AFTER WAR GUNDAM X NEXT PROLOGUE
漫画:ときた洸一
ストーリー:川崎ヒロユキ
監修:高松信司
刊:角川書店 角川コミックス・エース「機動新世紀ガンダムX Re:Master Edition III」収録
2022年(初出 2018年)
☆☆☆
2018年のBD-BOXの特典で収録されたアフターエピソードですが、この度、コミカライズ版再刊行の「機動新世紀ガンダムX Re:Master Edition」の方にもめでたく収録されました。
読みたかった話なので、とても嬉しいし助かります。
ガンダムXはねぇ、DVD-BOXの方を持ってたので、流石にこれの為だけにBDまでは買えなかった。
コミカライズ版も最初のボンボンコミックス版で揃えてたので、今回はこれが入ってる3巻のみ購入。
脚本はTVシリーズの方でも全話脚本を書いてた川崎ヒロユキ。高松監督も監修という形で関わってるので、いわゆる外伝エピソードというより、正規のエピローグみたいなものと思って良いでしょう。
正式な時間軸設定はされていないようですが、ときた氏はTV最終回から1年後くらいを想定して描いたとの事です。
ここは一つ、「ガンダムX」本編を含めたアナザーガンダムの事から語っちゃいましょう。私は「Vガン」にリアルタイムでハマって、そっから富野信者になっていったのですが、私の住んでる地元の山形では、「Vガン」の後に続けて「Gガン」以降は放送されなかったんですね。
今みたいに、新作=宇宙世紀では無いアナザーガンダムっていうのがあまり無かった時期ですし、G/W/Xのアナザー3部作は正直、悪い評判しか耳に入って来ませんでした。Gガンはこんなのガンダムじゃないだとか、Wは女に媚びたとか、そういう表層的な意見を鵜呑みにしてました。
当時は多分、こっちでは結局放送されて無かったはずですが、まあ百聞は一見に如かず、という事で、レンタルビデオが出揃った頃に纏めて観たんですよ。
・・・
え~!どれも面白いじゃん。
世間の評判なんか当てになんねーな、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考える、っていうのが基本だよね、というのを改めて実感したのが平成アナザーガンダム3部作でした。今でも、誰かの意見とか他人の評価なんかに惑わされず、ちゃんと自分のロジックで自分の言葉や考え方を語る、というのは続けているつもりなので、そこを学んだ良い切っ掛けになった作品群だなぁという思い入れがあります。
凄く当たり前の話ですが、私とあなたは違う人間です。自分と同じ人間なんかこの世に居ないんだから、自分しか書けない事を書こうよ、というのは気をつけてる部分。いや作り手はこう感じて欲しいとか感情を誘導するわけですから、ある程度似通ったものが出てくるのは仕方ない部分ではあるのですが。
で、アナザー3部作。どの作品もその作品にしか無いものがあるので、甲乙は付けがたいのですが、それでも3部作の中で私が一番気に行ったのは「ガンダムX」でした。
やっぱりね、メタ構造として、ガンダムと言う作品を使って、ガンダムとは何か?を考える作品だったので、今も私はメタネタとか好みの分野ですし、自分の好みに物凄く合った作品だったんです。
でもその「メタガンダム」っていう部分、当時出てた書籍とかでも一切触れられて無かったんですよね。そこが私は不思議で仕方無かった。今では昔と比べたら、多少はそういう視点も認知されてきてはいる印象もありますけど、当時(つってもリアルタイムから1~2年後だったと思いますが)はほとんどそういう意見が無くって、私は当時ネットでその辺を力説してました。
「ガンダムX」の凄いとこは、ちゃんとそういうマニアックなテーマをやりつつも、表層的にはガロードとティファのボーイ・ミーツ・ガール物として成立させてある辺りが上手さです。
普通に表面の話だけ見てても成立するけど、見る人が見るとそこにはもっと別な話が見えてくるっていう作り、私はとても好き。最初からマニア向けに作って、わかる人だけわかれ!みたいな作品もそれはそれで別に嫌いじゃないのですが、表向きは普通の作品に見えるように作ってあると、凄くスマートなやり方だな、って思いません?
私にとって「ガンダムX」とはそういう作品です。
・・・という視点で今回のエピローグストーリーを読むと、まあ正直メタ視点でガンダムとは何か?なんて事を改めて語ってたりはしないので、ちょっと物足りないかな?という気持ちはある。
でもね、ガロードが、もうガンダムには乗らないよ。自分の戦いは終わったんだ、と言いつつ、過去の仲間とかを振り返って、色々あったけど、あの旅は楽しかったよなって後ろ髪を引かれる感じの思いを馳せるのは凄くグッと来ますね。
脚本の川崎さんにしても、高松監督にしても、いやもう大分昔の話だし、結果は良い成績残せなかったのかもしれないけど、やることやりきったしまた新作とか言われてもな。・・・でも、思い出すと楽しかったよねぇ、みたいな感じが物凄~~~く微笑ましいです。
どうやらフロスト兄弟も、また何か企ててるらしいぞ、あいつらはあいつらで訳アリな奴らだし、また何かやってるなんていかにもらしいな、せっかくだしいっちょまた面倒見てあいつらの野望を止めてやるか!っていう感じなのがなかなか面白い。
メカ的には今回オリジナルで石垣さんデザインのガンダムヌーヴェルという機体が登場。アニメ本編だとカリスは最終決戦までベルティゴ使ってたけど、コミカライズ版だとベルティゴじゃなくてガンダム顔のラスヴェートβという機体に乗ってるんですよね。その発展型としてのガンダムヌーヴェルというのがコミカライズの延長という感じで面白いんじゃないかと。
設定的にフラッシュシステム非搭載らしいので、んじゃ何が売りの機体なんだよ?っていう気はしなくもないですが、カリス・ノーティラスを演じてた水谷優子さんはもう亡くなられてしまいましたので、彼女への追悼を籠めてとかでは無いにせよ、「ガンダムX」の世界の中では、カリスもまだ元気にやってるよ、という意味ではちょっとグッと来る部分かもしれません。
第一印象としては、微妙に物足りないかな、とも思ったのですが、こうして感想を書いてみると、悪い物では無かったし、むしろ良かったかも。
エピローグ的なものでありつつ、作品タイトルとしては「ネクストプロローグ」なんですよね。ここを基点に続きの話をこれから実際にやっていくよ、ってわけじゃないと思うんですよね。ガンダムXっていう作品にピリオドは打ったけど、ガロードやティファ、カリスの冒険はこれからは続いて行くんだよ、っていう事だと思います。ありがちと言えばありがちかもしれないけど、このセンスは流石です。
「機動新世紀ガンダムX」良い作品じゃあないですか。
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