まんが:池原しげと
原作:矢立肇 富野由悠季
刊:講談社 BOMBOMCOMICS ボンボンKC 全1巻(1989)
☆☆☆☆
OVAついでに「ポケ戦」コミカライズ版。
元々が全6話と少ないのもあってか、単行本1冊で綺麗にまとまってます。
掲載誌は当時のコミックボンボンですし、勿論あくまで子供向けに描かれたものなので、今のダムエーみたいに大人の読者を前提にした深い心理描写とかそういうのが付け加えられているとかではなく、多少の描写短縮はしつつ、基本のストーリーラインをなぞっている形の、良くも悪くも無難なコミカライズなのですが、色々と訳あり作品の多い当時のガンダムコミカライズの中では、色眼鏡をかけずに普通に読めるだけでも実は貴重ですし、私も昔から好印象を持った1冊でした。
ボンボンコミカライズ、当ブログだと
村上としや版「逆襲のシャア」
井上大助版「F91」
curez.hatenablog.comなんかの感想を書いたりしてますが、どちらも元のアニメとは別ベクトルの特殊なアレンジバージョン的に読まなければならないものでした。
ボンボン誌上でのアニメのコミカライズ版ガンダムは「Z」から始まってるのですが、ボンボン版Zはガンダムコミックの租とも言える近藤和久氏がアレンジを利かせまくった今の作風とさほど変わらない形で手掛けてるので、それはそれで子供が楽しめる感じの作品にはなっていない。(ディジェをジオン側のMSチャイカとして出したり、ハマーンの乗機がキュベレイじゃなくゲードライだったりとアレンジが凄い)
後の時代に「G」「W」「X」「∀」とボンボン版コミカライズを手掛けたときた洸一氏の「それなりに無難なコミカライズ版」になるまでは、「普通に読める」のは、この池原しげと版「0080」くらいしか無かった。
で、この池原しげと氏は後の「ロックマン」シリーズのコミカライズが多分それなり知名度ある部類かと思いますが、おじさん的にはその前の時代に思い入れがあって、ファミコン漫画で一番有名なのはおそらくコロコロの方の「ファミコンロッキー」(あさいもとゆき著)だと思うんですけど、ボンボンの方でも2本もファミコン漫画があって、一つがこの池原しげと著の「ファミコン風雲児」と、もう一つが後にナイトガンダム関係のコミカライズを連載する、ほしの竜一著「ファミ拳リュウ」というのがあって、その中でも私が一番好きなのがファミコン風雲児だったんですよ。一番地味なんだけど、雑さが少なく丁寧な作風が好みでした。
そんな池原先生、「イデオン」「ダンバイン」「エルガイム」のボンボンコミカライズも手掛けられていたりして。そちらも以前復刻版が出たときに読み返しましたが、丁寧な作りでちゃんと読めるものでしたし、その辺りの前例があるから「ポケ戦」にも繋がったのでしょう。ガンダムに関してはこれ1作のみですが、決して評判は悪くなかったはず。
虫プロ出身で、手塚治虫のアシスタントやってた事もあるのは知ってましたが、今回改めてwiki見たらビックリ。手塚関係はアニメの方の仕事もやってた時期もあるそうで、何と虫プロの仕事も沢山やってた富野由悠季にコンテの描き方を教えてもらったのだとか!?え~っ知らなかった。そんな縁があったのか。いつかイデオン・ダンバイン・エルガイムも読み返したくなるなこれは。
そして今回のコミカライズでの唯一の大きいアレンジとして、キリング中佐の核ミサイルを阻止する連邦の部隊に、MSVから何とあのフルアーマーガンダムが出撃。
パイロットとかは一切出ないのですが、FAガンダムの活躍が描かれる貴重な1シーンとしてそこは昔から一部では結構有名。
ただ今回読み返してて、それ以上に面白い機体を発見。
お?何だこの機体。
背面しか描かれて無いのですが、このバックパックとかビームサーベルのマウント位置からしてジムコマンドですよね。でも脚部はジムキャノン。
要はこいつ「ジムコマンドキャノン」です。
ノーマルタイプのジムキャノン、量産型じゃない通常のガンキャノンなんかも出撃してて、そちらは正面のカットもあるのですが、背面しか描かれて無いとは言え、この時代でジムコマンドキャノンが描かれてるのは貴重。
普通に誰でも考えそうなバリエーションではありますが、公式的にはかなり近年になってからダムA版の「ブルーディスティニー」でサマナの乗機として初めて正式に「ジムコマンドキャノン」という機体が設定されました。それが実は30年前にさらりと描かれていた事実が面白いですね。
母艦がグレイファントムじゃなくトロイホースの表記になっていて、
フルアーマーガンダムが1機
通常のジムコマンドが数機(多分8機)
量産型じゃないガンキャノンが2機
肩アーマーのあるガンキャノン重装型が1機
ノーマルのジムキャノンが1機
そしてジムコマンド・キャノンが2機
程確認出来る。
いや~、この混合部隊って凄く「ギレンの野望」味ありません?勿論、この時点でギレンの野望なんてまだ出てませんよ。
でもねぇ、ジムで壁作って、後ろに適当に射程2の間接攻撃出来る奴を機種問わずまとめて配置、とかよくやるわ。なんか部隊編成がメチャメチャそれっぽくてちょっと笑ってしまった。
子供向けだからと言って、最後にバーニィが生き残ったりはしないし、戦争の虚しさを知った一人の少年アル、というのはきちんと描いてあって、悪くないコミカライズです。
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