僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディションII/遥かなる暁

機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション II 遥かなる暁 [DVD]

MOBILE SUIT GUNDAM SEED SPECIAL EDITION : II
監督:福田己津央
OVA 全3話 2004年
☆☆☆

 

ガンダムSEEDスペシャルエディション2本目。

無人島でのカガリアスランの出会い、ストライク撃破、舞い降りる剣フリーダム降臨からオーブへ亡命、アズラエルと3馬鹿登場に暁の車と見所が満載の第2部。

 

ただ、そんな見所が多い分、繋ぎが雑で総集編感は強く、映画的に見るにはちょっと厳しく名場面集みたいな印象も強い。挿入歌3曲ってのもまさしくですよね。色々詰め込み過ぎ。
しかし何でこれ90分なんでしょうね?これと最初の1本目だけはTV放送もしたので(DVDにはその辺の分割分の次回予告も入ってる)そういった兼ね合いなのかな?基本的にはソフトを売るための作品かと思うので、2時間とかじゃダメだったんでしょうか。新作じゃ無くただの総集編なんだから、時間が増えると予算もかさむとかじゃないのでは?っていうのは素人考えでしょうか。

 

1本目の時にも言いましたが、良い部分悪い部分がやはり両方ある印象。キラとラクスの、この人達何を言ってるの?感は今見てもなかなかにキツイ。勿論、この後のデスティニーまでの顛末を知った上で更にそう見えるってのもあるんでしょうけど、ここをよく主人公ポジションに置いたなぁと不思議に思う。果たして当時の若いファンはキラに感情移入とか出来たんでしょうか?

 

アスランアスランでどうかと思う所はありつつ、それでもまだ理解は出来る範疇で、今も昔もアスラン視点の方がやっぱり作品には入りやすい印象。

 

私の中では「SEED」1番の名場面、アスランカガリの言い争いで、
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は本当に平和になるのかよ!」
っていうとこが昔からずっと好きで、無人島でのカガリアスランの初遭遇、その後のストライク撃破後の収容された後の二人の会話含めてさぁ、アスランも「俺だってわかんねぇよ」っていうのがね、私は昔からすっごく好きな場面。

 

「憎しみや苦しみは誰かが歯を食いしばって断ち切らなきゃならないんです!」
と、石田彰も出ているハートキャッチ某では描かれてましたが、それはまだ別の話だ。

 

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もしかしたら幼稚な問いかけなのかもしれないけれど、それでもね、ああこういうのって実際どうなんだろうな?みたいに自分なりに考えてみるって凄く大事な事だなと私は思うんです。

 

ガンダムを見て戦争を考えるって、私は超超超超超ダサイと思うんです。
ファーストの安彦良和に、「今の若者にとって戦争で一番イメージされるのは『ガンダム』なんですよ」って言ったら、「そんなバカな!ガンダムを見て戦争を語るなんてバカバカしいにも程があるし、そんな情けない見方をされるのは作り手としても心外だからそういうのはやめてほしい」的なやりとりを以前のガンダムエースか何かの記事で読んだ気がします。

 

ガンダムがリアルな戦争を描いているなんてそんな幼稚な見方をアニメファンがしているのは情けない話だし、若者にとってはそれは恥ずべき事、害悪な事だと。そりゃあね、安彦さん、日本誕生の古事記の時代から歴史を描き直してる人ですし、日本のみならず世界史まで含めて、本当の歴史はこうだったんじゃないか的な事書いてますしね。やっさんらしいなと笑いとばせるならそれで良いのです。

 

でもねぇ、昔の私は実際そんなガンダムしか知らないでこれがリアルな戦争なんだ的に思っちゃうような、本当に恥ずかしい人間でね、その超超超超超ダサイ側の人間でした。やっさんにしても富野監督にしても言う訳ですよ、アニメばっかり見てる人間になるなって。中高生ならともかく、良い大人が見るものじゃねーだろと。そこも同時に一理あるのかなと私は思ったんです。

 

20代半ばくらい、30前くらいにして、自分は本当にガンダムくらいしか知らない恥ずかしいオタクで、それって情けないし世間に通用するはずも無く、このままでは人としてもう終わってるな、と思いはじめて、そこから必死に挽回しました。

 

映画とか沢山見たりして、それこそクッソ重たくて1カ月くらい引きずった原爆のドキュメンタリーとかまで当時観に行きましたよ。これも人生の修行だとね。そんな中でね、NPOの上映してたドキュメンタリーとかも観に行って、今度はそこに参加したりしてる内に、きちんと勉強もしました。

 

やっぱり心のどこかに戦争や政治もロクに語れない大人なんか恥ずかしいし情けない、みたいな気持ちが自分の中にあったんです。

 

で、そういう中で思ったんです。凄く情けない話なのですが、そこできちんと勉強するまで、日本って戦争の被害者だと思ってたんですよね。敗戦国で日本と言うのは可哀相な国なんだと。学校の歴史とかでもどっちかというとそんな感じの教え方とかじゃなかったですか?
でも実際は違うじゃないですか。日本は被害国だけじゃなく同時にそれ以上の加害国ですよね?アジアへの侵略戦争があってその流れが大二次大戦にも繋がるわけで、昔から終戦記念日近くになると、やっぱりテレビとかもそういうの沢山やります。

 

火垂るの墓」とか好んで見るかと言えばわざわざみませんが(見たことはありますよ)なんかね、そういう雰囲気になるだけで、昔はうわ~って思ってたし、多くの犠牲を払った戦争なんか2度と起こしてはいけない、というのが戦争=お決まりの教訓だったように思うんです。勿論、そこは心から同意する所ですし。

 

でも、勉強がてらにと映画とか見てる内に「鬼が来た!」とかも名作だからとか言われて見るわけですよね。中国映画だから日本兵が鬼畜に描かれてる。そこでは「鬼畜米英!」じゃなく、鬼畜なのは日本人の方です。ここを単純なナショナリズムで否定してはいけません。まさしくガンダムで言えば連邦とジオンの両方の視点で・・・とか言い出すやつです。

 

そういえば日清戦争とか良く知らないな、日露戦争もそうだし、なんとなく単語でだけは知ってるけど、みたいなのが古今東西各国の多彩な映画とか見て行く内にパズルのピースだけどんどんたまっていきました。映画単体としては普通に各作品それぞれに楽しんで(という言い方が適切かどうかはわかりませんが)見たけど、じゃあその歴史背景をきちんと理解した上で見てるのかと言えば、正直そうじゃなかった。

 

その後、NPOに参加して上映会でチケット売る側に回ると、実は戦争の背景とかよく知らないとか言ってしまうのは不誠実だと。その上でみっちり勉強して見ると、これまで見てきた沢山の戦争映画のピースもカチっと色々な所にハマるし、きちんと勉強すれば、目から鱗な事は沢山あったわけです。ああそうか、この世界はこういうことだったのかと。ずっと日本=敗戦国で可哀相な私たちと思いこまされてきたけれど、それは国の都合のよい情報操作でしかなかった。そんなのをね、きちんと自分で勉強する事でようやく気付けたわけです。

 

勉強会に参加する時に私ちゃんと言いましたよ。「戦争」でイメージする事は?って最初に聞かれて、「恥ずかしい事だとは思うけど、私が最初に戦争って聞いて思い浮かべるものはガンダムですって」ちゃんと答えました。

 

今丁度、米国で「オッペンハイマー」と「バービー」という映画が公開されて、こういう毛色の全く違う映画が同時に公開されてどちらもちゃんと話題になるのはようやくコロナ禍からの復活なんだと、どちらの作品も盛り上がって、原爆のキノコ雲をファンシーに描くネットミームが流行。それを公式アカウントがリツイートなんかしちゃうもんだから、流石に日本からはクレームが出て、歴史認識の甘さが露呈されたと。

 

これね、私はバカにできないなと思うんです。そりゃあ日本に住んでて、原爆をネタにされたら流石にそれはちょっと不謹慎なのでは?と思う。でもさ、かつての自分がそうだったように、戦争なんて映画の中でしか知らない、みたいな感覚の人を、ガンダムで戦争を語ってしまうような昔の自分だってそんなの大差無いわけで、そこを安易に、自分は違うとか言うのもね、どうなのかなと思う訳で。

 

という所からガンダムSEEDへ話を戻す。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は本当に平和になるのかよ!」「俺だってわかんねえよ!」
というシーンにグッと来て、じゃあ実際どうなんだろう?と考える事は決して無駄じゃあないと私は思うんです。ありきたりですが、考えるきっかけにでもなればそれで良いですし、そういうのもフィクションの役割の一つです。

 

何せ今のご時世、ガンダムみたいに作中で人が死ぬような作品は見られないと言う人も多いそうじゃないですか。統計学とかデータは知らないけど、そういう話はちょこちょこ目にします。それこそ「水星の魔女」の構成はそういう所も想定した上で作ってあったのは間違いのない所でしょう。

 


そこを考えた時、キラの心情も共感こそできないものの、こういうのはこういうのでこの時点ではアリかなぁと思ったりはします。次の3部の話になるけど、無印SEED単体で見た時って、キラの敗北で終わるんですよね。そこは面白いポイントだよなぁと私は思ってたりします。デスティニーは作り手がキャラに愛着を持ちすぎて負け役を譲りたくなくなったのがおかしくなった要因だと思う。


という所でその話は次回完結編「鳴動の宇宙」で。

 

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