僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇

伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇 [DVD]

THE IDEON A CONTACT / Be INVOKED
総監督・原作:富野喜幸
日本映画 1982年
☆☆☆☆☆☆☆

 

ちょっと前にツイッターイデオンがトレンドに入ってました。富野展に絡めたweb記事のおかげだったんですが、何年か前にもお正月にイデオン見たので(DVD持ってるので)恒例では無いですけどまた久々に見ておこうかと。

 

富野展は昨年のゴールデンウィーク中に青森でやる奴に行こうとしてたのですが、コロナで延期になって、今年にやる予定のようです。ある程度収束して行ければいいなぁと思ってます。

 

で「イデオン」。もう何度目かですが、流石にリアルタイムでは見て無い。「F91」「Vガン」辺りにリアルタイムでハマって、確かそれくらいの時期だったっけかなぁ?まだレンタルビデオの時代で、丁度その時くらいに「ダンバイン」とか「エルガイム」とかあの辺のTVシリーズもようやくレンタルで見れるようになった時期だったはず。そこで富野良悠季という存在にどっぷりつかって、アニメに絡まない富野小説とかも全部読みあさった、っていう感じでしたかね。

 

「発動篇」だけなら90分くらいなので、そんなに時間はとらないのですが、でもどうせ見るなら「接触篇」も見ておこうってなるじゃないですか。勿論、世間で散々言われてるようにイデオンはTVシリーズ全部見た後に発動篇がベストなルートなのですが、流石にTVシリーズ全話見返すのはキツイ。面白いんですけどね。時間的にキツイという話。でも接触篇込みだと結局3時間なので、それもそれで時間に余裕のある時しか見れないという。

 

発動篇はEDが無いので、接触篇でセーリング・フライを聞くのもまた良いですし。というか接触篇はイデオンソード発動で終わるってのは憶えてたけど、ソロ星から脱出して地球に向かうけど、その地球に見放されてスペースラナウェイっていう感じで終わるのか。


一応は上手く区切りのつくとこまでやってたのね。だから発動篇の冒頭で助けを求めて植民地の星に逃げ込んだけど、そこからも拒絶されて、いきなりキッチンの首も飛ぶと。そりゃあコスモも「バッフクランめ!」って叫びたくもなる。

 

でもって、その辺の背景と共にギジェとシェリルの話も処理されてるので、まあTVの方を知ってればかろうじて理解できるし、一応映画のみでもなんとなくは察知できるようには構成してあるものの、流石に感情移入とかはしづらい。そこは少し勿体無い部分だなぁと思います。そもそも「イデオン」で感情移入とかアリなのかどうかは微妙な所だけども。

 

セリフ回しもイデオンは特に芝居がかってるし、ガンダムでの安彦さんの温か味のある絵と違ってイデオンの湖川さんは硬質で冷徹な感じがするのも大きい。そう言う所もまた「入りやすさ」という面では違うかも。富野ファンになってしまえばそう言う所もまた魅力になったりはするのですが。

 

で、イデオンはいくらでも語れるし、語りきれないので今回はその「入りやすさ、分かりやすさ」に絞って話をします。

 

イデオンは映画は面白いけど、TVつまんないからな、っていう意見もたまにあるんですが、間違いなくTVの方も面白いです。発動篇だけの作品だけではないっていうのはまずここで断言しておきます。2年前くらいかな?友達とたまたまイデオンの話になって、その時に1クール分くらいは私も見返してます。面白いです。

 

ただそれは、そもそもがどういう視点で作品を見るかって言う前提によって、当然違いは出てくる。所謂「ロボット物」というジャンルに期待する形で見るとやっぱりそこはツライ。当時からなんでしょうけど、じゃあ単純にイデオンのデザインがロボットとしてカッコ良いかと言えばやっぱり厳しい。話はよくわからんけど、とりあえずカッコいいロボットのバトルがあるからなんとなく見れるっていうイマドキの作品みたいな見方は確かに難しいと思う。

 

当時もやっぱりそんな感じだったからこそ受けなかったんだろうなと思うし。話は理解して無いけど、とりあえずモビルスーツの魅力で引っ張れた「ガンダム」とそこは違うと思う。

 

でもね、大人になるともっと色々と見識も広まって「ロボットカッコいい!」以外の視点も沢山身についてくるじゃないですか?あ、これ異星人とのファーストコンタクト物として面白いじゃん!みたいなさ。ロボットが別にカッコ良く無くても違う視点で満足できるようにもなったりする。そういう所では十分すぎる程面白い。

 

例えば敵の重機動メカだってそう。モビルスーツみたいにはカッコ良くないですよ。でも三本足だったりする所を見ると、ああこれSF映画に出てくるトライポッドみたいに、異星人メカみたいなのをイデオンなりに解釈して描いてるのか!みたいな発見も出来るようになってきます。

 

ガンダムでもね、ボールなんてダサメカの象徴でしかなかったわけですよ、子供心には。でも大人になって「2001年宇宙の旅」とか見ると、あれ?この作業ポッドってボールっぽくね?リアルの延長で行くとボールって、実際ありえるかもしれない兵器なのか!それ面白いな、とか私は思ったりしました。勿論、ボールはおそらくそもそもがそこから引用してきてるデザインなのでしょう。

 

だからイデオンの重機動メカを見ても、ああこれはトライポッド的なもののアップデートバージョンだし、このデザインセンスの違いもまた地球とバッフクランの感覚の違いなのか。そうかそうか、だからバッフクランもあんなヤングマンみたいな恥ずかしい変な服を着てるのか、みたいにどんどん新しい視点で見れるようになっていく。

 

そこ考えるとイデオンも第6文明人の遺産なわけだから、地球人から見るとたまたま四角くてダサいトラックみたいな形してるけど、それを作った文明としてはまた違うセンスで作られているのがイデオンのあの形なのか!となる。

因みに角川小説版だと小林誠デザインで巨木みたいなデザインになってるんですけど、雰囲気としてはアリなものの、アニメ版の異質さ、アンバランスさもある意味での面白さとも言える気がしてます。


そこはやっぱり「ガンダム」の次の作品が「イデオン」なわけですから、ガンダムが受け入れられたなら次はもっとアップデートした話にしよう、みたいに当然なってくるわけですよね。今度はもっと本格的なSFドラマにしようとしたのがイデオンなわけですよね。

 

ロボットがカッコ悪い、とかそんな単純な視点で見てしまうのは、逆に見てる側が古いしがらみに囚われてしまっているからこそそう思うのだ、とも言えるわけで、そういう先入観無しで、これは何か新しい事をやろうとしてるSFドラマなんだ、と思えばすんなり受け入れられるような気がします。

 

まあ、そういうしがらみ的な物に囚われていたら人類いつまでも次に進めないよ、という事を描きつつ、それでも人間はしがらみやこだわり捨てられないんだよねぇ、というのもまあイデオンの描く所ではある。

 

で、今回見て思ったのは、あの最後の全裸パートと、実写で波がざっぱ~んって来るあの辺が無かったら、もう少し普通のアニメとしても評価されたのかも?と思わなくもないです。あそこ、割と「え?何これ?」感が結構あるんですよ。

 

もしそこがなければ、わけのわからんイデとかいう力に振り回された異星人との戦いだったのね、くらいで普通のアニメとして終われたんじゃないか?という気がちょっとしたかな。

 

あの最後ってインパクトがある分、ちょっと観念的な世界すぎて一気に印象を
持って行かれません?むしろ「ダンバイン」とかバイストンウェル系でだったらああいうシーン似合うのかも?と思っちゃったくらい。


逆にダンバインの方が、世界が無くなっちゃったりはしないものの、ほぼ全滅エンドとイデオンに近いものでありながら、ここまで変で観念的なラストって言う印象は薄いですよね。

 

イデオンの時点では、ただの全滅エンドくらいにしておいて、悲しいラストだったな、人間は分かりあえないかもしれない、みたいな事を描きたかった作品なんだろうな、くらいで終わらせておいて、次のダンバインでそういう段階を踏まえてバウストンウェルの世界で輪廻転生をして生まれ変わって行く、みたいになってたらちょっと違ったものになってたのかも?なんて事を考えてしまいました。

 

でもね、そこをやらないのが富野なんだなぁと。イデオンでここまで描いたんだから、もう行きつく所まで行ってしまえと。自分の気持ちを全部作品にぶつけてやるんだ!ぐらいの気合や魂の入りこんだ形があの発動篇ラストなのでしょう。

 

ここはもう尽き切るしかない!みたいなある意味での焦りが、2度とここまではたどり着けないくらいの極地に至らしめて、それこそが現在でも唯一無二の日本映画史に残る(と私は思ってます)「イデオン」というとてつもない作品になったのだと。

 

これを見習って良いものかどうかは別として、それでも目指すべき到達点の一つにまで登り詰めた作品ですよね。そこはもう「アニメ」とか「映画」とかの枠組みさえ越えたもの、というのが私の思う「イデオン」という作品です。

 

そして「F91」の時も書いたけど、一つ一つのセリフや演出がクッソ面白すぎて画面がら全く目が離せない超濃縮された密度。

 

私の中で究極の漫画として「ウォッチメン」があって、それはどんな作品も越えられないある意味での漫画の到達点の一つになってる殿堂入りみたいな感じなんですけど、ジャンルや方向性は違えど、「イデオン」もそれに近い物がありますね。オールタイムベストみたいなものとも更に違うもっと上の特別枠、みたいな。私の中ではそういう位置付けの作品です。


伝説巨神イデオン (接触篇・発篇篇) 予告編の独自拡張・音質改善動画 THE IDEON MOVIE Augmented Trailer


ああそうそう、春日太一イデオン語ってるのがとても面白いのでこちらも良かったら是非見て下さい。


我らがイデオン【WOWOWぷらすと】

 

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