僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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Mr.インクレディブル

Mr.インクレディブル [DVD]

原題:THE NCREDIBLES
監督・脚本:ブラッド・バード
アメリカ映画 2004年
☆☆☆☆☆

 

スーパーヒーローをモチーフにしたピクサーのCGアニメ。
ディズニーもピクサーも子供向けでしょ?っていう偏見がこの頃の私にはまだあって、初めて映画館で見たピクサー映画がこれだった気がする。

 

理由は勿論、スーパーヒーロー物だから。2004年というと、マーベル映画がちょこちょこと出始めてた頃くらいですよね?ヒーロー物だから一応見ておくかな?くらいで映画館には足を運んだ気がします。

 

いやもうね、これがメチャメチャ面白かった。
確か同監督の超名作「アイアン・ジャイアント」はこれの後に見た気がするなぁ。


これの影響、というわけではないですが、今は映画全体にそれなりに詳しくなったので、ファンという程では無いにせよ、ディズニーもピクサーも映画としての価値や挑戦は理解してるので、気になるものがあれば抵抗なく見れますし、物事は何でも「百聞は一見に如かず」でもあり、自分の狭い世界や視点を押しつけるのではなく、もっと物事を広く見た方が楽しいし世の中の理解も深まると知ってるので、なるべく偏見は持たないよう気をつけてはいる。

 

ピクサーとしてはおもちゃや動物ではなく、初めて本格的に人間を主軸にしたCGへの挑戦でしたが、今見てもそんなには古くない。時を隔てて制作された続編の「インクレディブル・ファミリー」と比べると、あれ?やっぱり昔のは相当に古かったんだって感じるけど、単発で見る分にはそこまで違和感はない。肌はCGらしくつるっとしてるけど、アニメですし気にはならないレベル。

 

そしてそっちの続編の方の「インクレディブルファミリー」を見ると、そっちって奥さんのイラスティガールの方が主人公っぽくなってて、そこは凄く時代の変化だなって感じるんですけど、逆にこっちはそこと比べた時の古き価値観みたいなのが味として出ていて、風刺・批評的な目で見てもこれはこれで面白い。

 

これはピクサーとしてのマーケティングでこうなったのか、はたまた元からのブラッド・バードの描きたい部分だったのかはわからないけど、この映画の時点でMr.インクレディブルの物語から、ちゃんと後半はインクレディブルファミリーの物語にシフトするんですよね。作品の雰囲気としてはノスタルジックな部分が大きいけど、決してそこだけじゃないよっていう作りが上手い。

 

そして、そこがあるから古びない作品になってる気がします。これがシンドロームの復讐だけを軸にしてたらさ、ありきたりの古いヒーロー映画とそんなに差はつかなかった気がする。

 

男性優位社会みたいな部分から、今はそんなのもう古い価値観でしょ?っていう所にシフトするのが新しい部分だし、そのベースの部分にアメコミへのマニアックなオマージュ、アメコミファンなら、そうそうこれ、こういうのが見たかったんだよねっていうのが凄く詰まっている。

 

発想のベースは「ウォッチメン」にあったのは誰が見ても明白だし、それでいてリスペクトは明らかにファーストファミリーとしての「ファンタスティック・フォー」で、この時代でDCにもマーベルにもオマージュを捧げつつ、そこからオリジナルを生みだすっていう事をやっているのは本当に凄い。

 

だって「FF超能力ユニット」ってこの後の2005年ですし、DCもまだ「バットマンビギンズ」の前ですからね。実写アメコミスーパーヒーロー映画がまだ試行錯誤してた時期にこれが出ているというのは大きい。

 

大体この時点だと「スパイダーマン2」「X-MEN2」は公開済み。スーパーヒーロー映画も増えてきてはいたし、原作は無いものの、スーパーヒーロー物のパロディ作品、「Gガール」とか「ハンコック」とか「スーパー」とかそういうのはもう少し後。そこ考えると、この時点のスーパーヒーロー物のオリジナル作品でこの出来ってやっぱり凄くないですか?

 

ブラッド・バードって、この後ピクサーでも作品を出しつつ、「ミッション・インポッシブル」とか実写の方の監督もやるようになる売れっ子です。その中で、一般市民への軽視の眼差しとか、ちょっと問題も指摘されるようになるのですが、この時点ではそこまで気にならない。むしろカメラワークとか、視点或いは感情の誘導みたいなのが上手くて、そこは画面の作り方やカット割りのテクニックなので、CGじゃなくても生かせる所だなぁと感心させられます。残酷なシーンとか結構あるんだけど、それをあまり悟らせない作りになってて、面白いなと感じました。

 

ヒーロー映画の傑作。しかも原作無しという部分でもまた特別な1本と言えるかと。

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