原題:ANT-MAN
監督:ペイトン・リード
原作:MARVEL
アメリカ映画 2015年
☆☆☆☆☆
MCUフェイズ2の6作目にして最終作。MUC前作「エイジ・オブ・ウルトロン」がひたすら物量で押す作品で、こってりたっぷりな映画だったのに対して、今回はミニマムな新ヒーロー、アントマンがここからMCU参戦。
てらさわホーク氏曰く、お茶漬け映画。もうおなかいっぱいという後に出てきて、おおこれサラっといけるな、とまさしく絶妙な例えです。
改めて見直しても圧倒的に面白い。昔の映画で言えば「ミクロの決死圏」みたいな、小さくなる映画って定期的にたまにあったと思うのですが、近年はあまり見かけませんし(探せばマイナー所とかありそうですが)そういう見た目の新鮮さだけでなく、キャラクター&俳優の明るさからくるコメディ要素。それでいてスコット、ピム共に親子の愛情や葛藤もきちんと描かれて、その上ケイパー物の要素まであるヒーロー物。これを雑にならずに本当にコンパクトに纏めてある。これはホントに大傑作。
最初は「ショーン・オブ・ザデッド」等の傑作コメディを多数手がけてきたエドガー・ライトが企画の最初から何年も関わって作っていたものの、制作側と方向性の違いから結局抜けてしまう事に。エドガー・ライト版も見てみたかったという気持ちもあるものの、私は結果として出来あがったこちらの作品で良かったと思ってます。想像でしかありませんが、エドガ・ライトだったらもう少し悪辣な要素と過ぎた悪乗りみたいなものが今より大きくなってたんじゃないかなぁと。
あくまで結果論でしかありませんが、きちんとしたヒーロー映画である事と、お茶漬け感のサラッとした作りがMCUには合ってたと思う。「アイアンマン」1作目、「ウインターソルジャー」なんかに引けを取らない傑作だと私は思っております。
それでいて、ガーディアンズと同じように原作に囚われない発想と挑戦もまた素晴らしい。原作だとスコット・ラングは4代目くらいのアントマンだったっけかな?原作重視で行けば、やはりアントマン=ハンク・ピムになると思う。
でも同時に原作のピム博士って、「エイジオブウルトロン:プレリュード」に収録されてる過去の原作エピソードでもそうでしたが、精神的に不安定なキャラで、奥さんへのDVも含め、ちょっとダーティなイメージも強い。そこを一癖も二癖もあるやっかいなじいさんというマイケル・ダグラスに過去に活躍した初代アントマンとして演じてもらって、映画としては新しいヒーロー像をまた新たに作り上げる。
日本語版も出ているスコット・ラングが主役の「アントマン:セカンドチャンスマン」をイメージソースに、映画でも作中何度もセカンドチャンスという言葉が出てくる。一度は過ちを犯してしまった。でも、その過ちを認め、反省して、本当に再起を願うのなら、最初から全てを否定するのではなく、セカンドチャンスを認められるようになるのが健全な世の中じゃないのか?という現代的なテーマも、本当にサラっと入れてあるのが素晴らしい。
あくまで犯罪歴は義賊的なものとしてやった、と相当に気を使ってマイルドにしてはありますが、アル中という要素をどうしても映画では使えなかったトニー・スタークから比べると、そこは確実に進歩している部分。まさしくそこがMCUが「フェイズ2」へ進んだ証でもある。
ミクロの視点という観た事が無い世界をこうやって発展したCG技術で観れるのは純粋に楽しいし(「ミクロの決死圏」は人体に入るんですけど今見ると凄くファンタジーなんですよね)ライバルのDCの「アクアマン」映画が凄く面白かったのは、海中世界のバトルというビジュアル面の目新しさがあったのは凄く大きい。マーベルはあれ見てやられたって思ったんじゃないでしょうか。同じく海洋ヒーロー(ヴィランかも)の大物、サブマリナーがマーベルでも今後出てくるでしょうし、ビジュアル的に二番煎じになりそうで怖い。単純に、観た事が無い世界を圧倒的なビジュアルで見せてくれるっていうのもまた映画の面白さですよね。やっぱアントマンもそこが素晴らしい。
予告の時点で何度も見てましたが、それでも機関車トーマスのシーンはシュールさが最高に面白い。あのコトって落ちるタイミングが秀逸。娘のキャシーちゃんも可愛いし、エンドゲームを観た後だと量子世界は時間も空間も越えるとか言われてるのは興味深いし、劇場公開以来の2度目の鑑賞でしたが、メチャメチャ面白かった。アントマン、超名作です。
AOUの次は再上映のタイミングにあわせてガーディアンズの予定でしたが、アントマンを挟んでシビルウォーもタイミング的に行けそうだったのでそっちを見てこようかと。映画館が再開して大忙しです。
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