僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ

機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ(4) (角川コミックス・エース)

Mobile Suit Gundam WEARWOLF
漫画:伊藤亰
シナリオ:重信康(チーム・バレルロール)
アドバイザー:小太刀右京(チーム・バレルロール)
原案:矢立肇富野由悠季
刊:KADOKAWA 角川コミックス・エース 全4巻
2023-25年
☆☆☆☆★

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ガンダム×ミステリー×人狼ゲーム
というジャンルミックス物のコミック。
ちょっと前に完結したので単行本で一気読み。

 

ガンダムエース連載時も多少は目を通してはいたものの、ガンダムMk-IVとかギャン改とか「Gジェネ」で設定されたMSを使ってるのか程度でしたが、話は本格推理ミステリーなので、そんなMS戦闘シーンだけを見てたって本質は見えてはこない。単行本4冊まとめて読むとこれがまた面白い。

 

前半2冊で密室殺人の真相が解き明かされ、そこから後半無理矢理繋げたか?と思いきや、そこから話はより複雑さと深みを増して行き、2転3転どころか4転5転とどこまで話が転がる。で、そこがまた面白くってね。好評だから少し延長したとかでなく、これはちゃんと最初から最後までプロットが作ってあった上での話でしょう。

 

推理物なんだからそういう作りなのは、そりゃそうだろうと言ってしまえばそれまでですが、山ほどあるガンダム漫画の大半は風呂敷広げるだけ広げたけど畳まずに終わったとか、最後雑に畳んで終了とか、綺麗に纏まった感じで終わるものは決して多くは無いです。

しかもアニメや他作品からのゲストキャラでのリンクとかが結局は見せ場になったみたいなとこもなく、この作品単体で成立してるのも面白い。

 

時代的には「UC0087」末期で、「Zガンダム」と同時代。まだティターンズは崩壊してませんが、アクシズが戻り、エゥーゴとの三つ巴になる中で、アクシズティターンズが同盟を結んだ前後くらい。

新型MS「ガンダムウェアヴォルフ」の試験時にペガサス級強襲揚陸艦「ヘカーテ」はエゥーゴと遭遇。ガンダムを起動し、なんとかそれを退けるも、帰還したガンダムコクピット内でパイロットは死亡していた。推進システムに被弾したヘカーテは帰路につけず宇宙漂流。逃げ場のない中、殺人鬼は果たしてだれなのか?という感じの話。

 

そうね、「エイリアン」じゃないけれど、宇宙船の中だけでも逃げ場のない閉鎖空間なのに、更にその上でのMSのコクピット内での殺人というなかなかに攻めた作り。

いや、閉ざされた雪山のペンションとかが宇宙空間で、密室殺人が部屋の中っていうのをMSのコクピットにした感じ?

 


登場人物

リュコス・フレイバーグ中佐
 ヘカーテ艦長。
 バスク・オムの部下

オクリーヌ・ワーグ少佐
 ヘカーテ副長。
 お嬢様らしいが筋肉マッチョな女性。

ロビンソン・シュライカー大尉
 MS隊隊長。
 1年戦争時代からのベテラン。
 乗機はペイルライダーDII

ラセッド・グレンドン中尉
 ガンダムウェアヴォルフのテストパイロット。
 コクピット内で遺体で発見される。

ヴァーリ・キドウ少尉
 MS隊パイロット
 乗機はペイルライダーDII

クロコッタ・ムアサド少尉
 MS隊パイロット
 乗機はペイルライダーDII

ワヒーラ・ジンドゥルブ中尉
 MSパイロット 第2小隊
 乗機はマラサイ
 ラセッドの親友だったが、初戦で撃墜され死亡

レト・シーア少尉
 補欠パイロット。 主人公1で物語の探偵役。
 乗機は頭部破損したペイルライダーDIIにバーザムヘッドを取り付けた現地改修機

マカミ・タルボット軍曹
 整備士・メカニック 主人公2で探偵助手役
 ハロ風の情報端末「ハル」を使用

アジャク・アンジン
 軍医 メディカルルームの先生
 解剖大好きマッド気味

マリット・ネウリアン
 衛生士 メディカルルームスタッフ
 マカミの幼馴染のようだ

ウルマ・フルール
 オペレーター
 ラセッドとは将来を誓い合った仲らしい

ロゼール・ガルニエ
 主計科附き軍属コック
 元はMSパイロットだった

アクシズ陣営
クラート・ニクス
 アクシズの騎士だが騎士道精神は皆無。
 乗機はギャン改

グレゴワール・ニクス
 副官

カーシィ・ノール
 強化人間。女装男子
 乗機はモビルアーマーガザレロ

エゥーゴの使者と名乗る仮面の男
ウゴドラク


一癖も二癖もありそうなキャラ造形な上に、ほとんどのキャラに裏の顔的なものがあるという濃密さ。多分、推理物のキャラ造形のセオリーや定番のテンプレみたいなものってきっとあるんでしょうし描き方見せ方の基本ってきっとあるんだとは思う。

 

いや実は、私は推理物ミステリーとかすっごい苦手ジャンルです。推理小説・映画・漫画等に関わらずです。何で苦手なのかっていうとね、犯人とかトリックとか、そんなの描く側がどこまで描くのかの裁量一つじゃん?っていうのが一番の苦手の原因。

 

若干ジャンルとしては亜流かもしれませんが「デスノート」とかあったじゃないですか。まあ面白かったし読んではいたんだけど、なんか後付けのルールとか最初に説明して無いルールとかそうのが凄くバカバカしく思えたんですね。

ああ、クリストファー・ノーランとかが嫌いなのにも近いです。最初にルールの全部を提示しておいて、その中で考えてねっていうものなら良いんですけど、後出しでそんなの最初に説明して無いじゃん。それでビックリしろつったって、それはビックリじゃ無くただの理不尽、インチキじゃん!って私は思うタイプ。

なんかそう思い始めるとね、推理物とかにも理不尽さを感じるようになってしまって、最後に納得してスッキリとかじゃなく、ただのご都合主義じゃん!って感じるようになってしまって、推理物の面白味が逆に凄く苦手な感じになってしまった。

 

今回の「ウェアヴォルフ」も正直、いや何それ的な部分も多少はあったんですけど、面白味の方が勝った感じ。

思わせぶりな部分にちゃんと意味があってなるほどこういう事だったのか!という面白味がありつつ、全部の思わせぶり描写に意味を持たせてしまうと、それはそれで全てが伏線になってしまうので、あえて意味のない描写も混ぜたりとかも必要なんだなって、このジャンルに造詣の深くない私は新鮮味を感じました。ほとんどのキャラに裏の顔があるっていうのも人狼ゲーム要素(ちゃんと投票もある)からとってきてるんでしょうけど、全4巻に纏まっているコンパクトさと短いけど濃密な感じが素直に面白かった。あとジャンルとしての構造とかも垣間見えてなるほどこういう面白味なのかと。


単純に宇宙空間とかだけでなく、ガンダム特有の要素をこう生かすかってのは強引さも感じつつ同時に上手さも感じた。

バイオセンサー関係はまあ賛否の分かれそうなギリギリな要素ですが、戦争の狂気みたいなとこはエグい上にテーマ性もあって良かったのではないかと。

 

そう、バイオセンサー。
ガンダムMk-IVをそのまま使ってるわけじゃなく、あくまでガンダムMk-IVベースの実験機の「ウェアヴォルフ」という機体なのです。

ガンダムマーク4自体は「Gジェネ」のゼロ辺りでしたっけ?既存のガンダムマーク3とマーク5を繋ぐ機体としてゲームオリジナルで設定されました。

 

ガンダムセンチネル」に登場するガンダムマーク5は別に「Z」本編のマーク2や「Z-MSV」のマーク3の後継機とかじゃなく、確かオーガスタ製5番機とかそういう理由で「G-V」ってMSに設定され、そこからついた名前だったはず。

なので本来マーク4は設定されて無かったものの、間が抜けてるなら埋めてしまえという奴だったはず。昔で言うジオニック社ツィマッド社とかの設定が無かった時代にグフとドムの中間みたいな試作機を設定した感じか。

 

で、ガンダムMk-Vのデータがアクシズに渡り「ドーベン”ウルフ”」として狼になり、そこからまた発展機として最終的に狼を倒せる銀の銃弾「シルヴァ・バレト」(シルバーバレット)にまで発展して行くと考えた時に、正体を隠して人の顔をした狼みたいなポジションでMk-IVをここで使うってメチャメチャ面白いセンスです。

 

エゥーゴの方でも百式改、エゥーゴに渡ったシュツルムディアス、ネモIIIとかマニアックな感じだし、ペイルライダーDIIに、Gジェネ生まれの「MK-IV」「ギャン改」「ガザレロ」とか、設定は知ってるけど物語の中に出てきたのを見た事が無い機体の活躍が見れる(読める)っていうのは結構ツボです。

私は全くのオリジナルとかより既存の物の掘り起こしの方が好きだったりする方なので。

 

あとティターンズ。まあぶっちゃけ今作でもロクでもない奴らでしたが、私ティターンズ結構好きなんですよ。ただの悪役として描かれるとガッカリしてしまいますが、同じく「Z」系外伝の「アドバンスオブZ」の最初の奴。「ティターンズの旗のもとに」ですね、あそこで主人公エリアルドの所属するT3部隊がティターンズの中でも穏健派ハト派の派閥でね、ティターンズの中にも居る良い人達の部隊で、ああそうだよね、連邦の派生なんだから全員悪人じゃなくまともな理想の為に戦う人達だって居たはずだよね、というのが好きな理由。

 

考えてみればさ、「AOZ」だって最初の奴は一般向けの警察小説なんかでちゃんとした実績を残してる今野敏を引っ張ってきて、ガンダムで「法廷サスペンス」をやるっていうのが当初の売りの一つでした。結果として藤岡健機の僕の考えた最強のガンダム(奇形メカ)しか残りませんでしたが、ちゃんとそこでジャンルミックスの面白さを描こうとしてたんですよね。

 

今回の「ウェアヴォルフ」のあとがきでもジャンルミックスの可能性に触れてますが、まさしくその通りで、「Gガン」はともかく、「W」「X」「SEED」「AGE」なんかは、もし自分がガンダムをリメイクするならこうするみたいな発想の作品ですし、多数の外伝漫画も大半は俺ガンダムに終始。そんな中で「AOZ」の挑戦があったり、「鉄血のオルフェンズ」なんかはガンダムでヤクザ映画の文脈をやったわけじゃないですか。(一応ヤンキー物「オレら連邦愚連隊」→ヤクザ物「ガンダムカタナ」的なものも前にありつつ)やっぱりそういうのって新しい景色に思えるし、違う文脈を軸にそこにガンダム的な要素を組みこむっていうのも、それはそれで面白いんですよね。


MCUが他のジャンルにアメコミヒーロー物を落とし込むという作り方をして、業界のトップにまで登り詰めたように。それこそ昔の「ナイトガンダム物語」なんかは当時人気のRPGの世界観にガンダムを落とし込む形でヒットしてたわけですし。

 

コンパクトに読める中編として「ウェヴォルフ」は凄く良い作品でした。

機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ(1) (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ(2) (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダム ウェアヴォルフ(3) (角川コミックス・エース)

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