ASTONIHING THOR
著:ロバート・ロディ(作)マイク・チョイ(画)
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2017年
収録:ASTONIHING THOR #1-5(2011)
☆☆★
生ける惑星の運命は
雷神ソーに託された!
巨大嵐が世界を引き裂きそうになった事件の謎を追究したソーは、生ける惑星“エゴ”が太陽系を突っ切っていったことをつきとめる。“エゴ”は謎の長命宇宙人コレクターに囚われた弟を救おうと急いでいたのだ。
だが、兄弟の邂逅は不幸を呼んだだけだった。“エゴ”と弟星“オルターエゴ”が出会えば、一つの星しか生き残れない。つまり、もう一つの惑星は滅びる運命なのだ。
その運命を避けられるパワーを持つのは雷神ソーのみ。しかし、そのためには昔の恋人をはじめ、過去の因縁に向き合わねばならなかった…。
「ソー&ロキ:ブラッド・ブラザーズ」に続いてロバート・ロディがライターをつとめたこちらの作品。「ガーディアンズオブギャラクシーVol.2」にも登場した生ける惑星、エゴ・ザ・リビングプラネットとの激闘が描かれるのがこちらの作品。(エゴの設定はMCU版と原作のこちらでは違ってますが)
一言で言えば、もう凄まじくシュール。もう一つのエゴ、オルターエゴと、顔のついた惑星同士で喧嘩するんですよ。設定もそうですが、絵的にも凄くシュールで、読んでて何だこれ感が凄まじいです。
ソーも一般人から見たら十分に神様なのですが、それを上回る存在のエルダーズオブユニバース(コレクターもこの範疇に入る)とか、創造主レベルの人達も絡んでくるので、どこまでスケール大きく広げる気だよ!って突っ込みたくなる感じが、逆に面白い。
「ブラックウィドウ」の次にやる「エターナルズ」とかもそうですが、コズミックビーイングだのセレスティアル(天上人)だのエターナルズだの、どこまでも際限無く広がって行く世界が、まあとてもアメコミらしいとも言えます。実際、創造神とかまでキャラクター化されて設定がありますし、概念とかを擬人化、キャラクター化(今回も4元素のひとつの「風」がキャラクター化したゼファーとかも話に絡む)なんてのも日常茶飯事なのがアメコミ。
そこまで大きい規模の存在に、ソーが一体どう立ち向かうのよ?みたいなのが面白さでもある。今回とは別の奴ですが、惑星間戦争なのにキャプテンアメリカが中心に居てその行く末を決定づけるとか、いかにもアメコミならではでとても面白いです。
若干方向性が違えど、マルチバースの問題とかもそうですし、今後は映画もそこがメインにはならないんだろうけど、そういう話も含め、世界観の拡張をエターナルズとかでやっていくわけですよね。作品もそうだし、それがどういう風に映画しかみていない層とかに受け入れられていくのか(あるいは受け入れられずに終わるのかも)とか、楽しみでなりません。
コレクターも存在こそ知ってましたが、設定的には何百億年と生きてると暇になるので、その暇つぶしとして収集に勤しむうちに、もうとにかく色々な物を集めたりコンプリートしたりするのが楽しみになってハマっちゃった人、という設定だったんですね。地球の誕生なんかより遥かに昔から存在してるという凄い人なのに、なんかちょっとアホな設定で面白い。
数ある原作の中で、何でこれをあえて日本語版で出したのか?みたいな部分まで含めて、最高にシュールで逆に面白かった。へ、へんな物読んじゃった。何これ?と戸惑ってしまうのが逆に面白いというか。
「ブラッド・ブラザーズ」がキャラクターの掘り下げであるなら、こちらはマーベルユニバースという世界観の方の掘り下げでしょうか。単純に、カッコいいソーの姿が描かれてるからとかじゃない感じの変な一冊です。アメコミ初心者向けでは無いと思いますが、アメコミの奥深さは味わえる特殊な作品になってました。
カルト映画ならぬカルトアメコミとでも呼びたくなるシュールな面白さ。読み終わった後、つまんなかったとかでなく、単純に何これ変な話読んじゃった、と思ってしまった稀有な一冊でした。
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