THE BEST OF VENOM
著:デビッド・ミシェリーニ他(作)
トッド・マクファーレン他(画)
訳:石川裕人
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2024年
収録:Amazing Spider-man #300(1988) #375(1993)
Marvel Comics Presents #117-122(1992-93)
Spider-man Holiday Special 1995 #1(1995)
☆☆☆★
ヒーローとヴィランの壁をぶち破ったもう一人のスパイダーマン!
ヒーローの歴史を変えたモンスター。その成長の過程を、デビュー作を含む4つのエピソードで紹介!
今やダークヒーローの代名詞として世界に名を轟かすヴェノム。この恐ろし気な風貌のモンスターはいかにしてマーベルを代表する人気キャラクターに成長を遂げたのか、節目となるエピソードを中心に紹介する。
1984年に登場したスパイダーマンのブラックコスチュームは、時を経てヴェノムへと進化した!ヴェノムが本格的な初登場を果たした『アメイジング・スパイダーマン』#300、ダークヒーローの大先輩であるウルヴァリンと初共演した『マーベル・コミックス・プレゼンツ』#117-122、スパイダーマンとの長き因縁にピリオドを打った『アメイジング・スパイダーマン』#375、当時のヴェノム人気を象徴する『スパイダーマン・ホリディ・スペシャル 1995』#1と、個性豊かな4編を収録!
日本独自編集のベストオブシリーズ、ヴェノム編。
■アメイジング・スパイダーマン #300
「毒」
ライター:デビッド・ミシェリーニ アート:トッド・マクファーレン
ヴェノム初登場号。
かつての「マーヴルクロス」の10号にも収録されてた奴ですね。
アーティストは言わずと知れた「スポーン」のトッド・マクファーレン。この辺りの時期のスパイダーマンで人気を爆発させ、その後独立して、自分のタイトルである「スポーン」を育てあげる事に。
ぶっちゃけ私は当時からあんまり好きじゃなかったけど、(当時の双璧をなしたジム・リーに比べるとスタイリッシュさでは劣る印象でした)今もスポーンの映画を再始動させる為に頑張ってる様子。
スポーンだけでなく、マクファーレントイズを立ち上げ、アクションフィギュアのハイクオリティ化を定着させた人でもあるので、何気に界隈への影響力は大きい。
エディ・ブロックに寄生したヴェノムとしてはここからとは言え、スパイダーマンのデザインリニューアルに伴うブラックコスチューム、そしてそこからの実はそのコスチュームは寄生生命体でしたっていう流れはこれ以前にあるので、シンビオートとしてはもっと前からは出てる。
細身のピーターと違ってマッチョ体型のエディ。スパイダーマンと対になるライバルポジションとして、スパイダーマンのシャドウ的なある意味ベタなポジションというのもあってか、今なら人気が出たのもわかりやすい気がします。
■マーベル・コミックス・プレゼンツ #117-122
「試してみるかね、私の夢を」
ライター:ハワード・マッキー アーティスト:サム・キース
ウルヴァリンとの初対面。
この辺りの時期からもうマーベルの人気キャラの2大筆頭がスパイダーマンとウルヴァリンというのは動かなくなった時期ですので(今も続いてるのが凄い)そりゃあウルヴァリンとも絡むのは必然。
というか今回の話、普通にウルヴァリンが主役です。あくまでウルヴァリンの話があって、そこにヴェノムがゲストで出ましたくらい。
ナイトメアに狙われたウルヴァリンは、それと対峙する為プロフェッサーの助力を得て特別な次元へ。そこに現れたのはヴェノムだった、的な話。
解説ではこの時代に流行したグリム&グリッティ路線の一つ、的に紹介されてますが、まあその時代だからこそのアンチヒーロー、ダークヒーロー路線にウルヴァリンとヴェノムは入るでしょって言われると確かにそうですが、話は割と普通。
むしろアートが今回面白いです。90年代のジェイ・リーとかクリス・バチャロの個性的なアートってやっぱり凄く新鮮味があってね、その二人も後々には割と個性を減らして普通のアートに近くなっちゃうんですけど、当時の邦訳でちょこちょこ見れたエッジの効いた絵は凄く私も大好きでした。今回のああいうのに近いアーティスティックな絵柄で何か懐かしさを覚えます。
■アメイジング・スパイダーマン #375
「ヴェノムの花嫁」
ライター:デビッド・ミシェリーニ ペンシラー:マーク・バグリー
ピーターの両親が実は生きていた!という辺りのエピソード。そこに絡めて、ベノムの方の元奥さまもここで初登場。このアンさんって、解説書では触れられて無いけど、あの映画にも出てた元カノですよね?
アニメ関係ではちょくちょく見かけるものの、邦訳ではあまり出てこない印象のシルバーセーブルとか、ドラマの「ファルコン&ウインタソルジャー」で私は初めて知った、ジョン・ウォーカー版キャップの相棒のバトルスター(レマー・ホスキンス)とか珍しめのキャラも登場。
この頃になるとただのヴィランではなく、根っこは悪い奴じゃないけど勝手な思い込みでお騒がせするキャラ、みたいになってるのが面白い。
■スパイダーマン・ホリディ・スペシャル 1995 #1
「ヴェノムクロース」
ライター:エリック・フィン アーティスト:ヘビエル・サルタレス
マーベルユニバース内には普通に存在するサンタクロースさん。
町のチンピラに絡まれいじめられている所をヴェノムさんが救出。サンタの代役をヴェノムがしてくれるという、もうすっかりヴィランが抜け切ってる時期です。これでいいのか。
と、まあ来月頭公開の映画に絡めて出た一冊ですし、映画の方も「寄生獣」か「ド根性ガエル」かみたいになっちゃってますので、昔からヴェノムはあんまり好きではなかった身としては、これどういう感覚で見たら良いのか、未だに距離を測りかねてたりします。まあ昔よりはキャラに親近感持てるようになってきたのは確かですが、でも面白いのかなこれっていうのは1作目も2作目も変わらず。
とりあえず今回はウルヴァリン好きな私にとってはまさかのエピソードチョイスで中編のウルヴァリン&ヴェノム(マーベルコミックスプレゼンツ)が読めただけでも良しとしておきます。
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