僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

新幹線大爆破

新幹線大爆破 [DVD]

監督・脚本:佐藤純弥
日本映画 1975年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
新幹線ひかり109号に爆弾がセットされた。その爆弾は時速80キロ以下になると自動的に爆発する。犯人は500万ドルを要求し警察は取引に応じるが逮捕に失敗…。

 

乗り物パニックサスペンス映画の金字塔。日本映画のみならず、世界にも影響を与えたと言われるこちらの作品。「スピード」なんかもその系譜ですね。

 

宇多丸スクリプトドクター三宅さんがおっしゃってましたが、その乗り物と共に物語の推進力も停滞しないので(車両が止まらない限り、状況が常に動き続ける)名作になりやすい、といった映画の構造にも関わる面白い部分。

 

路線の切り替えとかのタイムサスペンス、現場と指示側の葛藤、二転三転する物語展開と、後の作品にも影響を与えているのもよくわかる、面白い作りでした。

 

「タワーリングインフェルノ」とかパニック映画のヒットを見て、日本でも二番煎じでそういうのを作れ!という所から始まったらしいこの企画。ものすごく東映らしい出発点です。スーパー戦隊とかでも、流行ったものをモチーフとして取り入れたりとか、今でも東映の社風は大して変わってません。

 

ただ、予想してたのと違ってたのは、高倉健演じる犯人側三人の事情とかが徐々に明かされて行ったりする中で、学生運動くずれだとか、高度成長の影にあったもの等、意外と社会派要素も強い。そもそも「新幹線」ってのも万博とかと同じで、日本の象徴という意味合いも強いので新幹線の話にしたらしい。高度成長経済、技術信仰、安全神話みたいなものへの皮肉。単純なパニック映画と思って見たのですが、実は「太陽を盗んだ男」とか、そっち系の作品でした。ラストも思いっきりATGとかアメリカンニューシネマ系。

 

海外版では犯人周りの描写を無くしてパニック物のエンタメとして売って、それがヒットしたらしいのですが、そうしたい気持ちもわからなくはない(2時間半と長尺ですし)そしてそれでも面白い作りにはなってると思う。でもやっぱり批評性とか社会性みたいなものがあってこそ、歴史に残る作品になったんだと思うし(ただ、あまり日本ではヒットはしなかったとか)個人的にも社会性のあるものの方が作品としての価値は上がる、とは思うかなぁ?

 

ただこれ、予告がひどいです。


新幹線大爆破(予告編)

時代と言ったらそれまでかもしれませんが、ひたすら恐怖を煽る文句を並べて、今見ると不謹慎極まりないです。今だと多分、試写会での評論家とか雑誌の評価を並べて、「最も恐ろしい映画」とか恐怖を煽るにしてもそんな風になるんでしょうね。やってる事の本質はさほど変わらないにしても、洗練されてきているというか、規制が厳しくなったというか、世の中少しづつでも変わってきてるんだなと、時代を感じます。

 

時代と言えば指令長役の宇津井健は、今だったらこれ佐藤浩一がやる役だよね?とか色々想像できてそこも面白い。高倉健とか千葉真一の役は今だと誰でしょうか。

 

こんなご時世ですから「復活の日」とかも再注目されてるらしいのですが(私はゾンビ物の亜流として昔見ました)この辺の時代の邦画って私はほとんど見て無い。ブログ再開するここ1~2年前に、まあ勉強がてらに、とか思って「仁義なき戦い」とか「八つ墓村」とか色々見てました。好きかどうかと問われれば、そんなに好みではない分野ですが、歴史に名を残す作品はやっぱりそれだけのものがあるし、今後も少しづつですがそういうの拾っていければなと思います。

 

有名だけど見た事無い映画なんて山ほどありますよね。映画館で新作が見れなくなってしまっていますが、過去に遡れば見るものなんて星の数ほどありますので、決して暇はしておりません。