BLACK JACK
監督:城定秀夫
脚本:森下佳子
原作:手塚治虫
TVドラマ テレビ朝日 ドラマプレミアム枠 2024年
☆☆☆☆
先月の末、6月30日にTV放送された単発のTVドラマ。
岸辺露伴に続いて高橋一生が今度はブラックジャック先生に!という最初の反応は好意的だったのですが、その後ドクターキリコのビジュアルが解禁されると、キリコが女体化!?と大ブーイング。
原作改変が色々とデリケートな昨今ですし、私もそこはどうかなとちょっと思いつつ、基本的には私は原作をそのまま映像化するのが原作リスペクトだとは思わない派。媒体や作る方のテーマによってアレンジするのは当たり前だし、まず見る前から文句言わずに、見てからで良いんじゃない?というスタンスです。
で、実際見た所、正直、素直に面白かったです。
原作とは解釈とかニュアンスが違うな、っていう部分は勿論ありましたが、今回はこう来たか!と、最初は半信半疑ながらも、終わってみれば凄く面白かったなと感じました。
まず原作のブラックジャックについてですが、流石にリアルタイムとかでは読んでおらず、かなり後年になってから新装版が出た時に全部揃えて読みました。新装版未収録のも4~5話くらいあって、旧版のしかも第4だか5刷までしか掲載されて無い奴とかも古本屋巡って全部集めた。
新装版出た時は記念年か何かだったんでしょうかね?TVアニメよりは少し前だった気が。丁度その時、他の作家がブラックジャックの読み切りを描く企画みたいなのも結構な分量でやってて、そういうのも全部読んでましたし、出崎版OVAやその後のTVアニメ、実写のOVも本木雅弘版、隆大介版と両方見てるはず(確かビデオ結構探したような。特撮方面で有名な小中和哉氏が監督やってるんですよね)
ちなみに昔コスプレパーティでブラックジャック先生に扮した事があるくらいにファンだったりします。手塚漫画では火の鳥以上に私はBJが一番好き。
今回は原作のいくつかのエピソードから切り貼りして話を作ってましたし、ビジュアル的にも何気にアセチレンランプとかロックとか手塚キャラに似せたビジュアルにしてあって、そこもちょっとした面白味でした。いやキリコは似ても似つかぬ感じだけどさ。
感心したのは、結構踏み込んだテーマをTVなのにやってた事。顔の奇病で、人の顔とは思えぬルックスになってしまった女性を直すべきかどうかって、一昔前なら心が綺麗なら良いじゃない、っていう感動話に持って行きそうな所を、いや私はこんな顔なら生きたくないっていうし、パートナーの男性も、ルックがこれでは愛せないとかハッキリ言う。
ルッキズムの問題が問われる今の世の中でね、こう来るのかと。でも現実はそうでしょ?美男美女なら何をやっても許されるし、ルックが並み以下の人間なんて、人権が無いのが現実じゃん、みたいなのをね、突き付けられて凄く嫌な気分にさせられました。でもこれが現実でしょ?何綺麗事で逃げてるの?って言われてるようで。
キリコが解釈違いだっていうなら、今回のブラックジャック先生だって私は同じように解釈違いだと思う。でもそれをアレンジ版なんだと思えば、そこは好意的にも思える。
キリコにしてもBJにしても(ピノコはさておく)獅子面病のカップルにしても、う~ん何か違うけど現代的な解釈としてはこうなるのかな、はたしてこれがハッピーエンドと言ってよいものだろうか・・・なんて思ってた矢先に今回のあのオチ。ぶっちゃけ痺れました。
今風の妥協、と見せかけてそこから落とす。
性格悪っ!でもこのセンス、嫌いじゃ無い。
そこからの「じゃあ医者は何の為にあるんだ」ですよ。
原作でも割と1・2を争うくらいの名セリフ。
もしパート2が作られたとしたら、次のオチは間違いなく
「おこがましいとは思わんかね」だと思います。
下手な感動話とかにせず(TVアニメ版は感動系に改変した話が多かった印象)エッジの効いた皮肉な作風にむしろ私は感動しました。
私は岸辺露伴よりもこっちの方が全然好き。まあ岸辺露伴と同じでTVでタダで見る分にはっていう前提ではありますが。
原作者が泣いてるぞって意見もチラホラありましたが、私はそこまで濃い手塚ファンではないけれど、手塚先生この程度の改変は気にしないと思うし、面白かったら嫉妬する程度じゃないでしょうか。今は版権管理や監修は子供のマコちゃんやルミ子さんがやってるのかな?どちらも結構エキセントリックというかアナーキストというか、個性の強い人なので、むしろこんな改変は笑ってお好きにどうぞってやってくれそうなイメージ。
過去のOV版は内容は正直もう憶えて無いですが(どちらもキリコの話は1話づつあったと思う)見た当時もそんなに面白いとは思いませんでしたし、それと比べたら今回は過去作より良かったような気がします。
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