原題:I Girasoli
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
イタリア、フランス、ソビエト連邦、アメリカ合作映画 1970年
☆☆☆
<ストーリー>
第二次世界大戦下、陽気なアントニオ(マストロヤンニ)と結婚したナポリ女のジョバンナ(ローレン)は、夫を戦争に行かせないために狂言芝居までするが、アントニオは地獄のソ連戦線に送られてしまう。
終戦後も戻らない夫を探すために、ジョバンナはソ連に向かい夫の足跡を追う。しかし、広大なひまわり畑の果てに待っていたのは、美しいロシア娘と結婚し、子供に恵まれた幸せなアントニオの姿だった…。
昨年も50周年記念HDレストア版が上映されていて、見に行こうか迷ったのですが、結局スルー。たまたまアマプラで映画を探していたら間もなく無料配信終了の所にこの作品を見つけて、じゃあ勿体無いから見ておくかと視聴。
因みにこの作品、初見です。昔にね、筋肉少女帯の「UFOと恋人」というアルバムでこの作品のインストテーマ曲に勝手な歌詞をつけてカバーしてたんですよ。
カバーしたその由来はなんだったっけかなぁ?オーケンのエッセイで少し触れてた気もするのですが、ちょっと内容は憶えていない。なので映画のテーマ曲というのと、おおまかなあらすじくらいは昔から知ってました。有名な作品だけど実際は見てないぞ、みたいな感じで。
それが去年、レストア版の上映があって、それはロシアのウクライナ侵攻もあっての事で話題になった感じだったと思います。
1970年当時はまだ米ソ冷戦下で、この映画はそん冷戦の緊張が続く中で、珍しくソ連でのロケが許された数少ない映画の中の一つで、そこも話題になった要因の一つでした。
地平線まで続く一面のひまわり畑。オープニングからテーマ曲と共にそのひまわり畑の壮観な風景が映し出されます。知らない人にとってはものすごく綺麗な風景です。
が、物語が進むにつれて、戦争の傷跡が語られます。兵士のみならず、一般市民、女子供問わず戦争により物凄い命が奪われた。一人一人を弔ってやれる余裕すらなく、遺体のポケットにひまわりの種を忍ばせ供養したのだと。この一面のひまわり畑の下には同じくらいの遺体が埋まっているのだ。
その一面のひまわり畑があるロケ地が今のウクライナなんだそうです。
昨年のロシアの侵攻が始まって間もなく、ロシアの兵士がウクライナを訪れた時、地元の老婆がひまわりの種を兵士に手渡したそうで、それが日本のニュースでも流れた。
ニュースキャスターは戦争では無く花を咲かせて欲しいと平和を望む声なのだと、それを美談として放送していたそうですが、当事者としてはそんな兵士たちにどうせお前もすぐに死体になってしまうんだよ、という明らかな皮肉としてひまわりの種を渡しただけなのに、その皮肉が今の日本のキャスターには全く文脈を理解出来ずに美談として紹介していたんだよ、的な事をマクガイヤーチャンネルで言ってたような。
まあ50年前の作品ですし、イタリア映画では有名な1本ではあるのですが、それなりに映画好きとか言ってる私も今更になって初見なわけですし、あんまり人の事は言えないわな。
映画としてはそんな今の時代背景であったりバックグラウンド込みで見る分には貴重な1本でしたが、今見て純粋に面白かったかと言えば、まあ正直そこまででは。
毛皮を買って帰るよ、という約束を守りつつも、もっと安い奴ないのか?と値踏みをしてしまうマストロヤンニさんの誠意がちょっと面白かったです。
まあでもこういうのも勉強がてらに見ておいて良かったです。
くるく~るま~わる~