僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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地獄少女

地獄少女 [DVD]

監督・脚本:白石晃士
原作:地獄少女プロジェクト
原案:わたなべひろし
日本映画 2019年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
怨みを晴らしてくれるというサイト〈地獄通信〉の都市伝説に沸く女子高生たち、そのグループになじめず、浮かない表情を浮かべる、市川美保。
大好きなアーティスト、魔鬼(マキ)のライブで知り合った南條遥の奔放さに魅了された美保は、居場所のない教室から逃げるように、一緒に魔鬼のコーラスのオーディションを受ける。だが、受かったのは遥だけだった。
やがて遥は美保に冷たくなり、様子がおかしくなっていく。心配した美保は、魔鬼が遥を<儀式>の生贄にしようとしていることを知る。遥を奪い、その命までも奪おうとする魔鬼を地獄送りにするため、美保は〈地獄通信〉にアクセスするが─。

 

という事で「地獄少女」実写映画版。
TVアニメの方はたまたまやってた配信みたいなので2~3本見た事がある程度。4期分程あるみたいですが、どのシリーズかも憶えてませんが、作風としては割と嫌いでは無いタイプ。

でも基本的には各話ごとに違うシチュエーションのオムニバスみたいなもんでしょうから、シリーズまとめてきちんと見てみよう、みたいになるにはやや敷居が高い。一応は全体を通したストーリーラインみたいなものもあったりするのかな?その辺りは不明。

 

そして調べたら実写のTVドラマ版なんてのもあるみたいですね。ただ今回はそのドラマともキャストも違うし、ドラマの映画版みたいな位置付けではなく、映画単体の企画のようです。

 

白石監督、割と高く評価されてる印象ですが、個人的には「貞子vs伽椰子」とか、何これという感じでしたので、特に他のも見てみようって感じでは無かった。ただ、少し前のマクガイヤーチャンネルで「地獄少女」凄く評価してましたし、嫌いな素材では無いので、ちょっと見ておこうかなとレンタル。

 

うん、これメチャメチャ面白いじゃないですか。原作の方をあまり詳しくは知らない人が言うのであまり説得力は無いと自分でも思うけど、アニメ・漫画原作の実写邦画は総じてダメと言われがちな中で、相当に健闘してるんじゃないでしょうか。


元々の作風が別にアニメで無くても問題無さそうな物ってのもあるのかもしれませんが、アニメ・漫画実写系の数少ない好例と言えるもののような気がします。

 

多少、コスプレ感が無くも無いとは言いませんけど、逆にその違和感がキャラクター物として面白く感じたし、「貞子vs伽椰子」で出てきた凄腕の霊媒師コンビみたいなのがやたら漫画チックで私はそこがどうかなと思ったんですけど、その逆で今回は良い方向に作用してる感じで楽しめました。

 

他人を即地獄へ落とす変わりに、自分も死んだ時に地獄行きのリスクを背負う、という地獄少女の基本ルール?は「人を呪わば穴二つ」みたいなコンセプトから生まれたそうですが、その辺りの復讐の連鎖の描き方が、なかなか凝ってて面白い。

 

デスゲーム系(地獄少女そのものとはちょっと違うかもしれませんが)って、基本的に前半でそのルール説明的な部分も兼ねて、脇役みたいなのが実際にその罠に落ちる、みたいなシーンがあります。話の構造上、主人公も失敗あるいは敗北するとこうなっちゃうんだよ、っていうのを見てる方に植え付けるわけですよね。

 

今回も構造としてはまさしくそんな感じなのですが、そこの部分をきちんとテーマ的な所に落とし込んでると言うか、殺したから殺されて、殺されたから殺して、という負の連鎖みたいなものをまず先に描いちゃうんですよね。そこが凄い。

 

これ、本来ならメインテーマとして主人公にそういうドラマを映画全編通してやるのが普通の気がします。復讐する事が本当に正しいのか?みたいなのを主人公(と見てる方)に考えさせるというか。

 

ただ、それで90分ないし2時間引っ張るのは難しいという判断なのか、物語の主人公とは別に、作品の顔として閻魔あい地獄少女)を使ったあくまでコンテンツのひとつとしての判断なのか、2部構成にして前半の物語と後半の物語の二つの話を入れる形になってる。

 

で、前半の方で割と好き勝手に作り手のやりたい事、伝えたい事、考えている事を結構どギツく処理しちゃってるんですよね。そこが面白い。

 

地下アイドルの殺傷事件がおきて、その犯人を呪い殺したと思ったら、今度はその親が呪いをしかけてくる、さらには被害者側の親が・・・とかこのツイストだけでも凄いし面白い。

 

「偽善者」というセリフが監督的には本音なのか、あるいは哀れな姿として描いてあるのかは判断しかねるし、逆にそこは見てる人に委ねてあるのも良いです。

 

じゃあその前半だけで言いたい事やっちゃって、後半はしりつぼみになっちゃうのかと言えば、後半も後半で面白いんですよね。上手く出来てるし。

 

あと、オタク的には仮面ライダーアマゾンオメガVS仮面ライダーシグルドなのが色々と面白かった。

事件を追うライター役を「仮面ライダー鎧武」でシグルド役の波岡一喜が演じてて、ボンボンのアーティスト役を「仮面ライダーアマゾンズ」で主役のアマゾンオメガ役の藤田富がやってる。おお~夢の対決だ!っていう感じで微笑ましかったです。

 

しかもアマゾン藤田富がやってるビジュアル系みたいなのが、相当にクズで頭悪い感じがとても良い。失礼だし、偏見度200%なのは自分でもわかってるんですが、実際にビジュアル系とかの人ってこれがリアルなのかはともかく、イメージとしてはやっぱこういうやつらなんでしょう?みたいなのを凄く上手く描いてあって、そこも良かった、うん、純度が足りないよね。

 

逆にソグルド記者の方も、一応は良い奴っぽいんだけど、主人公の女子高生に冗談半分で、やらせてとか言っちゃうクズっぷりもちゃんとあって、正義と真実を求めるジャーナリズムとかではなく、人ってやっぱこの程度だよね、感が出ていてこれまた良い。

 

主人公と友達になる遥も、最初は良い奴かと思ったら実はこいつもクズだった。でもその中にもちょっとだけ主人公をかばうシーンもあったりして、人は良い奴と悪い奴に単純には分けられないよね、みたいな所を描けてて、凄く上手い脚本だなあと感心しました。

 

これぐらいのレベルの脚本なのであれば、パート2があっても是非観たいです。雑な脚本であればそれこそ「世にも奇妙な物語」ぐらいの普通のものになっちゃんでしょうけど、これはきちんと映画として十分通用する脚本でした。

 


そして閻魔あいを演じるのは玉城ティナ。「悪の華」に出てた人か。一声目から、あれ?ちょっとアニメの方の能登麻美子と声が割と似て無い?これは良いかも?と期待に胸を膨らませました。

 

が!

 

逆に似てるが故に「いっぺん、死んでみる?」がちょっと違~う!になってしまった。

 

声はアニメに寄せる努力をしたらしいのですが、う~ん、わからなくもないけど、映画は映画でアニメに寄せるよりも映画版としてのアプローチがあっても良かったかも。

 

 

本物の能登麻美子にね「いっぺん、死んでみる?」とか言われたらもう私は天にも昇る気持ちですよ。「あ、あ、ありがとうございますっ!」って言っちゃう。

 

黒髪ぱっつん姫カットとか、それ私の一番好きなやつじゃんか!って感じですし(というかオタクは大概それ好きだろうけど)、あと私の中では能登麻美子と言えば大好きなキュアエコーでもあるので、能登さんの声だけで悶絶できます。地獄少女、良いですね、アニメの方もちゃんと見たくなってきた。

 

キャラクター重視のアニメ・漫画ありきの原作物コンテンツでありながら、ちゃんと監督なり映画の方の作り手の思いや主張も入れてくる。予想していた以上に面白い作品になっていて満足できました。


【公式】『地獄少女』11.15Fri公開/本予告

 

 

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