僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ

ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ (ShoPro Books)

THOR & LOKI:BLOOD BROTHERS
著:ロバート・ロディ(作)エサッド・リビッチ(画)
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2016年
収録:LOKI #1-4(2004)
 ,JOURNEY INTO MYSTERY #85(1962)#112(1965),
 THOR Vol.3#12(2009)
☆☆☆☆★

 

あらゆる物語には、二つの側面がある。
つまり、光あるところに闇があるように、
雷神ソーには奸智の神である義弟ロキがいるのだ。
オーディンの恥ずべき息子が、
アスガルドの物語を自らの視点で語る時が来た!
ロキの飽くなき権力欲とアスガルドの神々から受けた屈辱、
そして兄と冷淡な父に対する根深い羨望と怒り―
そのすべてが、ここに新たな意味を獲得する。

 

ロキのミニシリーズをメインに、ロキ初登場号と出生の秘密が明かされた話を収録。あとはトラジンスキー期(女体化ロキのやつです)から1本だけ収録されてますが、そちらはヴィレッジブックスから通販限定でシリーズ全3巻出た方にも入ってるので、前後の流れも含めて読みたい方はそちらをチェック。

 

まずは
▼ロキ#1-4
映画でトム・ヒドルストンが演じたロキのイメージが強い人は面喰ってしまうかと思われるビジュアル。基本的にはずっと悪役として描かれてきたキャラなので、アーティストによっては容姿醜悪な小男的に描かれる事も多いので、今回のロキも見た目はそっち方向。歯も隙間だらけで小汚いおじさんというビジュアル。

 

美麗なペイントアートながら、あからさまにイケメンとは程遠い姿で描かれてますのでその辺りはご注意を。ただ、ストーリーがメチャメチャ面白い。

 

いわゆる正史とは別に描かれるマルチバース…というよりホワットイフ、もしもの世界に近いのかな?ロキがアスガルドを制圧して、兄ソーも父オーディンもロキの手により監禁されてしまっている状態からストーリーが始まります。

 

遂に自らの野望を叶えたロキ、だがしかし、彼の胸の内に秘めた葛藤。本当にアスガルドの王になりたかったのか?本当はただ兄に、そして父に自分を認めてもらいたかっただけなのか?シフやボールダーと自分の違いは何なのか?

 

実際に王になったとしても、何一つ勝利の喜びなど得られずひたすら自分の愚かさ、見難さ、小ささのみが自分に付きつけられる。コンプレックスをまき散らし当たり散らしても、敗者となったソーらの蔑視の眼差し一つで、より追い込まれていく。

 

他の可能性のいたる所の世界を覗いても、自身の役割はもはや宿命づけられたものでしかないのか?ヘラに唆され、ソーを殺せと命じられても、本心ではソーを殺す事が目的では無いロキはそれすら決断できずに追い込まれていく。その上、そのヘラでさえ・・・と戦闘シーンなど全く描かれずに勝者であるはずのロキがあまりにも弱弱しく焦燥していく様が本当に凄い。

 

敵対しながらも、本当に自分と向き合ってくれていたのは、唯一ソーだけだったのか?それに気付く事ができたならば、今こそ赦しを得ようとした所でこのオチ。

 

MCU版のロキもメチャメチャ良いキャラしてますが、それとは全く違うアプローチで描かれるこちらも本当に面白い。血を分けた兄弟の…って血は繋がってないか、でもそういう兄弟の愛憎劇みたいなのが、運命の兄弟って感じでとても面白く読めました。

 

友達が映画のソーを見て、あの作品見ると実際に兄弟がいる身としては色々と心を抉られるものがあって痛いんだよね的な事を言っていて、ああ確かに実際に共通する環境がある人と無い人では、見る視点がちょっと変わってくるって言うの、絶対あるよね的な話をした事があります。

 

映画でも本でも何でもそうですけど、やっぱり人はみんな違っていて、だからこそ、そういう背景も込みでのその人なりの視点って面白いですよね。他人の感想って、共通点をみつけて、わかるわかるそうだよね、っていうのも勿論面白いんですけど、自分に無い視点で、なるほどそんな見方や感じ方があったんだっていう違いを実感するのも、また逆の面白さがあります。

そんな視点の違いの面白さを改めて感じさせてくれる作品でした。
う~ん、パララックスビューです。

 

そして
▼ジャーニー・イントゥ・ミステリー#85
こちらはロキの初登場号。#83がソーの初登場でいわゆるそれが第1話ですので、3話目にしてロキも登場。スタン・リー(作)とジャック・カービー(画)のレジェンドコンビ。


前記事の「勇者ソー」で触れた「マイティ・ソーアスガルドの伝説」と違ってこちらは当時の4色刷り?みたいなやつのままですので、やはりこういうのは古い物は古いままレトロとして楽しみたいので、これが良いです。

 

初期の話ですので、ドナルド・ブレイク医師が杖を叩くとソーに変身!という時代の話です。ロキも壮大な物語の始まりとか、兄弟としての葛藤とかそんな深い感じで無く、牧歌的で悪戯の神様という小悪党程度として描かれてます。

 


▼ジャーニー・イントゥ・ミステリー#112
のこちらが本編の方では無く、同時併録されていた5Pの「テールズ・オブ・アスガルド」の方のみの収録で、オーディンが霜の巨人ラウフェイと戦う話になっていて、そこで子供を拾い、それが後のロキであるっていう、いわゆる設定バックアップ話。「アスガルドの伝説」には入って無い話ですのでかぶりではないです。

 

最後が
▼ソー#12
J・マイケル・トラジンスキー(作)オリビエ・コイペル(画)

ラグナロク」が終了してアメリカにアスガルドを再建する形になった、トラジンスキー期の12号のみを収録。ヴィレッジブックス「ソー Vol.2-邂逅-」にも収録されてますので気になる方は全3巻のそちらの方をどうぞ。とゆーかそこに至るまで散々ラグナロク騒いできてたので、ラグナロク編の方がむしろ読みたいぞ。

 

ロキが女体化してますが、その後は「ヤングアベンジャーズ」でキッド・ロキとして子供化、さらには「ロキ:エージェント・オブ・アスガルド」でイケメン化とかしてたりするのを日本語版でもある程度は読めたりしますのでロキファンならその散々な弄ばれっぷりを堪能しましょう。そういうのも人気者が故ですから。


忘れちゃいけない、古い所では「アベンジャーズ」の1号でも映画と同じくロキがアベンジャーズ結成の切っ掛けにもなってて、そちらも日本語邦訳版があったりしますので、またいずれ取り上げたいです。

 

今回みたいな短編もあれば、何十年も続くメインストーリーもあるし、ロキの遍歴みたいに色々なバリエーションを楽しんだりと、様々な楽しみ方が出来るのもアメコミならではかと思います。

 

アニメ「勇者ソー」に続いて、またこちらも抜群に面白い作品でした。

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