僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス MovieNEX(Blu-ray Disc+DVD)

原題:DOCTOR STRANGE IN THE MULTIVERSE OF MADNESS
監督:サム・ライミ
原作:MARVEL COMICS
アメリカ映画 2022年
☆☆☆☆★

 

ディズニープラスで早くも配信開始しました。
え?先日映画館で見て来たばっかなのに?有料のプレミア配信とかじゃなくて?普通に見放題配信なのこれ?だってMCUの次作「ソー:ラブ&サンダー」がまだ公開される前にもう配信されちゃうんだ!?と、結構ビックリな感じです。

 

こんなに早く配信されちゃうなら、配信待ちで映画館に行かないよ!っていう人も中には出てくるんじゃないかなとも思うけど、じゃあ自分がそうなるかと言えば、お金を払ってでも少しでも早く見たい!PCのモニターじゃなくちゃんとしたスクリーンで見たい!と思うので、配信待ちになる事は無いと思うし、逆に全部サブスクで見たよっていう人でもさ、ハマってしまえば、最新作は映画館で見ておきたいとかってなるパターンも中にはありそうだし、今の時代ならではなのかな?という気はします。

 

私の世代では無いですけど、昔はレンタルビデオも無かった時代は、古い映画を見る為に名画座に通ったんだよ、みたいな私よりも前の世代の話も、それはそれで聞いてて面白いですけど、時代によって違いが出るのは当たり前の話。

 

配信で「ブラックウィドウ」とか「エターナルズ」とかも実は見返してはいたものの、大きな感想としては変わって無いので、ブログ書くのはあえてスルーしてたのですが、今回「ストレンジ2」を見返してちょっと視点の変化と、書きたい事があったので、短いですが再度取り上げてみようかと思いました。

 

基本的な感想は変わってません。サム・ライミらしい作品である部分は評価しますけど、ワンダとかイルミナティの面々とか、ヒーローであった存在を落とすという部分に関してはどうしてもひっかかりを感じてしまいます。

 

前回の感想で書いたのですが、私はMCUはエンタメでありながら社会的なテーマを扱っている所がこのシリーズの一番好きな要素で、「ブラックウィドウ」「シャン・チー」「エターナルズ」とそこは申し分が無かったと。「ストレンジ2」はそこが弱いのが不満で、あえて社会性のあるテーマ的な部分を見出すなら、「今の自分をちゃんと肯定する事」だったかなと前回の感想で書きましたけど、改めて考えるとさ、実はそこをきちんと描いてるのは大きいんじゃないかって、時間を少し置いて再見時にはより感じました。

 


あのね、「今の自分をあなたはちゃんと肯定してあげられますか?」って問われて、「もちろん!」って答えられる人って、実は今の時代って結構少ないんじゃないかなって思えたんです。

 

たまたまなのかもしれないけど、ツイッターのタイムラインとかで、やたら病んでる感じになってる人が出てきたり、先日会った友達とかも、最近ちょっと心の調子が悪くてとか言ってたりして、う~んこれはどういう事だろうと。

 

私はプリオタなのでそこを例えに出しますけど、コロナ禍という時代性も加わって、近年のプリキュアは「この大変な時代をどう生き抜くか」みたいなテーマもほんのり孕ませてきてたりします(私みたいな重度のオタクにしか見えない程度にですが)子供向け番組ですらそんな事をやってたりする時代。

 

オタクの間で「異世界転生物」が流行ってるのって何故だかわかりますか?
マトリックス」と同じで、現実は辛いから「ここではないどこか」で自分は幸せになれるんだっていう逃避願望ですよ。逃避願望って言うとネガティブに受け取る人も居るでしょうから、少し違う言い方をすれば、ここ(現実)じゃもう手詰まり、行き止まりなんだから、ここじゃない異世界にでも行かなきゃ幸せなんか手に入らないんだよっていう絶望ですよね。

 

「親ガチャ」とか言う言葉が話題になるのもそう、Sレアとか引けなかった人は、世の中って最初からもう無理ゲーなんだよ的な諦めが世間に漂ってる。

 

陰謀論とかQアノンみたいなものもそうです。そっち方面調べてて、これは面白いなって話をみつけたんですけど、何で陰謀論とかに走るのかと言えば、真面目に歴史を勉強してきた人に今更もう追いつけないけど、陰謀論ならそれは違うよ、本当の答えはこっちで貴方たちは間違ってるんですよって、たった数時間インターネットで読んだだけの浅い知識で何十年と真面目に勉強してきた人の事を否定できるから嬉しかったって言ってる人が居たんですね。

 

陰謀論にハマる人の全員がそうなんだとは言いませんけど、コロナワクチン否定者とかもそうでした。何十年も専門的な勉強をしている人の意見なんか調べたり読んだりもせず、ネットで見た30分で読める記事で物事を知った気になってる浅さ。

 

「倍速視聴」問題なんかもそうかも。タイムパフォーマンスとか言って、倍速でコンテンツを消費して、そこで知った気になる浅さ。そりゃあ何十年も映画見て来た人の積み重ねに勝てるわけありませんよ。もしいつか倍速で同じ本数に追いついた時に、それが同じ財産になるとでも思ってるんでしょうか?冷静に考えれば、そんなはずないじゃんってわかるのにね。

 

勿論、こういうのは全部社会学の範疇にある問題です。「生きづらさ」の問題に関しては、私はNPOで結構何年も勉強してきたので、得意とまでは言わないまでも、それなりの知識はある。

 

「ここではないどこか」「今の自分じゃ無いもっと出来たはずの本当の自分」


マルチバースってそういう事ですよね。

 

映画でもストレンジ先生、最初からその辺を問われますよね?ストレンジが選んだあの選択しか本当に道は無かったのか?映画では医者の元同僚から、自分が消えてる5年の間に2匹の猫が死んでしまったって言われますけど、示唆までは行かなくとも、トニーとナターシャ(あとヴィジョンもね)を犠牲にする選択肢しか本当になかったのか?と問われているようにも思えます。

 

或いは「ホワットイフ」でも闇落ちストレンジやってましたけど、愛するクリスティーンと結ばれる選択肢は無かったんだろうか?というのは映画全編通して描写される部分です。

 

本当は違う選択肢はあったかもしれない、もっと幸せになった自分が居る世界線マルチバースがあるかもしれない。ワンダもそうやって病んで行く。

 

その気持ちはね、物凄くわかるのです。私は良い歳こいて一人身で、気楽で良いなと思ってたりする半面、寂しいなと思ってしまう時もそりゃああるわけで、昔の恋愛とか思い出して、あの時に違う選択肢を選んでいれば、もっと違う人生になったのかもしれない、なんて考える事だって、そりゃあありますよ。

 


スパイダーマン:NWH」や、或いはそのベースとなった「スパイダーバース」なんかでは、マルチバースを使って「君は一人じゃ無い」という事を描きました。

 

その次の段階として、今回の映画のマルチバースは「ありえたかもしれない自分」みたいな描き方をしてあって、ワンダもストレンジもそこに囚われてしまう。

 

失敗もした、決してベストな選択肢では無かったかもしれない。愛する人と結ばれるような人生を選ぶ事は出来なかった。完璧じゃ無いかもしれない。でも、それが自分の選択だったのだし、良い事ばかりじゃないけれど、決して悪い事ばかりでもない。皆には色々言われるけどさ、自分なりに自分に誇りを持って自分の人生を生きてるよ。今の自分の事は嫌いじゃ無い。

 

こんな主張ってさぁ、今の時代には物凄く響くんじゃないか?これって凄く無い?と思い直したんです。

 

なんかさ、今の自分をちゃんと肯定してあげようよって思うんですよね。病んじゃう人ってさ、きっと理想の自分があって、そこに届いていない自分に腹が立ったり、情けなく感じたりするんじゃないのかなと。或いは、何でこんなに上手く行かないんだろう的な怒りや悲しみ。

 

ここではないどこかに思いを馳せるのはわかるけどさ、情けなくっても、他人にとやかく言われても、今の自分をちゃんと肯定してあげようよ、という主張、悪くないんじゃないかと。

 

「あえていうなら」程度では無く、これって十分に社会性のあるテーマだったのでは?と思い直した。

 

これは私が10数年前に人から聞いた言葉で、とても好きな言葉なのですが
「過去と他人は変えられないけど、自分と未来は変えられる」
と言うのがあって、ああまさにその通りだなって思って、これを聞いてから、私はこういうスタンスで生きて来ました。

 

私も昔はね、自分には生きてる価値なんか無いし、もういっそのこと命を断ってしまおうかなんて、何度も何度も考えて生きてましたよ。でもそこから沢山勉強もしたし、好きなものにも打ち込んできたりで、そういう気持ちは一切無くなりました。

 

自分の人生に意味や価値はあるのか?なんてね、考えたってしゃあないのです。そもそも誰もが認める意味や価値とか必要なの?つーかそんなものあるの?っていう話じゃないですか。

 

社会学上も「生き辛さ」を誰もが抱える時代ですよ。ただ生きて行くだけでも本当に大変な時代なのです。

 

そんな中でね、マーベルの映画面白いよな、人生辛くなって死にたくなったけど、MCUの次の奴を見るまで死ねないな、程度の事だって十分なんです。そんな時に、こんな映画あるって、それはそれでありがたい事だと思うし、なんか凄く貴重なんじゃないかって思えて来ました。ストレンジ先生イケメンだからみんな気にして無いけど、この人結構やらかしてますよ。

もう至高魔術師(ソーサラースプリーム」じゃないのです。完璧である必要なんか無い。愛したヒロインと結ばれる結末では無かった。でも、それで良いじゃん。色々あるけど、今の自分も決して悪くは無いな、と言える人でありたいなと私は思うのです。

www.youtube.com

関連記事

curez.hatenablog.com