僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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JUNK HEAD


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ジャンク・ヘッド
監督、原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、映像効果:堀貴秀
日本映画 2017年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!

 

巷で噂のジャンクヘッド、こちらでも公開されたので見て来ました。いやもう日本映画史に必ず刻まれる伝説的なカルト映画の誕生と言っても間違いないので、映画好きな人は必見。自分はこの作品最初に映画館でやった時に観に行ったよ~って言えるようになるので、これは映画館で見ておきましょう。

 

いわゆるコマ撮りのストップモーションアニメという奴です。
「PUIPUIモルカー」とかちょっと前に流行ってましたが、私の中ではコマ撮りアニメと言えば「チェブラーシカ」かな?ハリーハウゼンとかまで行くと見て無いです。クレイアニメとかも含めると、やっぱり珍しい感じが面白くて何本か見てる作品はありますね。「メアリー&マックス」とか当時劇場で見て物凄い傑作だった記憶がある。あとは元々ニール・ゲイマンの原作が好きだった「コララインとボタンの魔女」も当然良かったし、スタジオライカなら「クボ」がやっぱり面白かった。

 

ただ、スタジオライカくらいまで行くと、正直あまりにもクオリティが高すぎて、CGアニメとほぼ同じような感じに見えてしまうのが難点。メイキングとか見てとんでもない事をやってるなと後から感心する感じ。

 

そこ考えるとジャンクヘッドは手作業感が手に取るようにわかるのが素晴らしい。いやこのカットとかどうやってとってるんだよっていう、カメラとかカット割りとかメチャメチャ凄いのですが。

 

実は私が一番感心したのはそこです。元はアニメーターだったとかじゃないみたいなんですよ。どこまで本当かわからないですが、素人が一人で自己流で作ったらしい。それでこのカット割りとかって、正直とんでもないセンスだなぁと。

 

私も映画オタクですから、もし自分が映画を撮るならとかまれに想像したりする事もあるんですね。でもね、ストーリーとかならまだしも、カットをどうやって繋いで行くかとか、どういう画面構成にしたらいいのかとか、そういう所が全く想像つかない。映像の原則的な本をかじってみたりした事もあるけど、全くと言って良いほどイメージが湧かないんですね。

 

映画に限らず、アニメとかもそうですが、映像を作る人って完成した絵をイメージしてそこに近付けて行くっぽいじゃないですか。このジャンクヘッドの人も、その辺りのセンスが飛びぬけてるんでしょうね。いやもう凄いとしか言いようが無い。

 

最初は素人で映像の作り方とかもわからなかったらしいですけど、新海誠って奴がどうやらほぼ一人でアニメを作ったらしい、だったら自分も一人で作れるんじゃね?と思った所が切っ掛けだったとか。ちょっと面白い。でもって作り上げたこのセンスがもう本当に圧倒的に凄い。

 

更に面白いのが、当初はこの作品も5年かけて30分くらいの中編をまず作って、クラウドファンディングで製作費を募るも失敗。その後何とかスポンサーがついて、そこからいくらかスタッフも雇って更に2年で今回の長編を完成させたと。そこでようやく海外の映画祭で評価されて(ギレルモ・デル・トロとかが絶賛)ようやく日本でも今回の劇場公開に繋がったと。作品のビジュアルも奇妙奇天烈ですが、そういった背景も面白いですよね。

 

単純にデザインとかそういうのは割とどこかで見た事のあるものの寄せ集め感は割と強いのですが、決してそこでただのパクリだよねと一蹴するには惜しい感じで、作品全体として強烈な個性を放つ作品になってるのが凄い所。

 

いわゆる可愛い感じじゃ無く、グロキモみたいな感じですので、なんかもう最初からカルト作品っぽくなってますが、そこが味なのでしょう。

 

ラストバトル的なアクションシークエンスでクライマックスを迎えますが、3部作構想で、ストーリー的には途中で終わる感じ。かと言ってそこで物足りなさを感じるわけではなく、いやもうこの濃縮された濃い味付けは十分に味わえたとちゃんと満足出来る作りです。

 

この作品とは全く関係の無い話ですが、私はPS1の「クーロンズゲート」というゲームが大好きでして、陰鬱で雑多な九龍城と陰陽とか木火土金水の五行思想なんかが描かれてたカルト作品なのですが、なんかね、ああいういかにもなカルト作品!みたいなのと近い匂いを感じて、この作品も伝説的なカルト作品として語り継がれていくんだろうなと思うと、なんかそんな伝説の作品的な物に出会えて、そこも貴重な体験でした。

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