僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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陶王子 2万年の旅


映画『陶王子 2万年の旅』予告

英題:Ceramic Road
監督:柴田昌平
日本・中国合作映画 2021年
☆☆☆

<ストーリー>
陶磁器の2万年におよぶ歴史を通し、壮大な人類史をひも解いたドキュメンタリー。縄文、中国、メソポタミアギリシャ、エジプト、ヨーロッパへと人類の知恵を集めながら発展し、現代ではファインセラミックスとして人類を宇宙にまで連れて行くことになった“焼き物”=“セラミック”。陶磁器でできた器の精霊・陶王子をナビゲーターに、土器から陶磁器、さらにファインセラミックまでの変遷を追い、人類の果てない探究心と進歩を描き出す。


陶磁器の歴史を探求するドキュメンタリー映画です。最初にNHKで放送されたものに追加カットを加えて映画化。陶器で作られた人形を各時代の陶器で再現し、陶器の歴史をファンタジックな要素と重ね合わせ、陶器のみならず、人の歴史を俯瞰する。

 

ええと、まず今年の映画の劇場鑑賞はこれで2本目です。仕事がクソ忙しくて時間も無ければ疲れきってるのと、諸事情あって仕事のミスを自腹で身銭を切って今年になってから10万近く飛んだので、ちょっと節約中で半年くらいは映画館自粛中です。いやプリキュアとかどうしても見たい奴は観に行くけどさ。

 

そんな中で柴田昌平監督の最新作という事で、お世話になった方からのお誘いもあり監督トーク付きの上映回に足を運んで来ました。柴田監督の「ひめゆり」が山形で自主上映の形で上映されたのが切っ掛けで、そこから色々と御縁もあって、2回目の上映の時には私もお手伝いさせていただいた、という経緯もあるので、その辺りも含めて特別な縁があります。トークショー後に交流会があったんですけど、そちらにも誘っていただきましたので、そこで監督とも直接色々とお話をさせていただきました。

 

企画の発端は、監督の過去作を見て、フランス人の陶磁器アーティストから陶磁器についてのドキュメンタリーを撮ってもらえないか?という所から始まったそうです。監督も、その時は陶磁器の事とか全然詳しくなかったものの、そこから色々と勉強をしていって、テーマを見出していったそうな。

 

普通に考えると、陶磁器に纏わる文化背景の方に焦点を当てがちですが、フランス人発端の企画で、その後中国も制作に加わったので、文化背景を中心に組み立ててしまうと、各国の文化や価値観の違いも出てきてしまうので、日本だけで見られる作品では無く、最初から世界各国で上映する事を踏まえて、あえて陶磁器文化ではなく、もっと本質的でグローバルな視点として、こういう焼き物の器がどう進化してきたのか?という所でまとめたそうです。ただそれだと地味な教養番組になりそうだったので、「陶王子」という要素を入れて、のんさんにナレーションを依頼、という形で一つの作品として見られるようにした、という感じだそうです。

 

そう、ドキュメンタリーって見慣れてる人には今更な事ですが、ただ事実をそのまま映し出すだけではなく、2時間とかの尺に収めるには何かしらテーマなりストーリーを組み立てなきゃ作品になんかならないわけで、そういう意味ではフィクションの劇映画とそこまで大きな差は無い。

 

見る方も作る方も、元々それに関心があって、っていうのだとここが伝えたい所・見所だって結構ハッキリしてるんですけど(その分作為的になるけれど)そうでないものだと結構ボンヤリしてて、素材の中から何かを見出すって形になって、それはそれでまた別の作り方になるよな、とか、制作背景を聞いててそこの部分が面白かった。

 

私も陶磁器とか全く興味の無い文化・物だったんですが、作品内のこういう形で焼き物ってのは世界各国に伝わりながら進化していったんだな、という面白さと、劇中には描かれていない部分でトークショーとか交流会で話聞いてて面白いなと思ったのは、最初は焼き物から生まれた器がやがて金属におきかわっていって、今はプラスチックになっちゃってるので、陶磁器の市場がどんどん狭まってきているという問題もあるのだと。陶磁器は壊れるけど、金属やプラスチックは簡単には壊れないですからね。ああ、なるほどそうだなと思いつつ、やがて壊れてしまう可能性があるものだから大事に使うし愛着も生まれるのでは、っていう所は面白いなと思いました。

 

お茶碗とかマグカップとかそうですもんね。その手の物の個人用って結構日本独自のものであって、海外ではあまり個人の誰々用っていうのは無いそうです。大事に、してたお気に入りのお皿とか欠けちゃったりすると、ちょっと悲しいですよね。私も何かのポイントとかためてもらったムーミン絵皿とか割れちゃって悲しかった思い出が。


私もろくろとか確か一度何かで回して湯呑みたいなの作った事あったような?ぐらいの記憶しかなく、陶磁器うんぬんは特に今まで深く考えた事無かったですが、こういう歴史背景とか、金属とかプラスチックと比べると、土・粘土から生まれる陶器ってよりオーガニック的な物だよな、なんてつい考えてしまって、そこはそこで面白い部分だなと、新しい視点を与えてくれる良い切っ掛けになりましたとさ。

 

 

ついでに、この映画じゃ無くて「ひめゆり」の方で思ったのですが、私が最初に見たり上映に関わった時は「オーラルヒストリー」なんてジャンルの事は
全く知りませんでした。でも「戦争は女の顔をしていない」でオーラルヒストリーってのをそこで初めて知って、あれ?「ひめゆり」ってまさしくオーラルヒストリーとして作られた作品だったじゃん、とか今になって知りました。せっかくなので監督に「戦争は女の顔をしていない」って最近漫画化されてちょっと話題になったんですけどご存知でしょうか?って聞いてみたのですが、初めて聞いたっておっしゃってました。

 

ひめゆり」と、その時は「ミリキタニの猫」ってドキュメンタリー自主上映企画だったので、どちらも戦争絡みの話という事で、あの時は結構な時間をかけて戦争についてちゃんと学ばなければと勉強会をやったんですね、あの時の勉強って凄く私の中でも大きくって、知識としては結構あの時に勉強したものが今でも自分の考え方のベースにもなってたりして、とてもありがたかったなぁと思います。ついつい思い出話を書いちゃいましたが、こうして縁や知識が色々と繋がっていくのはとても面白い部分です。

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