日本人アーティストが描いた
アメリカ版ファンタスティク・フォー
アーティスト:中塚真、グリヒル、榊原瑞紀
訳:光岡三ツ子、柳亭英
刊:MARVEL 新潮社 アメコミ新潮SPECIAL
販売:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント 2006年
収録:Marvel Age Fantastic Four #1(2004)
Power Pack #3(2005)
Marvel Knights 4 #23-24(2004)
☆☆
映画「ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]」のボックス入り2枚組<特別編>DVDの封入特典冊子として入ってたコミックです。
映画見る為ソフトを引っ張りだしてきたついでにこちらのレビューもしておきます。こんな機会が無いと多分今後もこれを再読するような状況はきっと無いので。
「松本零士オリジナルピンナップ入り」とかなってますが、まあこれが誰も喜ばない酷いイラスト。私は松本零士は通ってきてないので詳しい事は知りませんが、アメコミに影響を受けた的なコメントでもあったのでしょうか?どういう経緯で依頼したのかはわかりませんが、少なくとも「ファンタスティックフォー」の事は1ミリも知らずに、おそらく担当者がイメージだけ伝えて適当に書いてもらった超超やっつけ仕事なイラスト。
「このイラストは、松本零士氏のイメージをもとに自由に描かれたファンタジー・イラストであり、MARVELの作品を忠実にイラスト化したものではありません。」という注意書きがわざわざ入る。
今みたいな知名度が無い時代なので、それなりのビッグネームの後押しが欲しかったんだと思われる。アベンジャーズつったって、日本の世の中的にはまさしく何それバンド?ってくらいの時代だからこその産物と言えなくもない。
で、ここから本編のコミック4話分。
コミックの方は日本人作家が勝手に描いたものとかでは無く、本国できちんと普通のコミックと同じく出版されたものの中で、画の部分を日本人が担当した分の正規のアメコミを日本語邦訳したもの。
の前に今は「アメコミ新潮」ってブランドがもう無いので説明しておくと、新潮社が2000年代前半くらいに邦訳アメコミを出してた時のレーベル。小プロアメコミも縮小してた時期なので、ありがたかったんだけど「アルティメットスパイダーマン」「アルティメットX-MEN」をそれぞれ10巻くらいまで出してそのまま消滅してしまった。(因みにコスト調整の為か原書の1冊分を2冊に分けて出してたので言うほど長くやってたわけでもない)
「BAAN」みたいな擬音まで日本語の書き文字に直してくれてたり、モノクロ版をコンビニコミックで出したり色々と工夫はしてくれたたのだけど、映画はそれなりにヒットしても原作の購買にまではなかなか繋がらなかったのでしょう。
まあそんな中でもこうやってDVDの特典で邦訳コミックをおまけでつけてくれたり、日本人アーティストが描いたものなら馴染みやすいのでは?と考えてやってたんだと思う。(アルティメット枠とは別に麻宮騎亜版の「X-MEN」も1冊出してくれてましたし)
ますは1本目
■マーベル・エイジ:ファンタスティック・フォー #1
ライターはSEAN MCKEEVERという人で、画が中塚真。
マーベルエイジは子供向けのブランドで、古い原作ストーリーを今風に描き直す、というシリーズの様子。「子供向けにわかりやすく」みたいな肩書きが無かったら普通にリブートって言われるものと同等ですよね。実際にF4のオリジンストーリーと、初出撃のモールマン戦のリメイクになってる。
確か「怪獣島」とかはオリジナルには無かった要素だったかな?というかオリジナルの#1って日本語版で読めたんでしたっけか?光文社版に入ってたっけ?そっちも持ってますが記憶が結構曖昧。
そういう意味ではやっぱり貴重かも。
2本目
■パワーパック #3
ライターはマーク・スメラク、アーティストはグリヒル。
マーベルの少年少女チームのパワーパックにファンタスティックフォーがゲスト出演したエピソードを収録。
後にヴィレッジブックスより「パワーパック:デイ・ワン」という同じくグリヒル版(脚本も同じ人)が1冊出ましたが、こちらはそれより前のシリーズ。パワーパックはオンゴーイングでずっと続くというより、ミニシリーズで細かく定期的にやってるシリーズみたいですので。
パワーパック、良いですよねぇ、「ナルニア国物語」とか映画シリーズやってる時、マーベルはパワーパック映画化してシリーズ化すれば良いのになとずっと思ってました。まあ子役が中心になるのでシリーズ化するにしてもハイペースでやらないと難しいですが。そこにたまにX-MENなりF4なりから一人くらいゲストで出たりしたら面白いのになと昔から私は想像してました。
今やるならMCUに無理矢理入れるよりは、アニメとかCGとかの方が良いかも。「BIGヒーロー6(ベイマックス)」みたいな感じでもいいな。
そしてやっぱりグリヒルのアートが圧倒的に素晴らしい。日本人アーティストで一番成功してるの多分グリヒルさんですよね?あるいは自分のユニバースまで作ってもらえたピーチモモコさんかも?
アニメ風の絵柄ながら、きちんと表情とかも上手いし、自分の絵柄の世界観の中で既存のヒーローを馴染ませるのも上手い。
3本目
■マーベル・ナイツ4 #23・24
ライターはロベルト・アギーレ=サカサでアーティストが榊原瑞紀。
榊原さんはカバーアートが中心の印象ですが、フィルイン(既存の担当アーティストの代理)でこの話に入った様子。
前2本の子供向け路線と違って、今回はライター本人のロベルト・アギーレ=サカサさんご本人が話の中に出てきて、ファンタスティック・フォーのライターに今度就任する事が決まったので、F4本人達に取材させて欲しいとバクスタービルにかけつける。
マーベルユニバース的にはヒーローが実際に居て、そこから許可をとって実際に起きた話をベースにコミック化している、というメタ的なちょっと変わった設定。
映画にスタン・リーが出ていたように、マーベルは昔からマーベル・ブルペンと言って編集部とかを作中に登場させたりする内輪ネタを結構やってたりするので、その派生的な話という感じでしょうか。
MCUの「シーハルク」で、ケヴィン・ファイギがどうのとかやってて世間的には大不評でしたが、ああいうノリはね、コミックの時点で大昔からよくあるネタなんですけど、そこまでやるにはまだ早すぎた悪乗りな感じでした。
お話的にはインポッシブルマンという奇妙な宇宙人がヴィランで、なんじゃこりゃ感のある話。
この中だったらやっぱりパワーパックが読みやすさもあって良いですが、他も色々と特殊な感じで貴重な一面が垣間見える、まあ良くも悪くもマニアックなエピソードです。
でも歴史を知るにはこういうのも面白いものです、と読み返しても改めて思ったしだい。
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