僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ベスト・オブ・キャプテン・アメリカ

ベスト・オブ・キャプテン・アメリカ

THE BEST OF CAPTAIN AMERICA
著:ジャック・カービージョー・サイモン他(作・画)
訳:石川裕人
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2023年
収録:CAPTAIN AMERICA COMICS #1(1941)
   CAPTAIN AMERICA Vol,1 #109(1969) #155(1972) #246 #250(1980) #332(1987)
   MARVEL FANFARE Vol.1 #18(1985)
☆☆☆☆☆

全マーベルファン待望!
キャプテン・アメリカの誕生とその軌跡をたどる一冊

時は1941年、ヨーロッパに戦乱が渦巻くなか、アメリカ陸軍は天才科学者エイブラハム・アースキン博士の指揮の下、超人兵士製造計画「プロジェクト:リバース」を始動する。その実験台に選ばれたのは、肉体はひ弱ながらも、その胸に自由の炎をたぎらせた青年、スティーブ・ロジャースだった。それから数十年、アメリカの理想の体現者、キャプテン・アメリカとなった彼は、流転する社会のなか、理想と現実の狭間でアメリカンドリームを追い求める……今日もまた!

 

という事で日本独自編集で展開している傑作選アンソロジー「ベスト・オブ」シリーズのキャプテンアメリカ


キャプテン・アメリカ・コミックス #1(1941)
 キャプテン・アメリカ登場
 作・画:ジョー・サイモンジャック・カービー

キャプテンアメリカ初登場号。表紙の豪快にヒトラーを殴り飛ばす絵が有名ながら、作中にそういうシーンは登場しないし、そもそもアメリカがまだ戦争に対しては中立の立場をとっていた時期で、バリバリの戦時中とかではなく、アメリカとドイツが対立する前にこういうキャラクターが生み出され、こういうスタンスをコミックが独自に描いたというのが何気に面白い。

 

アメリカンコミックスのスーパーヒーローの祖、「スーパーマン」の生みの親ジェリー・シーゲルジョー・シャスターユダヤ系移民だった事から、スーパーマンもそういったメタファーとして語られる事が多いですが、「バットマン」の生みの親、ボブ・ケイン&ビル・フィンガーもそうですし、マーベル側も、創設者のマーティン・グッドマン、その甥のスタン・リー、そしてこのキャップの作者のジョー・サイモンジャック・カービーユダヤ系。アメコミヒーロー文化の基礎を作った人達はそういう共通したバックグラウンドを持つ、というのはアメコミオタクにとっては基礎知識みたいなもの。

 

スーパーヒーローとは虐げられた者たちの代弁者だった。だからキャップはヒトラーを殴る。アメリカとドイツが対立していたからじゃないのだ、みたいな所に面白味を感じる人が多分濃いアメコミオタク。

 

しかもね、これが出版された時はまだ社名がマーベルじゃなくタイムリーコミックスの時代なんですよ。そんなマーベル以前のキャラであるキャプテンアメリカが「アベンジャーズ」の4号で氷漬けの中から息を吹き返して、新しい時代に馴染んで行くというメタ部分にメチャメチャ面白味を感じます。

そんな「アヴェンジャーズ #4」はこの本には収録されて無いので、気になる人はヴィレッジブックス刊「アベンジャーズ:ハルク・ウェーブ」をどうぞ。

 


キャプテン・アメリカ #109(1969)
 ありし日のヒーロー
 作:スタンリー&ジャック・カービー

ニック・フューリーに対する振り返りの思い出話として、キャップ自らが自身の誕生・起源(オリジン)を語り直すという、ある意味リブート的な回。作画はあれから30年近く経った再びのジャック<キング>カービー。

 

もはやキングと呼ばれるようになったカービーの円熟されたアートが素晴らしい。アメコミアーティストで影響を受けなかったものが居ないと言われるくらいにカービーがアメコミのアートに与えた影響は大きい。

 

因みに元のオリジンの方でも今回の話でも、映画で言う所のアースキン博士がレインシュタイン博士となっていて、あれ?どういうこと?と思ったけど、実際にアメリカへの亡命者だったあのアルバート・アインシュタイン博士がモデルとなっている為で、レインシュタインの亡命前の本名がアースキンだった、ということらしい。へぇ~、知らなかった。この辺りもまた面白い部分です。

 


キャプテン・アメリカ #155(1972)
 もう一人のキャプテン・アメリカ、驚愕のオリジン!
 脚本:スティーブ・イングルハート 画:サル・ビュッセマ

第二次大戦末期氷河の底へと消えたキャプテンを、スタン・リーが「アベンジャーズ」で復活させたと先に触れましたが、実は1950年台、朝鮮戦争赤狩りの時代にもキャプテンは復活していたのだが、全く人気が出ずにわずか3号分で終了。


その歴史は無かった事にされていたはずだったが・・・後に設定を調整して、その1950年台のキャプテンとバッキーは政府の要望により整形してまでなり変わっていた、もう一人(二人)のキャプテン(とバッキー)だったのだ!

 

というのが明かされたエピソード。本物に遅い来る、偽物・・・という設定にされただけで当時は実際に本物のつもりだった、というのが絶妙に面白いし、この辺は日本で言えば「ガンダム」とかでも良くある、当時の矛盾やある意味でのトンチキ設定みたいなものを合理的に解釈しようという流れは、オタクあるあるで楽しい。
今回の話は次回激突みたいな部分で収録は終わってしまうものの、この辺りの設定は名作「キャプテンアメリカ:ウィンターソルジャー」(映画じゃ無く原作の方)にも生かされたりしてたので、あの話や設定の元はここか!って感じで非常に楽しい。

 


キャプテン・アメリカ #246(1980)
 親の因果
 ライター:ピーターギリス ペンシラー:ジェリー・ビンガム

超絶辛気臭い話。宇宙からの侵略者でもなければ天才ヴィランが世界を支配しようとするわけでもない、ある意味バットマンのジョーカー的な「無敵の人」。ただの一般市民ながら不幸の連鎖でどうしようもなく追い詰められて、世間に復讐しようとする、答えの出ない不条理。大切なのは社会保障とかじゃないのか?みたいに思わせられる、暗~い話。

 

いやね、こういうのなんですよ私はアメコミが好きになった理由って。過去にも何度か書いてるはずですが、社会問題や政治とちゃんとアメコミヒーローは向き合うんだっていう所に私は物凄く新鮮さを感じたんです。ある意味これも短絡的な思考かもしれませんが、社会や政治と向き合わない日本のヒーローなんてやっぱり子供騙しじゃん。アメコミすげーな、日本のヒーローは何でこれやらないかな?私はこれからはこっちに乗ろうって思った大きいきっかけの一つです。

 


キャプテン・アメリカ #250(1980)
 キャップを大統領に!
 脚本:ロジャー・スターン ペンシラー:ジョン・バーン

タイトル通り、キャプテンがアメリカ大統領選に出馬するかどうかという話。日本だとタレントがテレビで政治の話をするのはご法度で、誰を支持しているとか表立って言う人はほとんど居ない。そのくせタレント議員みたいなのは立候補させようとする、変な世界。
その点、ハリウッドは俳優が政党の応援にかけつけたりするの当たり前の風景ですよね。バイデンさんの時もアベンジャーズメンバーほとんど集結してましたし、スパイダーマンのコミックの中にオバマ大統領(当時)を出したりする。これがねぇ、私は素晴らしいと思うし、日本もこうならないかなぁと思う。

 

近年だと割と偏った形で描いてしまうケースも多いけど、この時はまだあまり一部の政党だけ支持するのは良くないだろうからと慎重に描いてる感じがして、そこが凄く面白い。話のおとし所も、凄く良いんですよ。

 

キャプテン・アメリカとしての出馬を求められて、それは当然アイコンだからこそなので、素顔じゃ無くマスクのままじゃなきゃ意味が無い。素顔を出さないで立候補とかヤバくない?とある意味ツッコミも入りそうなものの、大統領じゃないけどプロレスラーのグレートサスケがマスクのまま議員当選してたのなんか思いだしてしまいました。

タレント議員って賛否ある部分だとは思うけど、知名度があるのは当然有利だし、今は珍しくもなければウクライナのゼレンスキー大統領だって元コメディアンですからね!

 


■マーベル・ファンファーレ #18(1985)
 燃ゆる我が町
 脚本:ロジャー・マッケンジー&ロジャー・スターン
 ペンシラー:フランク・ミラー

再び辛気臭い社会問題話。アーティストはあのフランク・ミラーだ。アメコミの歴史を変えた「バットマンダークナイトリターンズ」直前くらい。「デアデビル」はもう担当してる頃ですので、こういったものが下地としてあって、1986年に「ウォッチメン」と共にアメコミの変革期、圧倒的な底上げを行った、というのが感じられて凄く面白い。

 

一応、ペンシラーという肩書きでクレジットは載ってますが、ミラーも基本的に脚本に口出す人ですし、露骨に右向きの人ですし、女子供に政府は支援の手を差し伸べようとするけど、俺達労働者はないがしろにされてないか?この国を作ってきたのは俺達労働者じゃないか!我々を中心に国は動くべきだ!みたいな主張が、なんか凄くフランク・ミラーっぽいし、本誌ではなく特別編の別冊的な扱いの「マーベル・ファンファーレ」誌でありながら、キャップを使ってこういう話を描いてしまう所が面白味。

 


キャプテン・アメリカ #332(1987)
 選択
 ライター:マーク・グルンウォルド ペンシラー:トム・モーガン

キャプテン・アメリカ」というキャラクターや衣装は国の物であり、国の命令に全て従わなければ、君はキャプテンアメリカの名前と衣装を返しなさい、という話。

 

いやぁ、良いですね。こういう話最高。
キャプテンアメリカとは何か?スティーブ・ロジャースが仕えるものは何なのか?時代の変化、実際の戦時下から、ここまでの収録話のような社会問題への直面、そして国そのものも変化してきている中で、キャプテンアメリカとはどうあるべきなのか?

 

スーパーパトリオットとしてですが、あのジョン・ウォーカーも登場。今回の話そのものには出てないけど、ヴァレンティーナとかバトルスターとか、設定回りに書いてあって、おおMCUドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」の元ネタはこの辺りの流れから拾ってたのか、というのが楽しい。

 

 


私もね、知らなかった昔はそうでしたし、MCUの初期の頃からの世間の反応を見てると、キャプテンアメリカ?何この愛国ヒーロー気持ち悪っ!アイアンマンやソーはカッコいいし面白かったけど、このダサい奴は絶対好きになれないし、どう考えても場違いなアメリカゴリ押し野郎とかやめておけって、という評判が9割でした。

 

勿論、映画は面白かったし、特に2作目の「キャプテンアメリカ:ウィンターソルジャー」の圧倒的な完成度の前に、そういう声はほとんど聞かれなくなりましたが、映画も良いけど、こういう、一見は愛国ヒーローだからこそ、そんな単純なものじゃない他のヒーローとは違う面白味や深みがある事を世の中には知って欲しい。

 

いや映画から入った人がこの本を読んで面白いと思うかは正直難しいとは思うんだけど、100人に1人、或いは1000人に1人かもしれないけれど、かつて私がアメコミに触れて新しい扉が開かれたのと同じように、こんな方向の面白さは今まで知らなかった!という人が一人でも増えてくれたら良いなぁと思ってしまう1冊でした。

最高に味わい深い1冊で満足しました。

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