AVENGERS: TECH-ON
著:ジム・ザブ(作)
ジェフリー・“チャンバ”・クルーズ(画)
訳:中沢俊介
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2022年
収録:AVENGERS:TECH-ON #1-6(2021-22)
☆☆
マーベル・コミックス×TAMASHII NATIONのコラボレーション作品!
これがマーベル流
特撮ヒーロー!?
アイアン・アベンジャーズ出動!
世界を変えるほどの力を持つ、インフィニティ・ストーン。その欠片がレッド・スカルの手にわたり、ヒーローたちはパワーを奪われてしまった!力を失ってもなお、正義の心を失わないアベンジャーズはレッド・スカルが潜伏する日本へ向かうが、圧倒的な力の差を前に全滅寸前にまで陥ってしまう。しかし、彼らにはまだ希望が残っていた。ヒーローたちはトニー・スタークが開発した新たなアーマーを身にまとい、“アイアン・アベンジャーズ”として立ち上がる!
マンガ『鉄のラインバレル』などで知られる清水栄一氏がデザインした、メカニカルなアベンジャーズが大活躍!
先月の「アベンジャーズ・メカニカル・ストライク」に続いて、ちょっと変わり種な1冊。
アメコミは歴史が長いので、昔から既存のキャラの○○化!みたいなのはネタとして良くありました。女体化、動物化、ロボ化とかそういうの。古の「マーヴルクロス」日本語版でも「Xベイビーズ」とかX-MENの赤ちゃん化みたいな話があって、異次元人モジョーがよくあるパターンとか茶化してたような記憶が。
今回は、アベンジャーズのメンバーをアイアンマン風なアレンジのアーマーにするという企画で、まあいかにもプレミアムバンダイでフィギュアを売るための企画です。
ただこれ、私は順番とか経緯とかよく知らないんだけど、千値練のファイティングアーマーというシリーズがあって、そちらも「もしもトニー・スタークがアベンジャーズ達の能力をアーマー化したら…」という玩具オリジナルコンセプトシリーズ。ほとんど同じ企画をやってる。
単純にデザインを見るのは好きだけど、こういうのはネタとして面白いのであって、別にフィギュアとか欲しくならないし、いかにも日本人の考えそうな感じでダセェと私は思っちゃう方なので、そういう感覚の人の感想と捉えていただいて結構です。
千値練とバンダイナムコでは何が違うのかと言えば、デザイナーとして名前が売れてる清水栄一を使ったのと、こうやってコラボコミックを数ページだけの宣材だけでなく単行本1冊分(全6話)とそれなりの手間をかけてやっているという辺りでしょうか。
ああ、因みにコミックは「清水栄一・下口智裕」ではありません。正規のアメコミアーティスト。つーか清水下口は「ULTRAMAN」の他にライバルのDCの方で「バットマン:ジャスティスバスター」とかやってるしな。
当然こういうのって依頼があってやってる事でしょうから、そういう需要があるという事で、そこはどうこう言ったって仕方ないんでしょうけど、私個人としては、同じ事を何回もやってるだけで代わり映えもせずにうんざり、という気持ちの方が大きいです。
私はその辺詳しく無いので、もし間違ってたらスミマセンが、確か最初は同人で「仮面ライダー」を同じようなコンセプトでやってたでしたっけ?ただあくまで同人で、正規の許可をとってやってたわけじゃないので、そこはあまり表には出せない。
そんな中、じゃあ「ウルトラマン」で正式にやりませんかっていうオファーがあって、それが「ULTRAMAN」になってると。
じゃあ残りは「スーパー戦隊」だけじゃん?っていうのはちょっと後に語る事にして、同じようなコンセプトをこうやってマーベルヒーローでやったり、そのライバルのDCヒーローでも同じことをやる。
今回調べてみたら、ロックマンなんかもやってるんですね。
んじゃ今度は何マンでやるんでしょう。
「ラインバレル」はスパロボでくらいしか知らないのですが、「ゲッターロボデヴォリューション」は私も読んでましたし、清水デザインも、最初の頃は割と新鮮で良いなと好感を持ってたんですよ。
たださぁ、こう何でもかんでも同じ事を延々と繰り返されると、流石にうんざりしてきた。もういいよって正直思ってしまう。
なんだかまるで福田雄一の映画みたい。1本2本くらいなら、バカバカしくてこんなおもアリかも面白いなって思えるんだけど、それ以上追っていくと、何これ毎回同じ事を繰り返してるだけじゃね?ってうんざりしてくる。なんかそういうのと同じ気持ちを感じてしまった。
申し訳ないけど、千値練のファイティングアーマーシリーズと、
こちらのテックオンアベンジャーズのデザインの違いなんて私にはわからないです。
ガンダム興味無い人が、どれも同じじゃないですかって感じるのに近い。
ただ、一応違いみたいなのを考えると、テックオンはドゥ・ハツ10(怒髪天?)モードという一時的なパワーアップが可能。
キャップの盾が追加アーマーになったり、スパイダーマンは蜘蛛の巣デザインが開いて発光というサイコフレーム状態。ブラックパンサーはビーストモードでより獣っぽく(何故かパンサーじゃなくライオンに見えるけど)等、ギミックも考えてあったりはする。
それと、特撮オマージュだからなのかは不明だけど、ヴィラン側をまた別の人がデザインしてて、そこはデザインラインがちゃんと別になってる(メカっぽさもありつつ生物的に)。その辺りは実際の特撮でもそうなので、特撮怪人味があって面白いです。私は前述の通り、清水デザインには飽き飽きしてたので、そっちの方がむしろ面白かった。特撮怪人バージョンのレッドスカル、ウルトロン、ゴブリン、ベノム、ロキが見れます。
そして最後にもう一つだけ。
今回の本の中で一番評価するポイントは、舞台が日本と言う事で、日本人ミュータント、元X-MENのサンファイヤーが追加戦士的な感じで登場。シロウ・ヨシダと本名は今までと同じながら、ヒーロー名がちょっと今回は違う。サンファイヤーでなく「バトルファイア」と名乗る。
・・・しかもデザインが何とまさかのスーパー戦隊「バトルフィーバーJ」のバトルジャパン風!
ここは素直にやってくれたな感があって面白かった。
ライダーやウルトラマンに続いてこんな離れ技で戦隊を出してくるものかと。
知ってる人も多いかとは思いますが、「バトルフィーバーJ」は東映がマーベルと3年間のクロスライセンスを結んでた時期の作品の中の一つ。
バトルフィーバーの前年の「東映版スパイダーマン」は有名ですが、巨大ロボ・レオパルドンのインパクトもあってかそっちはもう原作の方の「スパイダーバース」に逆輸入というか、マルチバースの一つとしてコミックの方でも既に大きい扱いを受けてる。
BFの世界も同じようにマーベルユニバースに組み込まれてるわけではないものの、そんな経緯もあり、マーベルとは深い縁がある作品の一つ。キャプテンアメリカに対するキャプテンジャパンとして生み出されたのが今のBFの「バトルジャパン」なわけで、それを今になってここで持ってくるかと。
そんなマニアなネタで行けば、へドリアン女王=ヘラ、ギャバン=シルバーサーファーみたいな所も続編があれば使えるネタかと。
それはともかく、今回の本やこういう企画に関して、私個人の感覚としては、アメコミは異文化だからこそ面白いのであって下手に日本のエッセンスを持ちこむのはナンセンスかなとは思う。けれど大半の日本人にとってはアメコミ文化には大きな壁があったりするのは事実として認識はしてます。映画はともかくコミックの方に関してはね。
その壁をいくからでも低く出来ないかという試みは昔からされてきたし、その涙ぐましい努力はね、絶対に否定しちゃいけない部分だとは思うので、こういうのをきっかけにアメコミヒーローの世界に少しでも近付いてきてくれるのなら、それは決して悪い事では無いとは思う。
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