僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

機動戦士ガンダムNT(ナラティブ) TVエディション

機動戦士ガンダムNT


MOBILE SUIT GUNDAM NARATIVE
監督:吉沢俊一
2023年 TVアニメ 全4話
☆☆☆☆

 

「水星の魔女」TV放送1期と2期の間の穴埋め企画第3弾。
閃光のハサウェイ」「サンダーボルト」に続く、今度は「ナラティブ」のTVエディション全4話。

 

ガンダムNT」は2018年の劇場公開時に見ました。私は「UC」が嫌いなので、あれの続編ねかぁ、どうせUCと同じでつまんねーんだろうな、スルーで良いかと思いつつ、まあでも見なきゃわからんし、ガンダムを劇場で見れるのはそれはそれで貴重な機会だしなぁと、公開になって3周目くらいに一応見とくか程度の感覚で見ました。

 

そしたらね、いやこれ面白いじゃん!ちゃんと劇場で見ておいて良かった!
と思えた作品でした。

 

ハッキリ言って設定は大嫌いです。原作の福井の提唱する「ニュータイプは時間操作能力者」という、そんな風に言いきる感覚が大嫌いだし、ユニコーンガンダムはシンギュラリティ・ワン(技術的特異点)なんて形にしちゃった上で作られてる作品なので、そういう部分に関しては私は全否定。設定上そうするとつじつまが合うとかそんなのどうでもいいんだよ。

 

で、そこを前提にしたストーリーになってるのですが、そんな設定はドラマの足がかりでしか無い、大切なのは設定じゃ無くそこで描かれるドラマなんだってきちんとこだわって作った吉沢俊一監督の手腕を褒めたい。

 

終盤、ナラティブガンダムの中からコアファイターが出て来ますが、福井もカトキもそこは嫌がったんだけど、そこは監督権限で通したっていうのがとても信用できるなと。

 

コアファイターがカッコいいからとか、そういう事じゃないんですよ。ナラティブガンダムA装備(デンドロ風)B装備(ファンネル風インコム)C装備(サイコフレーム)と、どんどん軽装になっていく果てにコアファイターになってさらに強化パイロットスーツからノーマルのパイロットスーツになる。


ゴテゴテした装備はしがらみの象徴で、そこから少しづつ解放されて行く中で、最後は腹を割って本音で話をする、そういう演出の上でMSのデザインも作られてる。そこが良いのです。ちゃんとドラマとリンクしたメカ設定。ここにこだわった監督エライ!

 

だってね、今回はガンダムお馴染みの仮面キャラは出て来ませんが、ガンダムにおける仮面のキャラっていうのは、正体を隠したいから仮面をしてるんじゃないんです。「本心」を隠してるから仮面をしているわけで、最後になってその仮面が外れた時にそのキャラクターの本音が吐露される。そういう事をガンダムはずっとやってきたわけでしょう?

 

ナラティブガンダムもちゃんとそういうガンダム演出の上でのデザインなわけで、私はそういうの大好きだし、メカと言うのはそうあるべきだと思うので、そこだけでぶちゃけこの作品は100点あげたい。

 

そしてもう一つの好きなポイント。主人公のヨナはちょっと何を考えてるのかわかりにくい部分もあるけれど、私はミシェルが好きでね、後悔を抱えて生きているって、物凄く人間臭くないですか?奇跡の子供達3人の中で、生き残れるのは一人だけなんじゃないか?ってなった時、二人をかばう気持ちと、自分だけは生き残りたいっていう気持ちと、そのどちらが本心なのか、多分本人もわからない。自分が生き伸びて成り上がる事で二人を助けるというのは本年でもあり、同時に自分自身に対する免罪符的なものでもある。この辺の複雑な感情が描かれてて、私はミシェルがとても好き。

 

ただ、ヨナはヨナで、リタを救えなかった事で、ずっと心に傷を抱えたままで生きてたりする。こっちはこっちの描き方で面白くってね。

 

だって後悔や心の傷の無いまま生きてる人なんてこの世の中に居ないでしょ?私だってそう、あなただってそう。生きてれば誰だってそういうのは大なり小なり抱えて生きてるんです。視野が狭い人は、そこで何で自分ばっかりこんな不幸な身の上なんだって嘆いたりする。それは他の人の事を理解して無いからですよ。そんなの誰だって同じなのに、自分だけがって知りもしないくせに嘆いてるだけ。・・・はい、昔は自分もそう思ってましたよ。でも勉強して視野を広げる事で、そんなの自分だけなんかじゃない、みんなそうなんだって気付く事で色々なものからようやく解放されました。

 

そんな感じの事をね、ヨナを通して言わせてるのが素直に面白いドラマだなと思わせてくれた。

 

フェネクス=フェニックスですから、それは永遠の命を持つ火の鳥の事です。
そう!ガンダムNTは「火の鳥 宇宙世紀編」だったんです。

 

ガンダムCUのバナージは、「自分の居場所はここじゃない」と感じてる人でした。アニメでもちゃんとやってたっけかな?小説だと、確かその辺が序盤の描写であるんですよね。多分、福井なりに今の若い子の感覚みたいなものを入れたつもりだったんだろうなと思うんですけど(数年後に、自分の居場所はここじゃなく異世界って方向に流行が傾くんだから目の付けどころは悪くなかった気がする)
今回のヨナは「生きてたって良い事なんか何も無いよな」という厳しい現代を生きる若者の感覚として、多分その言葉には結構共感する人も多いと思うんですよね。

 

ライバルのゾルタンが、仮面キャラじゃ無く本音を隠さず吐露するタイプの人でしたし、俺をバカにしやがって的な世界に対する恨みしか無いタイプの人でしたが、そこもヨナのバリエーションというか、裏表的なもう一人のヨナでもあったわけで、「絶望」を抱えて生きているという意味では近い存在ではあったりする。

 

で、ヨナも生きてたって何も良い事なんかないから俺ももうそっちの世界に行くよ、ってなった時にね、バナージが「それでも、と言い続けろ」と手を差し出す。

 

こんなクソみたいな世の中だけどさ、俺らは不死鳥みたいに永遠に生き続ける生き物じゃないんだし、死を超越した不死鳥にはまだなれないんだよ、だったらさ、生きてる間だけでも何とかふんばって生きて行こうよ、とこの作品は訴えてくるわけで、そこはね、私は肯定してあげたい。

 

私もMSは好きだけど、ガンダム=メカの話ばっかじゃなく、こういう視点でも普通に面白い話だと思いません?ナラティブ、私は好きだなぁ。

www.youtube.com

 

関連記事

 

curez.hatenablog.com

 

curez.hatenablog.com

 

curez.hatenablog.com

 

curez.hatenablog.com