僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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人生をしまう時間(とき)


映画『人生をしまう時間(とき)』予告編

監督・撮影:下村幸子
日本映画 2019年
☆☆☆

 

<ストーリー>
東大病院の名外科医がたどりついた最後の現場
それは、「在宅」の終末期医療だった。

超高齢化が進み、やがて多死時代を迎える日本。近年、国は医療費抑制のため終末期医療の場所を病院から自宅に移す政策をとってきた。同時に、家族に看取られ、穏やかに亡くなっていくことを目指す「在宅死」への関心が高まっている。しかし、家族との関係や経済力など事情はそれぞれ。「理想の最期」の前に、厳しい現実が立ちはだかることもある。
都会の片隅で、「在宅死」と向き合うベテラン医師がいる。埼玉県新座市の「堀ノ内病院」に勤める小堀鷗一郎医師、80歳。森鷗外の孫で、東大病院の名外科医だった彼がたどりついた最後の現場が、在宅の終末期医療だった。患者と家族とともに様々な難問に向き合い、奔走する医師や看護師、ケアマネージャーたち。一人ひとりの人生の終わりに、医療に何ができるのか。映画は、地域の在宅医療に携わる人々の活動に密着し、命の現場を記録した。

 

元はNHK BS1スペシャル「在宅死“死に際の医療”200日の記録」として放送されたドキュメンタリー番組に追加シーンや再編集を施して映画化。先日見た「さよならテレビ」とかと似た感じのパターンです。

 

こういったケースの医療現場を知る、という部分ではナレーションとか説明があった方が良かったのかな?ともちょっと思ったのですが、元のドキュメンタリーの方ではTV番組なので説明は色々入ってたようですが、映画の方ではそれを外したという形のようです。わざわざ自分から足を運んでお金を払って見る人なら、そこは元々こういうものに興味を持っていて自分なりに考えてくれるものなので、という事で、そこはきちんと映画として意識して作ってあるようです。

 

予告だけ見てリアル「ドクタースリープ」みたいなものなのかなと思ってたのですが、意外と前半の方では「死」のテーマと向き合うというより、在宅医療の様子が淡々と描かれていって、あれれ?思ってたのとは少し違ったかな?とも思ったのですが(勿論ドクタースリープの超能力バトルみたいなのがあると思ってたわけじゃないぞ)死の瞬間だけでなく、そこに至るまでのそれぞれの家族の在り方の所も重視して描いてある、という感じでした。

 

残された家族に迷惑をかけたくない、みたいな気持ちもある半面、長年住んで慣れ親しんだ自宅で最後の時を迎えたい、というのもやはり分かる。

 

で、映画だけでなく老人介護とかもそうなのですが、ただ血のつながった家族だから、契りを結んだ夫婦だから、とかだけじゃなく、今まで育ててもらった恩があるんだからそういう人を無下には出来ないよ、という素直な気持ちがね、大事なのかなぁと常々思っております。逆に言えばね、そういう歳のとり方をしたい。

 

親なんだから、子供なんだから、夫婦なんだからではなく、尊敬できる人だから、でありたい。死を迎える側も、送り出す側もどちらの立場・視点でもね。

 

この映画を見たいと思った一番の切っ掛けは、予告見て、そこで寝たきりの老人を介護する娘さんが、そっちはそっちで全盲のかたで、いやこれは相当にキツイ状況だなぁと興味を持ったのが理由です。これゲームとかで言えば「詰み」の状況みたいなもんじゃねーかと。ただ言葉で言えば簡単ですが、実際こういう問題がいくつも重なっているケースなんて世の中には沢山あるんだろうなと。

 

そちらの家族は他の家族と比べても割と多めに尺がさかれていた印象ですが、一緒に住んではいないものの、妹さんもおられるようでしたし、気にかけてくれる人は少なからず居るようですし、そこは「誰も知らない」みたいな状況では無いいようで、厳しい状況・環境である事に変わりはありませんが、少しだけほっとしました。娘さん、ちょっと萌え声で喋り方も凄く丁寧に喋られる方で、なんか微笑ましかった。

 

頑固じいさんみたいな人も居れば、よく出来た老夫婦もあったし、老人だけでなく、娘が末期がんで親が娘の最後を送り出すようなケースもあり、様々な例がとりあげられます。

 

医療チーム側で中心の小堀医師ですが、患者だけでなく介護する家族のほんのちょっとした様子やその変化とか、そういう細かい所まで「気付き」が凄い。そしてコミュニケーションの取り方が抜群に上手い人でした。ここもまた医療うんぬんとは関係なく、人としてこうありたいなと思わせてくれる部分でした。

 

私もね、仕事で営業的な面もあるし、立場的に管理者でもあるので、こういう人にならなきゃな、とお手本にしたい感じです。

 

なんだろう、死も人間の営みの中で当たり前にある物と言うのは簡単なんだけど、介護やお金の問題はともかく、人としての物語がここにあって、じゃあ自分はどうなのかな?というのを改めて突き付けられる感じでした。

 

ただね、今の世の中が世の中じゃないですか。日本が今の状況くらいで収束してくれればまだいいですが、先も見えない状況で、もしかしたら死の概念が少し変化するくらいに世の中が変わっちゃうのかな?くらいの不安もあります。9.11や3.11、それに匹敵するくらいコロナの影響で意識の変化が生まれるようになちゃうのかなと(意識の前に政治が変化してくれなきゃ困るけど)そんな時代の変化なんかも肌で感じながら向き合った作品というのもまた思い出になりそうです。

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