MOBILE SUIT GUNDAM The 08th MS Team
監督:神田武幸(#1-5)
飯田馬之介(#6-11)
森邦宏・仕舞屋鉄(エピローグ)
OVA 全11話+エピローグ1話
1996-99年
☆☆☆☆★
「0080 ポケットの中の戦争」「0083 スターダストメモリー」に続く宇宙世紀OVAシリーズ3作目。この3作の中では私は一番好きかな。勿論、後半の方。
「太陽の牙ダグラム」「銀河漂流バイファム」「機甲戦記ドラグナー」なんかで有名な神田武幸監督でスタートしたOVAシリーズでしたが、制作途中で他界され、しばらく休止した後に飯田馬之介監督が引き継いで、作風が180度変わりつつも、なんとか完結までこぎつけられたシリーズ。(エピローグの「ラストリゾート」もまた別の人。仕舞屋鉄という名義が何とも色々な事情があったんだろうなと思う)
序盤は順調にリリースされてたんですけど、突然止まって音沙汰無くなってしまって戸惑った憶えがあります。丁度私、ドリームキャストでインターネットを初めて体験して、セガBBSに「08小隊のOVAの次っていつ出るんでしょうか?」みたいな質問を書き込んだ記憶ありますもの。当時はネットで検索しても裏事情は全然明かされて無くて、作品背景の事を知ったのは随分後になってからだったように思います。
今では後半の飯田監督ももう他界されてしまいましたね。ガンダムAで連載した飯田氏の「宇宙のイシュタム」は初期ダムAの中でも屈指の名作なので、そこはいずれ再読して改めて取り上げようと思います。その後の08のコミカライズの方もね。
今回、配信では無くDVDをひっぱり出してきて見ました(例によってVチューバーの同時視聴込みで)。そのソフトのライナーノーツに飯田監督の対談とかが載ってて、改めてそれも読み返したりしましたが、リアルなメカ描写に漫画チックなキャラクターをのせたのが前半の神田監督の作風で、後半はキャラのドラマはリアルにして、メカは漫画的(MSもあくまでキャラクター)に演出したので全然違う作風。他の人が始めたものを自分の作風に寄せるのが苦労した的な事を言ってます。
他の所でも、神田監督がやろうとしてたのはアメリカの戦争ドラマの「コンバット」みたいな路線っていう話でしたが、それをクッソシリアスで激重い路線に思いっきりシフトチェンジしたのはやっぱり凄い。
連邦とジオン、住む世界の違う二人が出会ってしまったロミオとジュリエット路線という根っこの部分はちゃんと残してやりきったんだから全くの別物に作り替えたわけじゃないよっていう事なのでしょう。
ガンダムシリーズにおける、敵を撃てるのか、人殺しになれるのか問題って作品ごとに色々やっててシリーズを見比べる時に物凄く面白い部分なんですけど、あんまりシリアスにそこだけに焦点を当ててもティーン向けのエンタメとしてはツライって部分もあり、とことんまで突き詰めるって程では無かったりもしますが、その掘り下げを丁寧にやったのが「08」後半。
第8話「軍務と理想」
っていうサブタイトルだけでもうわくわくしてきますよね。
私はガンダムって基本はSDガンダムからなので、当然最初はメカ主導で見てたけど、Vガンという強烈な体験から富野作品という枠でドラマやテーマ性の部分にも惹かれたので、比較的初期の頃からメカ以外の部分もガンダムは面白いんだぞ的な思想が身についてました。というよりガンダムでメカしか語れない人が嫌いだったというか。
そんな時にねぇ、08のこのシリアスさがすっごく響いた。
その上に「愛など粘膜の作りだす幻想に過ぎん!」
「可哀相に、それでこんな鉄の子宮が必要になったのですね」
みたいなセリフに、おお!凄い!シビレる!みたいな。
前半みたいに、少しづつ体調としての信頼を得ていくみたいなドラマも勿論面白いんですが、後半のね、スパイ疑惑をかけられたシローに対するサンダースとカレンの心の内とか、ほんの一言二言のセリフでグッと深みが増す描写とか、本当に面白くて好き。
「若いの、正面突破だけが人生じゃないぞ。時には絡め手で」うんぬんっていうニッカードさんや、コジマ大隊長、イーサン・ライヤー司令、そして勿論みんな大好きノリスとかも、少しの描写でグッと来るこの感じが凄く上手いなと。
wikiとか眺めてて思ったけど、そうそう、初期の頃は陸ガンの設定も結構曖昧で、先行量産型ガンダムとかの記述も初期の頃はあったはず。「ギレンの野望」とかやってて、ガンダムリクセン型みたいな表記で当然宇宙では使えないので、ああ汎用じゃなく大気圏内に用途を限定したからガンダムでも量産できたのかなとか、そんな感じの視点で見てた記憶があります。
欲を言えば、ラストリゾートじゃなく、もう1話普通に間に欲しかったかなという気はしますが(別にラストリゾートも嫌いではないけど)本編11話+エピローグ+劇場版のミラーズリポート合わせて全13本作って企画終了、という形で目途をつけたかったのでしょう。色々と複雑な制作背景事情がありつつ、何だかんだとちゃんと作品の個性が出た面白いシリーズにはなってたと今見ても感じました。とても好きです。
BD-BOXが出た時にCGショートフィルムのフフフライトタイプと戦う「三次元の戦い」なんてのも作られてましたが、他にも以前取り上げたドラマCDが2本。あとは恐らく公式設定には含まれていなさそうな、ムック本に掲載された短編コミック第1.5話。そして今回DVDのライナーノートで触れられてた当時の模型誌で連載してた「トリヴィアルオペレーション」なんてのもありましたね。先に触れた「イシュタム」は08前史に当たる作品。
神田監督、飯田監督両名が亡くなられた事で、08キャラのその後は触れにくくなってはいるものの、「復讐のレクイエム」にはユーリ・ケラーネ出てるそうですし、ガンダムEXも顔がEz-8似と何かしらの関連性はありそう。
カレンとかサンダースのその後とか、今のガンダム事情なら触れて来そうな所も今の所はまだ踏みとどまってる感じですが。、いつかその辺が利用される時が来たりするでしょうか。
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