僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

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原題:War for the Planet of the Apes
監督・脚本:マット・リーヴス
脚本:マーク・ボンバック
原作:ピエール・ブール猿の惑星
アメリカ映画 2017年
☆☆☆☆★

www.youtube.com

シリーズ9本目。

猿の惑星「創世記」「新世紀」に続くリブート3部作の完結編。監督は前作に引き続きマット・リーブスが担当で前作から2年後の直接の続き。
この後の「猿の惑星/キングダム」もこの3部作の世界観を引き継いでいるものの、ここから更に300年後の話でまた新しいシリーズとしてそちらは展開していく予定。

 

原題は「ウォー・フォー・ザ~」となっている通り、戦争を描いているという部分では旧シリーズ5部作の最終作「最後の猿の惑星(原題はバトルオブ・ザ~)」に近い路線。

 

テーマとしては「人は何故に戦争を起こすのか」みたいな所が掘り下げられているのが面白味。
「最後の猿の惑星」はどちらかというと戦争の愚かさを描くのが目的だったと思うし、それはシリーズ1作目から描いている旧シリーズ全体のテーマとも言えるものでした。

そこからのリブート3部作は、そこ(猿が地球を征服する=猿の惑星)に至るまでの設定的な部分を描く所からスタートして、いつしか猿側の原罪まで描き、今回の最終3部では旧作のテーマだった愚かな戦争は、じゃあ何故その道に至るものなのか?をちゃんと描いている。

 

これってマジで凄くないですか?古いシリーズをリメイクして原題的にアップデートする程度の作品じゃないんですよ?旧シリーズをちゃんとリスペクトして、そこに対するアンサーというか、物語上だけでなくテーマとしてもその前日譚=プリクエルとして位置づけられるものをお出ししてくる。

 

この志の高さよ。リテラシーとインテリジェンスの塊みたいな作品ですよねこれ。「ワイスピ」なんてバカ映画見るくらいならこのシリーズ見ようよマジで。

 

じゃあ人ってそもそも何故争うんでしょうか?
機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー」というガンダムOVAシリーズにこんなセリフがあります。「戦いの全ては、怨恨に根ざしている」

初めて見た時は、まだアニメというかただのガンダムオタク以上では無い狭い視野しか持ってない時期でしたし、ふ~んなるほどねぐらいにしか思いませんでした。そのセリフを発するアナベル・ガトーは芝居がかったセリフ回しをするキャラなので、多少ハッタリみたいな部分もあるのかなとも思いましたし。

 

で、そこからしばらく経ち、色々あって社会学を勉強する事になり、その時の講師がこの本が社会学の入門書としてよく使われているよと、社会学を学ぶに当たりベースとなったのが
藤原和博宮台真司 (共著) 人生の教科書「よのなかのル-ル」という本でした。

人生の教科書「よのなかのル-ル」 (ちくま文庫 ふ 29-4)

その中で、「何故人を殺してはいけないのか?」いや別にそんなルールは無いんだけど、じゃあそうした時にどういう問題が起きて、それをどうすれば解決出来るのか?みたいな感じの説明が書いてありました。

 

「殺したから殺されて、殺されたから殺して、それで最後は本当に平和になるのかよ!」ガンダム0083ではなくガンダムSEEDでのセリフですが、まあちゃんとした社会学を勉強した時も、あれ?この怨恨がうんぬんってのはガトーが言ってた奴じゃん。あながちあれも素人考えだけでもなかったのかと感心したのでした。

 

私は子供の頃にいじめられっ子だったので
「悲しみや憎しみは誰かが歯を食いしばって断ち切らなくちゃダメなんです!」
っていう「ハートキャッチプリキュア」のセリフが魂に響く大好きなセリフだったりするので、別にガトーに心酔したりは全然しないのですが、まあそこは物の考え方としては基本なんだなと。

 

だいぶ猿の惑星からは話が脱線した感がありますが、まあ実際に今回の話がそこをベースに描かれていて、自分の子供が殺された恨みを晴らさずにいられるのか?恨みや仕返しに正当な理由や必然性があるとするなら、それを取りやめる方がむしろ不自然なのでは?ぐらいの投げかけをしてくるのが何気にエグイ。

単純に倫理の問題なのかこれは?

或いは、その恨むべき相手が、自分と同じような悲しみを背負っていたら?それどころか自分以上の悲劇を背負っている善人だったとしたら?

 

ここで主人公のシーザーを誇り高き精神を持つ正しい存在みたいな安易な描き方をしないのが秀逸。

勿論、そちらの方向に進もうとはするけれど、その正しき新人類は同族殺しという積みを背負った罪人のまま、導く存在となっていく。

 

他人の命を奪ってはならないと説くその人は、実際に他人の命を奪った罪を背負う存在であるという矛盾。

 

メッチャ面白くないですか?

 

罪を背負ってみて初めてその意味を知るのなら、戦争を、殺人を経験してみなければ人は反省しない生き物。人は生まれながらにそんな罪を背負う罪人なのか?

 

人間と猿がまるで生き写しのように描かれるこのシリーズで、猿を通して人を描き、作中では人間の次の支配者となる猿が人と同じような罪を背負った種族として描かれる。

「人間は愚かだ、けれど猿は純粋で正しい」なんて描き方は一切していない。
彼らが進化して行く遠い未来は、恐らくは人間と同じく・・・

 

いや~リブート3部作超面白かった。
特に2部と3部。マット・リーブスやるなぁって感じです。

 

次の「キングダム」は実はまだ見た事無い初見なので楽しみです。
考えてみれば映画館で見れなかった新作の配信始まったから見よう。いやせっかくだから1作目から見返して感想書いていくか、という企画でした。月一で見てたので約10カ月。歳とるとホントに1年なんてあっという間に過ぎてしまいますね。

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