僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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パラサイト 半地下の家族


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

 

監督・脚本:ポン・ジュノ
韓国映画 2019年
☆☆☆☆★

カンヌ映画祭で最高位のパルムドール受賞。他の賞レースでも色々とりまくっている「パラサイト 半地下の家族」をさっそく見てきました。

まず映画の前に「字幕:根元理恵」って出て、あ~そうそう韓国映画と言えばこの人だったよねと懐かしくなってしまいました。昔映画を映画館でいっぱい見てた時期から韓国映画は面白いのいっぱいあって割と見てたものですが、映画館行かなく(時間的に行けなく)なってしまってたので今回久々に根元理恵さんの名前が出て、そうかソフトだとこのクレジット出ないし、映画館で韓国映画見たのが久々なんだなって冒頭からなってしまいました。

で本編の方ですが、韓国の半分地下に埋まってるような家に住んでいる下流階級層の家族が、上流階級の家族に言葉巧みに近付き、やがては半ば乗っ取るような形になっていくというお話なのですが、監督からの御達しで、ストーリーのネタばれは厳禁のコメントが出ているそうです。「実はブルース・ウィリスが○○」だった!的なオチでビックリさせるタイプの作品では無いのですが、話が転がって行く所を存分に楽しんでほしいからだそうです。

なので予告とかプロモーションで出ているような範囲で、物語の核心とかには触れない感じでの感想にしておきます。

まず絵作りが素晴らしいです。
読んで字の如く、下流階層は実際に地下に、上流は本当に階段をちょっとあがった「上」に住んでるんですよね。

そして面白いと思ったのは、主人公らの方の下流家族なんですが、彼らを決して努力もしない「ダメな家族」とかには描いていないという所。ちょっぴり悪い方向へ才能を発揮するお姉ちゃん、とかポン・ジュノ的なシュールな笑いの要素なんかはありつつも、各々が決して自堕落でタメな人間としては描いてない。

未だに日本では根強く言われてる自己責任論。上に行ける奴はお前らの何倍もちゃんと努力しているからそこで差がつくんだよって言い分、まだ居ますけど、そういうのは政治家とか富裕層らいわゆる勝ち組が私ら下流階級を黙らせる為に言ってる言葉です。決して騙されてはいけません。
私はNPOとかに参加して社会学ゼミなんかを受けたので、そこでその手の事を学びました。簡単で読みやすい社会学の本とかもたくさん出ていますし、貧困問題はただの自己責任論で片付く問題じゃ無いんだよってのは知っておきたい事実です。

そういった部分を踏まえると、今回の映画での下流層の描き方は上手いと感じました。
あと決して家族が崩壊してるわけじゃないのもね、面白い部分なのかなと。

個人的にこの作品の中の一番凄いなと感じた所は、ソン・ガンホの終盤での心が一瞬で揺れ動く瞬間。あそこが凄かった。

何かの映画だったかすら忘れましたが、「日本って空港に降りた瞬間から醤油くさい」みたいな事を言ってるのがあって、あ~、何か正しいかどうかは別として、それわかるわ、と思った記憶があってそれを思い出しました。
私はもうおじさんなのでそろそろ加齢臭とかも気になり始めるお年頃。風呂入って、ちゃんと洗濯したものを着てても、何かその人に染みついた臭いみたいなのって、突然ふと気になる事ってありません?下手すりゃ物理的な臭いだけでなくて、その人の人生にしみついた人間的な背景まで含んでそう感じるのかもしれません。そんな事を考えながら、作中の中の、あの瞬間的に切り替わる一瞬、ゾクっとしました。

唯一の欠点というか、これは映画的な構造や見せ方の欠点とかじゃなく、見てるこっち側の問題なのですが、それこそ韓国の文化や社会背景をより深く知っていれば、もっともっとこの映画の凄さがわかるんだろうな、ってシーンが要所要所に入っている所。
ああ、このカット意味があるんだろうなって所まではわかるんですよ。ただ、その意味まできっちり読み切るのはそれなりのリテラシーが必要。そこが見ていて自分で勿体無いなと歯がゆさを感じました。

「ヘレデタリー」とか「スリービルボード」辺りに通じる、えっ?この映画何なの?どこに向かってるの?的なハラハラ感があるタイプの映画。年明け早々、今年ベスト級の作品かと思いますので、映画館で見ることを是非オススメ!

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