Korou no chi: LEVEL 2
監督:白石和彌
原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ
日本映画 2021
☆☆☆☆★
<ストーリー>
3年前に暴力組織の抗争に巻き込まれ殺害されたマル暴の刑事・大上の後を継ぎ、広島の裏社会を治める刑事・日岡(松坂桃李)。しかし、刑務所から出所した“ある男”の登場によって、その危うい秩序が崩れていく…。
やくざの抗争、警察組織の闇、マスコミによるリーク、身内に迫る魔の手、そして圧倒的“悪魔”=上林(鈴木亮平)の存在によって、日岡は絶体絶命の窮地に追い込まれる…!
「孤狼の血」の続編で、原作では『孤狼の血』『凶犬の眼』『暴虎の牙』という3部作になっているそうですが(未読)その2作目ではなく、原作では描かれていない1作目の続きの話を映画オリジナルで展開、という事のようです。
1作目は大絶賛され、ヤクザ物というジャンルにあまり思い入れのない私でも圧倒的に面白くて楽しめました。これは2作目も見たいと。
ただ、1作目は松坂桃李演じる日岡という刑事が、割とまともな倫理観を持っていて、その中でどうアウトローな世界に対峙していくか、という所が面白味であり、ただのヤクザの抗争にそういう視点が入っている事が私にとっての見やすさでもあったので、その日岡が大上の意志を引き継ぐ形になっている2作目は、ちょっと心配もしてました。
ただ、確かに前作とは若干毛色が変わってる部分もあるかなとは思いつつ、それでも今回もメチャメチャ面白かった。
今回からの登場で、今作の最大の敵でもある鈴木亮平演じる上林のヤバい事ヤバい事。鈴木亮平って私にとっては変態仮面とかミミズクの竜(ガッチャマン)とか、見て無いけど「俺物語」とかやってる人で、やさしそうな顔してるんですよね。(関係無いけど私の仕事の部下もちょっと彼に似た雰囲気でとっても好青年です。)そんな気は優しくて力持ち的な(勝手な)印象のある鈴木亮平が怖い役をやると、逆に怖さ倍増な感じで、ひぇぇ~って感じでした。
上林のキャラクター性に映画全体として相当なウェイトを置き過ぎな感じがしますが、「仁義なき戦い」の2作目「 広島死闘篇」で先日お亡くなりになられた千葉真一演じる大友勝利が絶大なインパクトを残したように、ヤクザ映画の2作目は頭おかしいヤバイ奴を出すっていう仕来たりでもあるのでしょうか?ていうかオマージュなのかな?決してスーパーヒーロー映画では無いものの、なんか強烈でインパクトのあるヴィランが出てきたっていう感じで、とても面白かった。
というかその文脈で言えば、松坂桃李も「ガッチャマン」でしたね。しかも主人公のオオワシの健だし。勿論、一番大きいのは「シンケンジャー」なんですけど、「新聞記者」とか、明らかに普通の俳優が嫌がる作品でも主役やってて、本人の意思なのか事務所の方針なのかはわかんないんですけど、松坂桃李って私にとってはヒーローなんです。(「不能犯」悪役っぽいのもあったけど)
だからこそ前作もアウトローの中で自分なりに正義を貫こうとする姿に惹かれたし、現実はそんなに甘くないよ、というのを描かれても、それでも自分なりの正義を貫きたい、世間に揉まれて清廉潔白なだけでは世の中渡り歩いて行けないよ、というのを実感して苦い経験を得たとしても、それでも自分なりの正義の道を歩んでいくという姿が凄く良かった。
今回、大上の後を引き継いで、大上のようになろうとするけども、自分勝手な正義を振りかざしてんじゃねーよ、と突っ込まれ、苦悩し、大上を失ってしまったのと同じような失敗をまた繰り返してしまう、しかも前作で自分のポジションだったスパイの立場を今度は自分が見抜けず、そこもまた同じような失敗を犯してしまう。
大上のようになろうとするけど、なれないんですね。
でもね、そこがとても良かった。ある意味今回は敗北とも言えるかもしれない。でも、その成長段階にあるというのが私はグッと来た。もっと成長できる幅があるからこそ、まだ今の日岡は「レベル2」でしか無いのではないかと。
自分勝手な薄っぺらい正義感なのかもしれない。同じ失敗を繰り返して、負けて終わったのかもしれない。でもその半端さ、大上にはなれない日岡っていうのが逆にグッと来ました。そこは上林のキャラクターに負けないドラマを感じたなぁ。もしかしたら3作目とかもっとこの先に、大上みたいになれるのかもしれないけど、そうはなれない、そうはならない日岡っていうのが私は魅力を感じました。まだレベル2の若輩だけど、そこが逆に良いんじゃあないか、と私は思うのでした。
甘ちゃんだって言われるかもしれないけれど、この相棒なら信じても良いかもしれない、そう思える部分が残ってる所に逆に魅力を感じました。いやあれ、すっかり私も騙されましたけど。この映画も根っこの部分にはちゃんと正義が残ってる、彼のような人が最後の希望なんだ、とか思わせといて、そういうのが甘さなんだよ、世の中そんな簡単じゃねーぞっていう感じでね、そこも面白かった。
アクション要素を増やしたかったのか、カーチェイスのシーンとかは正直要らなかったなぁと思うし、最後のシーンの、示唆的なお前は最後の一匹狼なんだ的なのも、ちょっと方向性としては違うかなという気はするし、ピエール滝は居なかった事にされてたりとか、前作と比べると多少の不満も無い事は無いのですが、それでも上林の強烈なキャラクター性と、そこだけじゃないまだ成長しきっていない日岡のドラマが描かれてる事で、もう十分すぎるくらいに面白かった。
ジャンルとか見た目のイメージだけで敬遠しなくて良かったなぁと心から
思える作品でしたし、次があるなら是非また見たいシリーズです。
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