僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

最強のふたり

最強のふたり [DVD]

原題:Intouchables
監督・脚本:エリック・トレダノオリヴィエ・ナカシュ
原作:フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ『セカンドウインド』
フランス映画 2011年
☆☆☆★

 

<ストーリー>
不慮の事故で全身麻痺(まひ)になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を探していた。スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)は生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに面接にきた不届き者だったが、フィリップは彼を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。


去年「THE UPSIDE 最強のふたり」としてアメリカでリメイクもされた本作。リメイクされるくらいだから面白い作品でしょうし、名作としてどこかでタイトル聞いた気がしてたので、なんとなく見てみました。
似たような作品だと昔「潜水服は蝶の夢を見る」なんて作品もありました。確かあれもフランス映画だったかな。

 

でもそれより何より半身不随の障害と言えば、私の中ではクリストファー・リーブです。そう、かつてスーパーマンを演じた役者さんで、落馬事故の末、全身麻痺になりました。その後の著書で「車椅子のヒーロー」と「あなたは生きているだけで意味がある」と自伝的な本を出したのですが、そのどっちだったっけかな?2冊とも読みましたが、そこに書かれているある内容に、私はとても影響を受けています。

 

それは
「どんな時でもユーモアを忘れない事」
ロビンン・ウィリアムズと若手時代から交友があり仲が良くて、アカデミー賞か何かの受賞の時にリーブがスピーチをして、車椅子だからここに来るまで何年もかかりましたよ、的な自分の障害をネタにして笑いをとったというエピソードがありました。
こうしてブログ記事を書いてて、たまにネタっぽい部分が入るのは思いっきりクリストファー・リーブの影響だったりします。

勿論、ブログだけでなく普段の会話にもそいうのは生かすように心がけていて、基本的には人間嫌いな私ですが、コミュニケーション自体がそこまで苦じゃないのはそういうのがあるからだったり、なんて事を思い出してしまいました。笑いが入ると自然に距離が縮まるものです。
あと、リーヴが亡くなってから奥さんが出した「スーパーマンへの手紙」も良い本なので是非読んでもらえると私は嬉しい。

 

さてそんな自分語りはそこまでにして、「最強のふたり
いわゆる「実話物」でフィリップさんの口述書が原作という形になっていますが、まずその実話ベースみたいなものに対しての私のスタンスから。
例え「実話に基づく」的なテロップが入ろうが、むしろ実際に本当のドキュメンタリーであろうがそれをそのまま受け止めるという事は私はしません。映画や本、そういう形になっているのですから、それは何かしらの意図のある創作物ですし、例え本人が口頭で語ろうが、それらが全て本当かどうかなんてわからない。
全てに疑ってかかるとかそういうのじゃなくて、だれかの視点から見たものは、それはその誰かの視点でしかないからです。その辺は森達也とか、トーベ・ヤンソン(とゆーか「ムーミンパパ海へ行く」)の影響。そこの私のスタンスはご理解いただけると幸いです。

 

でもって、この映画を見て思ったのは「障害者の重たい話」じゃなく、障害そのものはあくまで物語の設定背景として描いて、割とそこよりも二人の「バディ物」として描いてある作品なんだなと。

 

生まれも考え方も違う二人が交わって、時に衝突しながらもお互いを認め合い、やがてはかけがえのない相棒になっていく、というのがあくまでメイン。

 

ひょんな事から介護する立場になったドリス。障害者に対しても物おじせず、言いたい事はガンガン言う。なんかね、私はこういう人は正直苦手。もし自分が介護される側だったら、ちょっと勘弁してよとつい言ってしまいたくはなる。
でもね、他の人とは違う魅力が実際にあるし、こういう人のありがたさっていうのも現実にはあるよな、なんて思えてしまうのがこの作品の面白い所だと感じました。

 

そしてフィリップも気難しい部分もあるし、芸術家肌のつもりではあのだけれど、あの車なんかを見る限り、ちょっとハメを外したいアウトローな部分も本質的には持ってたりするわけで、そういう所で通じあっていく姿は凄く上手く描かれてあるなと。

 

でもって面白いのは、この手の障害物としてはある意味定番とも言える「彼だけは自分を障害者としてではなく、普通の人間として見てくれる」みたいなセリフもあるわけですが、文通している意中の女性に関しては自分の障害を隠したがる。つまりフィリップも「障害者には誰でも多少の偏見がある」という偏見を自分も持ってたりするわけですよね。

 

共に笑い合い、友情を深めていくものの、雇用者としてフィリップは常にどこか上であろうとする。でもそのフィリップが持っていないものをドリスは持っていた、みたいな作りがとても面白い。

 

何度も言いますが、ドリスみたいな人は私は苦手です。でも、彼のような人も世の中には居るし、彼だからこそ出来る事は沢山ある。苦手だから遠ざけよう、と思う前に、世の中には色々な人が居るんだし、自分には持ってないものをその人は持ってたりするんだから、それを時には受け止めてみる事も大事かな、なんて事を考える。

 

よし、私も明日からちょっと苦手なあの人を受け入れてみよう。

 

 

 


・・・とは思わないけどな!
ゴメン、苦手な人はやっぱり苦手です。


映画『最強のふたり』予告編