僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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メカニックデザイナーの仕事論 ヤッターマン、ガンダムを描いた職人

メカニックデザイナーの仕事論 ヤッターマン、ガンダムを描いた職人 (光文社新書)

著:大河原邦男
刊:光文社 光文社新書771
2015年
☆☆☆

 

閃光のハサウェイ」また延期のようです。いよいよ見れると思ってただけに残念。早く見たいぞ。

 

それはともかく、日頃から本も読まなきゃ、読みたいと思いつつ、忙しい上に他の趣味を優先しちゃうとなかなか読めて無いのが実情です。一応マイカーの中には常に活字本も一冊は入れておくスタイル。半端に5分とかの時間しかないと結局はスマホでニュースサイトとか見ちゃうんですけどね。

 

電車に乗ると、みんなスマホ見てるので、そういう人に自分はなりたくないな~文庫本とか読む人でありたい、とか思ったりもするんだけど、そもそも電車乗る機会が1年に1度あるか無いかくらいなので考えるだけ無駄だったとかいうオチ。

 

本を読まない人に「時間あればもっと本も読みたいんだけどね~」って言うと大概は「小説?」って言われるんですけど、小説だけが本では無い。自分も昔はこの手の新書って全然触れてこなかった文化なんですけど、NPOに参加して社会学を勉強してた時に結構な数を読む事になって、本=小説とかじゃないんだってのはその時に気付いた気がする。

 

そこで半年かけて小論文を書いたり、ミニコミ誌で書評とか小記事を書いたりしてる内に、こういうのを書くには結構なバックグラウンドというか、何冊も参考書籍を読んだり、書くにあたって費やした時間って実は相当に多かったりして、何十時間、或いは何百時間もの積み重ねの上に一冊の本や記事があるって思えるようになると、それを凝縮して作られる本って実はとても便利なものなんだなぁと思えるようになりました。読み終わるのに1時間2時間程度かもしれないけど、それは100時間200時間を凝縮した貴重な物なんだぞ、っていう。

 

岩波とかそこまでお堅いものでも無くて、今回の本みたいにオタク系のものとか、芸能人が出してる軽めのものも各社の新書から今は結構出るようになりましたよね。そういうのは入り口としても良いし、割と好きかもしれません。荒木飛呂彦の本とかやっぱり2冊とも面白かったし。

 

ただね、ちゃんとした本屋に行くと新書コーナーって普通にありますが、ブックオフとかだと「ハウツー本」みたいなカテゴリーになってるのが、それどうなの?って感じでいつも気になってしまう私。

 

それはさておき、今回はファーストガンダムとかボトムズスコープドッグとかをデザインした言わずと知れた大河原邦男先生の本です。

 

章をまたいで同じ話が何回か出てきたり、基本的には話し言葉口調が多いので、おそらくは何回かに分けたロングインタビューを文書の形にまとめたものだと思われます。もし違ってたら大河原さんごめんなさい。

 

生い立ちから初仕事に至るまでとか、そこから2015年時点までの仕事を振り返るという形です。美大出身なので、その後いくつかの職業につきながら、タツノコに就職。当時はまだ「メカデザイン」なんていう肩書は生まれる前でしたので、背景の部署に入って、最初にやったのがなんと「ガッチャマン」のタイトルロゴ。機械いじりが元々好きだったのもあって、その長所を見込まれて、メカ方面をまかされるようになっていく、というのが最初の方の流れのようです。

 

本文中にも何度か触れられてますが、今だともうメカデザインって肩書が結構認知されてますので、これからそこを目指すって人とはちょっと感覚は違うでしょうね。

 

確か「ZZ」の小林誠だったけな?あの人もプラモの作例とか自分でやってた人でしたし、ZZの時も自分でモックアップ(自分で一から立体物を作る)作ってデザインコンペに出してたとかいう話を目にした事があった気がするのですが、そういう流れを作ったのが大河原邦男。「ボトムズ」のスコープドッグも、ボトムズの企画が始まる以前に自分が勝手にこんなのもありかも?って作ってたモックアップがあって、高橋亮輔がボトムズの企画を練ってる時に、こんなのはどうですか?ってプレゼンして、これは行ける!と意気投合したらしいです。うん、当然こんなの売れないでしょとおもちゃ会社は渋ったらしいですけど。

 

で、立体物が先にあるとそうやって企画のプレゼンもしやすいし、説明がわかりやすくなると。ここはこう動くんです、こう変形するんです、と。この辺りは河森さんもそうですよね。最初にレゴで変形プロセスまで完全に出来るものを作ってから絵におこすってスタイル。

 

そこがただ絵だけを描く人との違いなんだよっていうのが大河原邦男さんの主張なのですが、昔から気になってた、RX-78ガンダムと、MS06ザクの股関節というか脚の付け根の可動って大河原さん本人のイメージではどうなってるんでしょう?どう考えても動かないデザインなんですけど、そこは私は昔から気になってました。が!・・・今回はそこには触れられずでちょっと残念。

 

大河原さんのデザインってね、好きかどうかと言われると、私は実はそんなに好きではありません。ちゃんと立体で動く物を作ってるとか主張されても、永野護の二重関節とかそこまで考えてるわけではないじゃないですか。それでいて子供向けにハッタリは効いてた方が良いって主張はわかるけど、動力炉がどこにあって、空気抵抗がどうのとかまでは行って無い基本は箱ロボですし。

 

ただね、若い才能を見習って良いとこは取り入れようと試みたのが「F91」の細身のデザインで、そこは自分でも気に行ってるものの一つ、とか正直に言ってる辺りは素敵です。


流石に「F91」の最初のデザインが今の「F90」だった的な所にまでは触れてませんけど。主要なメカデザイン担当作品はほぼ網羅して、各作品ごとにコメントは入れてますが、流石にそういうマニアックな所までは触れられてません。

 

ただ、この本で初めて知った経緯のものもいくつかあって、一応は「デザイン:大河原邦男」とクレジットされてるものの中にも、実は企画上ある程度の形やデザインはもう出来ていて、最終的にそれを自分の線でまとめた程度のものに関しては、あまり自分がデザインしたっていう感覚は薄くてあまり思い入れは無いそうです。

 

ガンダムX」なんかがそのようで、サテライトキャノンを畳んで長刀を背負った佐々木小次郎スタイルっぽい辺りは凄く大河原テイストだと私は思ってたのですが、自分のガンダムでは無いと思ってるようです。思い十字架を背負ったガンダム、というテーマにも繋がるデザインなので、そこはもう企画の初期からおおまかな形になってたって感じなのかも?

 

後は「SEED」なんかも本来は敵側のみのデザインだけだったんだけど、他の人がデザインしてたガンダムの最終稿が上手く上がらなくなってしまって、そこを引き取って仕上げをしたという感じのようです。具体的なMS名は出してませんが、多分ストライクの事ですよね。ディティールとか細部のセンスが大河原さんっぽく無いなと思いますし。

 

割と今風でスタイリッシュさを売りにしてた「ガンダムSEED」という作品において、大河原さんって私の中では結構な異物感あったんですけど(「ガンダム00」で旧世代のMSとして「Oガンダム」のデザインをしたのとはちょっと事情が違いますよね)やっぱりそうやって、デザイナーが自分の世界観を自己主張するより、作り手側が何を求めているのかを読みとって、そこをちゃんと仕事として期日も守ってやるべきことをやる、というのがタイトルにもある通り職人気質であって、それこそが長く仕事をやってこられた原因というのがよくわかる面白い部分だなと。

 

フリーダムとか大河原デザインで正直ダサくないか?と私なんかは思っちゃった方なんですけど、監督の羽をつければカッコ良くなるんだよっていう発注通りに描いて、それで今は実際に人気機体になってるわけですから、そこはね、やっぱり凄いとこだと思います。

 

あんまり関係ないですけど、私も仕事で中間管理職とかの立場で、若い子に仕事を教えたりもしてますが、昔から言ってるのは、「自分の納得よりもお客様の納得を重視しろ」って教えて来ました。自分はこの仕事の仕上がりに納得して無い、だからもう一度やらせてくれ!っていうのはただのエゴだよと。お客様が納得してるんであれば、それが正解。逆に言えば自分の中で正しくても、客が納得できていないんだったら、そこは納得するまでやるべき、みたいな感じ。

 

大河原さんとは「職人」の言葉の捉え方が逆っぽくはなってしまいますが、自分達がやっているのは自己を満足させるものではなく、あくまで仕事であり、客商売なんだよ、というのは気をつけないと、という所では結局は同じ事だと思うし、うんうん、そうだよね、という納得度は得られる一冊でした。

 

おそらく100%は網羅してないと思うんですけど、タツノコサンライズ系で大河原さんが参加してる作品には本人が何かしら各作品にコメント出してますんで、その辺だけでも十分に楽しめるんじゃないかと。「ビルドファイターズ」なんかはコンセプトが面白くて本人的にはもっと参加したかったみたいですよ。

 

サクッと読めて面白い一冊です。

 

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