僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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映画 刀剣乱舞 -継承-

映画刀剣乱舞-継承-

TOUKENRANBU THE MOVIE
監督:耶雲哉治
原案:DMM GAMES / Nitroplus刀剣乱舞-ONLINE-」
日本映画 2019年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
西暦2205年、歴史修正主義者たちが過去に攻撃を始める。政府に歴史を守るよう命じられた審神者は、歴史修正主義者から差し向けられた時間遡行軍と戦うためにかつての刀剣を復活させる。人の姿をしてよみがえった“刀剣男士”たちは、天正10年6月2日、歴史改変の危険が迫る本能寺の変を守り抜く。

 

とゆー事で実写映画版「刀剣乱舞」です。元のゲームも2.5次元ミュージカルも私は知りません。腐女子に人気のコンテンツで刀の擬人化物くらいの知識しかなく、話や設定とかも全く知らなかったのですが、今回脚本が小林靖子(愛称「靖子にゃん」)という事で、特撮オタ界隈では結構面白いと話題になってました。

 

特オタとしては、私はにわかもいいとこで、靖子にゃんの作品全部は見てないのですが、それでもやっぱり小林靖子は特別なのです。
とうらぶの話の前に少し特撮話をしますと、私はニチアサでも「プリキュア」が大好きで昔から一生懸命見てますが、前後(今は後ろに2本になっちゃいましたが)の戦隊、ライダーは流れでたまになんとなく見る程度でした。アメコミヒーロー映画とかが好きなので、それと比べると物足りないしな、という感じでした。別に嫌いという訳では無かったので、機会があれば一度きちんと見てみるか、程度。

 

その後に特撮も好んで良く見る切っ掛けになったのは「仮面ライダー龍騎」です。リアルタイムじゃありません。「魔法少女まどかマギカ」にハマって、その元ネタに仮面ライダー龍騎があるらしいと。良い機会だし特撮一度ちゃんと見てみようかなと。そしたらメチャメチャ面白いじゃないですか。しかも元ネタどころかまんまじゃねーか、みたいな。しかし特撮もこうしてちゃんと見てみると面白いもんだな、と思って、ライダーや戦隊の人気や評価の高い作品、好きそうなモチーフの作品なんかを色々と見るようになります。

 

そこで気付きます。「スーパー戦隊」の方はプリキュアと割とフォーマットが似ていて(1話完結。メインストーリーが進む以外はメンバーのお当番回でキャラを立てていく。追加戦士の盛り上がり等々)同じような感覚で楽しめる。今ではすっかりスーパー戦隊のファンです。

が、ライダーの方は龍騎の次に見た「アギト」は凄く面白かったのですが、あとはそこそこ楽しめたのが何本かある程度で、正直その後はリアルタイムのものを最近のライダーはいつもつまんないんだよなと思いながら惰性で見てる程度。そこで出会ったのがTVシリーズでなくネット配信で展開された(つっても私はレンタルで見たのですが)「仮面ライダーアマゾンズ」です。これがメチャメチャ面白かった。
ああ、なるほどそういう事かと。

 

龍騎」「アマゾンズ」はメインライターが小林靖子スーパー戦隊で好きな作品の上位に入る「特命戦隊ゴーバスターズ」も小林靖子
靖子にゃん面白いじゃねーか!といった流れがあるので、今回の「刀剣乱舞」も小林靖子が脚本やってるだけあって面白いよ、といった話が耳に入ってきたのでした。

 

刀の擬人化というのは知ってましたが、ああこれ歴史修正物の話だったのねというのを今回初めて知り、そりゃあ「侍戦隊シンケンジャー」に「仮面ライダー電王」やってる小林靖子が脚本やるのも納得。というかもう必然レベルだなという感じでした。

 

いわゆる「腐」向けコンテンツはこれが初体験。いや、昔「ヘタリア」とかニコ生か何かでやってるの少しだけ見た事あったっけかなくらい。なので、へぇ~こちら界隈はこういう風になってるのね、という発見が色々あってまず面白い。

 

刀剣男子達に指示を出す審神者(さにわ)というのがゲームにおけるプレイヤーそのものですよね。少しだけセリフはあるものの、基本的には顔が隠れてて見えない。
男向けコンテンツで言えば、ふた昔前のエロゲの顔が髪で隠れてて見えない主人公。似た構造で言えば「艦これ」における提督=プレイヤーなのですが、私はゲームを知らず、アニメだけ「艦これ」見てたのですが、作品内で一応存在はするものの、セリフは無しで秘書みたいなのが勝手に解釈した指示を出していくという形になってて、ただアニメ見てる限りでは無能な木偶にしか見えないという例がありました。それがアイロニー的な意味を持たせていたのかどうかなどの解釈や意図は「艦これ」よく知らない私にはわかりません。
そういったものと比較したときの今回の審神者の描写がもうメチャメチャ秀逸。刀剣男子の中でも主人公格の三日月宗近との会話が思いっきりメタで楽しい。「刀剣乱舞」のユーザー層が実際どんなものなのかはわかりませんが、腐向けのアプリコンテンツとかって割と普通の主婦とかもやってたりするらしいんですよね。意外と若い子だけではないらしい。

いわゆる刀剣男子は付喪神的な存在で、何百年も生きてるから三日月なんかは自分の事を年寄りと自覚している。(でもこのキャラ立てがメチャメチャカッコいい)そこで審神者がそなたに年寄りとか言われるとちとむずがゆい的な事を言ったりする。年齢層高めなファンはそこでふふってなるわけだけど、若い子はそんなに気にならずに流すだろうし、そういったメタ構造を自然なセリフにするだけでなく、三日月のキャラ立てにもなってるし、更には後の「継承」の部分にも重なってくる部分だったりと、ものすごく多層的な構造をさらっとやる小林靖子の脚本技術がホントに凄い。これはなかなか真似できないレベル。

 

多層的な構造と言えば、刀剣男子達と実際の歴史上の人物(信長とか秀吉)のビジュアルや芝居の差というのも明確に意図してやってるのが凄い。最初はコスプレホスト集団な刀剣男子を見て、あれ?これ馴染んで無いな、もしこれがマーベル映画とかだったら、コスチュームを原作生かしてやるにしても明度・彩度とかを低くしてリアリティを持たせて画面に馴染ませるんだけど、これはそこやってないな、と思って見てたんですけど、多分これギリギリを狙ってやってる。完全に同じ時代に馴染ませちゃうとダメなんですよね。彼らは歴史介入者という異分子ですから。かと言って本当にただのオタクコスプレ劇に割り切っちゃうのもしんどい。この辺りのバランスが凄く面白いなと感じました。

 

うん、でもまあ、あの半ズボンはねーけど。
いや、女性の欲望の具現化は全然良いんですよ。例えば逆に男性の欲望の具現化、エロゲやギャルゲ、ハーレム物アニメとかで言えば一体何カップなんだよって巨乳キャラであるとか、幼女みたいなロリキャラとか(年齢は18歳です!)実際に女性から見たら、あ~男ってバカだな、気持ち悪っ!みたいなのと逆の感覚って事ですよね。要はそれで、男から見るとあの半ズボンは相当に恥ずかしい。うひゃぁっ!てなるくらい眩しいものでした。

 

その流れで言えばラストカットの所。審神者が刀剣男子達と戯れる所って、男性向けコンテンツで言えばあれってエロシーンですよね?んほぉ~たまんねぇ~ってヨダレを垂らしながら見るシーン。そんなのを想像するととても面白く、そして微笑ましく見れました。フィクションなんだからそれでいいのです。そういう事を想像するだけでも汚らわしい、みたいな事は私は一切言う気ありません。汚い(と一般的にはされるような)欲望もない綺麗な人間なんて世の中にどれほどいるんだよ、っていう話。性癖なんざ違うのが当たり前。実際に犯罪とかはしないからせめてAVとかエロマンガとかの中でくらい許してよ、っていう。現実とフィクションに区別はつければ想像で何やったってかまわないと思う派です。

 

とまあ変な方向に話が行ってしまいましたが、アクションや特撮ドラマっぽい所は普通に面白かったし、何より三日月が凄くカッコ良かった。芝居がかったしゃべり方や佇まい、半ズボンキャラは笑ってしまっても、この人の衣装とかはすごく良いと思ったし、もしゲームやるなら間違いなく三日月をプレイヤーキャラとして使いたい、なんて思ったのでした。そういうゲームじゃないのか?ガチャとかで色々なキャラを引いて強くしていくとかそんな感じ?

 

あとは外道衆・・・じゃなかった、時間遡行者でしたっけか。劇中では呼ばれなかったと思いますが、見終わって色々調べてると「歴史改竄主義者」とかも書いてあって、ああもしかしてこれってそういう世の中に喧嘩売ってる実はエッジの利いた裏テーマみたいなのあるコンテンツだったのか?とか色々面白いです。
歴史のifだけじゃなくて、表層的にはそこをやってるように見せかけた政治思想の強い作品だったりするのでしょうか。個人的にそういうネタ好きです。

 

色々と制約の多い既存の人気コンテンツを使って、ここまでの脚本書ける靖子にゃんの手腕に脱帽。予想以上に面白い作品になってましたので、パート2とかあれば普通に映画館に見に行くと思います。
ただそれには一つ問題が・・・靖子にゃんって基本、続編とかやりたくない人なんですよね。最後にも出てきてましたけど、まだ刀剣男子は色々な人がいるっぽいので、全然違う主人公でまたお願いしたい所です。

 

※2020.2.3追記
コメントで教えていただきましたが、腐系と女性向けはまた別のもので「刀剣乱舞」は女性向けの方に分類されるという事でした。その辺りの違いもわかってないままに見た感想と思って読んでいただけると幸いです。


「映画刀剣乱舞」本予告