使うよねこれ?まるで映画のウルトロンみたく!って思う。
そして未来。至高の魔術師ソーサラー・スプリームとなったトニー・スタークの姿を見せて終了。これは今回のみのビックリドッキリではなく、昔からベンディスは進化した技術は魔法との堺が無くなるという主張をしてきており、その象徴という事らしい。
ハイテク技術と高度な魔術の融合という部分ではそれこそドクタードゥームの専売特許みたいな所がありますし、そりゃあ後継者争いとしてドゥームは話に絡めたいでしょうね。
といった所で「インビンシブル・アイアンマン」全4巻終了。
全体としてはリリの所がそこそこ面白かったくらいで、私的にはそんなには・・・という感じでした。
続きの話、というわけではないですが、トニーの兄、ハワード・スタークの実の息子のアルノ・スタークの反乱を描く「アイアンマン2020:ロボット・レボリューション」というのも出てるので、次はそこを読もうかと思います。
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