『世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』予告編
原題:El Pepe, Una Vida Suprema
監督:エミール・クストリッツァ
アルゼンチン・ウルグアイ・セルビア合作 ドキュメンタリー映画 2018年
☆☆
<ストーリー>
収入の大半を貧しい人々のために寄付し、質素でありながらも心豊かな暮らしを実践してきたムヒカ。国民のより良い生活のために自己犠牲をいとわず、予想外の政策を打ち出す彼の姿に、「世界でただ1人腐敗していない政治家だ」と直感したクストリッツァ監督は、2014年から撮影を開始。大統領の任期が満了する感動の瞬間までをカメラに収めた。極貧家庭に育ち、左翼ゲリラとして権力と戦い、13年に及ぶ勾留生活を経て、大統領として国民に愛されたムヒカの波乱万丈な人生を追う。
南米ウルグアイ。う~ん、まったくピンと来ない。サッカーが強い国?なんて南米全体的なざっくりしたイメージですし、私は世界各国のおおまかなイメージとかはその国の映画とか、その国が舞台になっている映画とかで、へぇこんな感じの国なのね、みたいなのを知って行く事が多いのですが、ウルグアイはさっぱりわかりません。
ウルグアイの第40代大統領のホセ・ムヒカさん、2012年の国連のスピーチで消費社会への批判を投げかけた事で世界に注目されるようになったらしいです。日本でもそれを元にした絵本なんかがヒットしたらしいのですが、私は全然知りませんでした。来日経験もあり、その辺りを軸にした日本作のドキュメンタリー映画「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」というのも、今年のほぼ同時期に公開されたようです。私の通ってる映画館ではそっちやってないのですが、それ知ってたらむしろそっちの方を見たかったかも。
そんな何も知らない人が何故これを見たのかと言うと、知らないから見た。予告編で、へぇ~こんな人が居るんだな、政治ドキュメンタリーとか面白いの多いし、上映時間も74分と短いから勉強がてらにさくっと見ておくか、という感じ。うん、映画館は観客私一人でした。たまにあるけどスクリーンひとり占め。
この手の、よくはわからんけど一応見ておくか、系は無料券使っちゃう事もあるんだけど(私が行くとこは6回ごとにスタンプたまって1回無料で見れる)使わなくて良かったよ。流石にタダでスクリーン一人占めはちょっと申し訳なくなるので。
元は左翼ゲリラ出身で、闘争の果てに刑務所にも10年以上入ってたという経歴。ただ、それも富裕層から富を奪って貧民層に分け与えると言うリアルねずみ小僧な人。大統領就任時期も、自分の収入の7割を貧民層の救済に使うと言う、まさしく根っからの左派な人です。どこかの国の総理大臣様とは大違いですね。
これが正しい、国の代表に立つ人はこうしなければならない、とまでは思わないけど、実際に国民が彼を指示して、就任の5年間で国が良くなったのならやっぱりそれは凄い事。私も政治思想としては左派ですが、(そんなにガチなやつではないけれど)こういう風に出来る国もあるんだな、と知る事が出来たのは救いです。
ただ、映画として、ドキュメンタリーとしては、監督のアミール・クストリッツァが彼の事を知って「世界でただ一人腐敗していない政治家だ」と彼の事を敬愛している上で撮ってるので(会話シーンで本人も映ってます)、そこは正直面白味があまり出ない。ムヒカの過去や、それをずっと支え続けてきた奥さんとか、それがこの人間を形作っているものなんだ、という話なのですが、最初からムヒカさんの事を好きになってこのドキュメンタリーを作った感じなので、なかなかそこは映画的な面白味は出にくい。ほとんどプロモーションになっちゃってるというか。
被写体を好きになるのはドキュメンタリーでは当然と言えば当然なんだけど、そこが作品を作る原動力にこそなっても、作品の中に作り手の葛藤なり煩悶なりが無いと、なかなか一つの作品としての面白味は出ないかなぁと感じてしまいました。
結局、左派映画を左派が観に行って、うんうん世の中はやっぱりこうじゃないとダメなんだよ、みたいなのって別に悪い事じゃないのですが、あんまり生産性が無いかな?みたいなのは昔からよく思ったりもしますので。