僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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エスター ファースト・キル

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原題:Orphan: First Kill
監督:ウィリアム・ブレント・ベル
アメリカ映画 2022年
☆☆★

<ストーリー>
行方不明になってから4年ー
10歳になって戻った娘は、何かがおかしい。

2007年、アメリカで暮らすオルブライト家は、4年前に6歳で行方不明となった愛娘エスターの失踪事件に今なお心を痛めていた。そんなある日、エスターが保護されたという思いがけない知らせが夫妻のもとに届く。この奇跡のような出来事を手放しで喜ぶ一家。驚くほど成長したエスターは聡明で才能も豊か。画家の父親に昔以上にべったりだった。また、あの幸せな時が帰ってくるー。
だが、母親は知っていた。
この娘が別人だということを。

 

2009年の映画「エスター」から13年ぶりの続編前日譚。
当時、エスターを演じた10歳の子役だったイサベル・ファーマンがまたも10歳のエスターを再演。撮影当時は23歳で今は26歳だそう。

 

今はCGで若返れる時代ですが、全編それをやるのはお金がかかると言う事で、遠近法やらスタントダブルで、そう見えるように撮影と言う涙ぐましい努力が面白い本作。

 

実際CGだろうが特撮だろうが、違和感が無い方が良いに決まってますが、古い映画ファンなら「これ、どうやって撮影したんだろう?」みたいに不思議に思える映画は昔は沢山あった気がします。

 

確か、アメリカ映画のオールタームベストに選出される「市民ケーン」とかも、そういう今までに見た事の無いショットや撮影技術とかが評価されてのオールタームベストなんじゃなかったでしたっけ?
私も昔、映画にハマり始めた初期の頃、勉強にと思ってみたけど、3回ぐらい途中で寝ちゃって、これのどこがオールタイムベスト映画なんだろう?と正直思ったけど、確かそんな風に今見ると何気ない普通のショットだけど、当時にしてみたらこんな絵どうやって撮ったんだ?みたいなのが凄く多くそういう面で伝説になっている映画だとか確か後から知った気がする。(もし間違ってたらゴメンなさい)

 

そういう意味でも、創意工夫で撮影された今回の「ファーストキル」の努力は面白い。実際、普通に顔が映るシーンとかでは、幼く見えるのは確かだけど、流石に10歳には見えないかなというのが正直な所ではある。
子供の顔と大人の顔って、別にしわとかそういうのじゃなくても何と無くバランスとかそういうので違いはありますよね?残念ながら前作と同じには見えないものの、エスターさん、設定がそもそも特殊なので、年の割には顔ちょっと大人じゃないですか?というのが逆に生きてきたりする辺りが何気に面白い。

 

そして何より、今回はそんなエスターが主役であり主人公でもある。前作はあくまで両親、特に母親が主人公ですよね、あれ。エスターはあくまでヴィラン。幼い子供のはずなのに、サイコな殺人鬼だった、というのが前作の面白味。

 

見てる方としても、といってもエスターちゃん可愛いよね、とかついつい思ってしまう中で、突然癇癪をおこしてブチギレるエスターを見てドン引き、みたいな面白さでした。

 

ところが今回、そんなエスターの視点の話だったりする。
ホラー映画のヴィラン、殺人鬼やモンスター達。ジェイソンやフレディ、レザーフェイスとか沢山の続編が作られていきましたが、じゃあそんな殺人鬼を主人公にして、彼らの気持ちを描くかと言うと、実際はそうじゃない。2作目も3作目もヴィランとして描かれる。シリーズ迷走して変な話が作られるケースはあっても、基本的彼らは悪役だから引き立つキャラクター。

 

今回の映画も、大筋はまた新しい一家にもぐりこむエスターなのですが、当然、観客は彼女の正体を知った上で見てるわけで、じゃあそこは前作みたいなどんでん返し、実はこうでした的な映画じゃ無くなったのかと言えば、今回もあります。もう無理矢理ツイストをねじ込んだような展開で、ええ~何それな感じでした。

 

無理矢理作った、無理矢理続編です。でもそんな無理矢理感もまたこれはこれで面白いかもとは思う。素直にビックリさせられるとか、素で面白いと思ってるわけじゃないですよ。こういうグダグダ感も、B級映画らしくてアリかも、くらいです。

 

いやだってね、何をしてくるかわからないエスターにハラハラドキドキさせられるかとかじゃなく、うっかりミスをしてしまうエスターの正体がばれてしまわないかどうかの方にドキドキさせられるんですよ。何だこの映画。

 

前作と同じような面白さを期待すると肩すかしも良いとこだと思います。でもこういうB級以下のC級続編みたいなのが作られてこそ、遂にエスターちゃんもホラーアイコンキャラクターの仲間入りを果たしたんだ!とか思えて、こんなに嬉しい事はないです。

 

今回、イサベル・ファーマンさんのインタビュー記事とかも面白くってね、子役の時にああいう役をやって、いじめられたりしなかった?っていう質問に大して、全然そういうのは無かったよ、当時の撮影で自分自身がトラウマになる事もなかったし、外野が騒いでどうこうもなかったって言われててね、そこは良かったなぁと胸をなでおろしました。自分の代表作の一つだし、パート3ももし出来るならやりたいですって言っててちょっと微笑ましかった。

 

そんな感じで、映画としての撮影のテクニック。
悪役や、それを主軸とした続編における視点の変化。
嫌な役をやった子役のその後。
お話としては正直、どうかなこれってレベルでしたが、そんな周りの部分まで含めた視点で見る分には、個人的にはとても面白い作品でした。

 

一見可愛い子供だけど、とんでもないサイコだったという衝撃から、とんでもないサイコに見えながら、絵とか音楽とか、芸術を愛する気持ちはエスターにとっても本物なのかなというのと、彼女も面白半分というか本当にサイコでクレイジーなだけでなく、愛情を求める気持ちは本物だったんだろうか?とか思わせてくれるんだから、前作とは真逆なくらい別ベクトルで作られてる映画だなと感じた。

 

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